デロイト トーマツ グループは5月24日、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けて、グローバルで毎年まとめているレポートに日本独自の動向と見解を加えて解説した「Tech Trends 2019日本版」を発行した。グローバルでは10回目、日本版では5回目となる今年のTech Trendsでは、これまでの個別テクノロジーフォーカスではなく、より大きな視点から、かつ個別テクノロジーについては具体的な視点で、企業のDX実現に向けた最新トレンドの活用方法を解説。

DX実現のための先端テクノロジートレンドとして「テクノロジーマクロフォースの拡大」「人とAIが協働する組織」「サーバレスがもたらす運用作業のいらないNoOpsの世界」「次世代コネクティビティ」「インテリジェントインタフェース」「進化するマーケティング」「DevSecOpsとサイバー規制(インペラティブ)」「デジタルフロンティアを超えて次のステージ」の8つのトピックスをテーマに取り上げている。

テクノロジーマクロフォースの拡大は、Tech Trendsがこれまで取り上げてきた9つのマクロフォース(クラウド、アナリティクス、デジタルエクスペリエンス、コグニティブ、ブロックチェーン、デジタルリアリティ、コアモダナイゼーション、ビジネスオブテクノロジー、サイバーリスク)は企業戦略を左右する、あるいは投資先選定に影響を及ぼす、今後も長く続いていくテクノロジーのトレンドだという。しかし、それらが個別で独立したものではなく、互いに切り離せない関係にあり、それぞれが急速なペースで進化を遂げ、さらに組み合わせて活用されることで個々のテクノロジーの変革に刺激を与えているとしている。

人とAIが協働する組織については、AIは今後数年間のうちに人間のパフォーマンスを補強するだけでなく、複数の業務プロセスを自動化していくが、短絡的に人員を減らすことは将来の新たなコグニティブの姿への可能性を閉ざしてしまうことになると指摘。そのため、現在こそが人間と機械が業務において、どのように関与しあうべきか、また人がAIと協働する未来の組織が何を成し遂げるのか、考え直すべき時であるという。

NoOpsの世界に関しては、重要なシステムの基本的な維持管理は、IT関連の予算と人的リソースの大部分を占め、サーバレスが実現するNoOpsにより、CIOはこれまで運用に充てられていた予算と人的リソースを、成果を生む新しい活動に向けることができるという。また、開発チームは新しいスキルを習得し、自主的に仕事をする機会を得ることができ、ITをリアクティブ(消極的)なものからプロアクティブ(積極的)なものに根本的に変革するとしている。

次世代コネクティビティは、大量の情報を正当な場所に迅速に集めるためにコネクティビティの変革は必要不可欠なものとなっている。業界を問わず、ネットワークに接続されるデバイスが爆発的に増加することで、コネクティビティの変革は加速され、細部まで詰めた戦略のもと、5G、低軌道衛星、SDN、NFVといったテクノロジーを活用すれば、ネットワークの柔軟性、効率性、迅速性が桁違いに向上することを、企業のリーダーは強く認識するようになっているという。

インテリジェントインタフェースは、プロセスを合理化したり、顧客を巻き込んだりする新しい方法を提供する多くのテクノロジートレンドとは異なり、テクノロジーや情報、周囲の環境とどのように関わるのかを根本的に見直すもの。破壊的な可能性を持ち、すでに進み始めている次なる技術変革だとしている。

進化するマーケティングについては、主導権を握る顧客や無限に選択肢とチャネルが存在する中において競争力を維持するためには、差別化された体験を生み出すとともに、ブランドエンゲージメントに対する顧客の期待に一貫して応えなければならないという。

DevSecOpsとサイバー規制は、高品質のプロダクトをより早く出荷するというニーズの高まりにより、DevOpsのプラクティスがソフトウェア開発の分野において、現在の位置づけまで高められたという。DevOpsの自然な進化において、DevSecOpsのトレンドはCIOとその開発チームにツール、プラクティスおよび自動化の新しい組合わせを提供すると同時に、安全な開発と運用の実現を支援することを可能としている。

デジタルフロンティアを超えた次のステージに関しては、DXの活動を将来のあるべき姿とマッピングすることができれば、破壊的な変化に対して圧倒的に優位な立場に立てると考えられているものの、多くのケースで企業は特定の技術にフォーカスしているのが実情だと指摘。物理、社会、科学とビジネスとの交錯点から生まれるチャンスを見出し、それを利用するための体系的なアプローチを開発することは、DXを理解・具体化し、活用可能にするための重要な第一歩となえい、現在hデジタルフロンティア時代を超える活動に着手できる時が到来しているという。