コンカーは4月19日、都内で記者会見を開き、10団体の公共団体に対し、先着で経費管理プロセスの改革に向けた実証実験環境の無償提供を開始すると発表した。今後、学校法人、中央省庁、地方自治体、独立行政法人、病院等の公共機関の間接業務・間接費管理のデジタル変革を支援していく考えだ。

コンカー 営業統括本部 インダストリー営業本部 本部長の橋本祥生氏は「公共機関ではガバナンスを民間企業以上に気を配っているものの紙と人に依存している。そのため、ガバナンスと業務効率化の両立したデジタル化した経費管理が必要だ」と指摘する。

  • コンカー 営業統括本部 インダストリー営業本部 本部長の橋本祥生氏

    コンカー 営業統括本部 インダストリー営業本部 本部長の橋本祥生氏

実証実験では、同社の請求書管理クラウド「Concur Invoice」、経費精算・管理クラウド「Concur Expense」、出張管理クラウド「Concur Travel」を利用し、公共機関の経費管理効率化・ペーパーレス化の推進を支援するという。

  • コンカーが考える公共機関の経費管理

    コンカーが考える公共機関の経費管理

Concur Invoice、Concur Expenseで、複合機やスキャナーなどで電子化した請求書・領収書データを集中管理することで、承認フローをクラウド上で管理できるほか、規程チェックの自動化により、承認者や経理担当者の管理業務を削減し、業務効率化が見込めるという。

また、Concur Expenseのモバイルアプリで撮影することで領収書の電子化が可能なため、外出先でも経費精算ができるほか、クレジットカードの利用明細がConcur Expenseに自動登録されるため、手入力の省力化により外出の多い職員や教員・研究員、医師などの生産性向上も期待できるとしている。

さらに、Concur Invoice、Concur Expense上で保管された請求書・領収書データは検索可能なため、監査対応の負担削減を図れるほか、将来的に紙の証憑の保管コスト削減も可能としている。加えて、Concur Travelを組み合わせ、出張規程に即した出張手配を徹底することで、出張コストの削減だけでなく、ガバナンス強化を図ることができるという。

領収書・請求書のD2D実現に向けた事業戦略

今後の事業戦略について、コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏が説明した。まず、同氏は「われわれが標榜しているのは間接業務のデジタルトランスフォーメーションだ。これは、デジタル技術を活用し、企業のビジネスモデル、ビジネスプロセスを徹底的に変革する取り組みとなる」と、強調する。

  • コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏

    コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏

近年では、AIやRPA、ビッグデータ、IoTなどは成熟段階を迎えており、企業もCDOを設け、デジタル技術を活用することで研究開発や製造、マーケティング、販売、保守をはじめ、直接業務の変革に取り組んでいる。

しかし、間接業務は各企業の経営層間で問題意識に差があり、意識が低いと直接業務はデジタル技術で高速化・高精度化していくものの、間接業務は紙と人に依存する状況となっている。一方、意識が高い経営層は、間接業務は全社員が携わるものであるためデジタル化することで、意識変革の起爆剤にしようと考えているという。

同社では間接業務の中でも従業員の経費精算、ベンダーへの請求書業務、出張業務のデジタル化を支援している。主な効果領域として、経費精算では不正抑止・違反低減、入力の全自動化・モバイル化、経費削減、請求書業務については公正なベンダー選定、入力のBPO化、ベンダーに対する購買交渉力、出張業務に関しては統制された予約手配、出張の利便性追求、航空会社・ホテルネットワークとの交渉となる。

間接業務のデジタル化に向けて、同社は8つのフレームワークを備えているが、特に「ペーパレス」「キャッシュレス」「AI・RPA」「エフォートレス」の領域について、三村氏は説明した。

ペーパレスについては、領収書・請求書のデジタルビジョンとして、ステップ1が紙のみの「A2A(Analog to Analog)」、ステップ2が社内処理をデジタル化する「A2D(A to Digital)」、ステップ3がデジタルデータで処理をすべて間接する「D2D(Digital to Digital)」の実現を目指している。請求書はA2Dの普及が開始し、今後はD2Dが普及していくことが見込まれている。

  • 領収書・請求書のデジタル化ビジョンの概要

    領収書・請求書のデジタル化ビジョンの概要

だが、領収書に関してはA2Dが普及期を迎えているものの、D2Dは法人カードデータの使用先と発行元が異なることに加え、摘要がないためカード実績が証憑として認められておらず、領収が必須であることから、規制緩和が必要となっている。三村氏は「政府などへの規制緩和を働きかけていく」という。

  • 領収書・請求書のデジタル化には課題も存在するという

    領収書・請求書のデジタル化には課題も存在するという

キャッシュレスに関しては、交通系ICカードや法人カードのデジタルデータを用いて人手を解すことなく、一気通貫で経費精算を完了することを可能としている。現在、JR東日本とSuicaのデータベースとコンカーのクラウドのデータベースを連携させ、経費精算を瞬時に完了できる実証実験を行っており、2020年の実用化を目指している。

AI・RPAでは、SAPの「SAP Leonardo」をコンカーの「Concur Expence」「Concur Invoice」「Concur Travel」に活用しており、スマホから領収書を読み取る際や請求書を読み取る時にOCRとAIを連携させることで、読み取りの精度向上を図っている。

エフォートレスについては、同社では経費精算業務を全自動化することをビジョンとして掲げている。同社製品はオープンプラットフォームのためAPI連携を促進し、多様な外部サービスと連携していくことで、新たなユーザー体験を提供するという。