リンクトイン・ジャパンは、日本をはじめとするアジア太平洋地域9カ国を対象にした「仕事の機会に対する意識調査」を実施。その結果を発表した。

これによると、「仕事を実現したい機会を獲得して、達成していく自信があるか」という質問に対して、日本は「79」と9カ国のなかで最も指標が低く、インドネシアは「116」で1位、インドが「111」で2位となった。

同社日本代表の村上臣氏は、「経済が伸びている国では、仕事に対して、自信を持っている人が多い。一方で、見通しが不確かになっている先進国では低い指標になっている」と分析。

「日本における自己肯定感の低さは、これからの課題になってくるだろう。楽しく、いい仕事をすることに対して、自己肯定感の低さは障壁になる。これに対して、リンクトインとして、なにができるのかということを考えるきっかけになった」と述べた。

  • リンクトイン・ジャパン 日本代表の村上臣氏

調査は、GfKに委託。日本、オーストラリア、中国、香港、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールの9カ国において、リンクトインを使用している18歳から60歳までの約1万1000人を対象に、2018年9~10月に実施。オンラインインタビューの方法を採用している。100を自信の基準点として使用。得点が高いほど、強い自信を持っていることを示している。

  • 仕事の機会を得て、それを実現していく自身があるか?

調査では、日本では、現在の仕事で最も実現したい機会として、「新しいスキルを学ぶ」が20%、「国内でやりがいのある仕事」が18%、「キャリアアップ」が7%と上位に入った。

  • 日本人がもっとも実現したい仕事の機会を得て、それを実現していく自身があるか?

「日本でも、転職が少しカジュアルなものになってきたが、重い意思決定であることに変わりがない。それでもキャリアアップを目指している人が増えてきているのは変化のひとつである。一方で、学ぶ意識が強いことも日本の特徴になっている。自信をつけたいという意思が高まっていることの裏付けともいえる」(村上氏)

中国やインドでは、スキルを学ぶことが高く、キャリアアップでは中国、マレーシアでの指標が高い。また、起業したいという回答が多い国は、インドネシアやフィリピンとなった。

  • アジア太平洋地域全体で最も実現したい仕事の割合

「日本はスタートアップブームといわれるが、わずか6%に留まっている。これは意外な結果であり、日本では、起業することはまだ重たいものになっている」(村上氏)

なお、リンクトインラーニングは、日本語で600以上、英語では2000以上の講座を用意しており、仕事をする上で必要なスキルを修得できる。修了するとリンクインのプロフィールに掲載されるため、対外的にどんなスキルを持っているのかを示すことができる。

一方、仕事で実現したい機会を阻む要因では、日本では、「個人の財務状況」が26%と最も多く、次いで、「失敗に対する恐れ」が24%、「自信がない」が23%となった。

  • 日本で実現したい仕事の機会を阻む要因

「これらの結果は、日本ならではの特徴。このまま辞めずにいまの会社に留まれば、生き残れるという意識が強い。失敗したくないということは、チャレンジする意識が低いということでもある」(村上氏)

また、この設問では、フィリピンやマレーシアでは、「個人の財務状況」が高く、この背景には貧富の差が激しいと分析。さらに、香港やインドネシアでは、「ネットワーキングやコネクションの欠如」が高く、中国との連携や、コネが重要であるという国特有の事情が反映されているとした。また、シンガポールやオーストラリアでは、「求人市場が厳しい」という回答が高く、いい仕事に対するコンペティションが激しいことが背景にあるとした。

  • アジア太平洋地域で実現したい仕事の機会を阻む要因

将来、仕事で実現したい機会は、複数回答の結果、日本では、「生活における選択肢を持つ」が39%、「ワークライフバランスのある仕事」が38%、「自分のスキルを活用できる」が38%、「新しいスキルを学ぶ」が31%となった。

  • 将来、日本人が仕事で実現したい機会

同氏は「選択肢を持つという回答が最も多いことは、日本における仕事に対する考え方が変わってきていることを示している。言い換えれば、いまは、選択肢が少ないことを実感していることの表れだといえる。副業解禁などの動きもこうした動きを後押ししているのでないか」と分析した。

スキルを活用したい、新しいスキルという回答が上位に来ているのは、中国や香港、インドネシア、フィリピン、インドなど、技術進化が速く、技術に対する関心が高い国だという。

一方で、将来仕事において実現したい機会として、フィリピンやインドネシアでは、50%と半分を占めており、起業することが前提となっていることも興味深い」とした。

  • アジア太平洋地域で将来、仕事で実現したい機会

今回の調査結果を通じて、村上氏は、「日本では、働くことに対する意識が変化してきている。終身雇用という仕組みが変化し、選択肢を持ちたいという声が多くなっている。会社が人を育てるというのがこれまでの日本の企業の仕組みであったが、いまは、自分の意思で、キャリアやスキルを得たいという傾向が出てきている。会社に委ねていたキャリアやスキルの育成を、自分の手に戻してほしい」と総括した。

 さらに、同氏は、「リンクトインは、転職ツールというわけではなく、仕事をするために必要なツールに位置づけている。最新ニュースを得たり、人脈やネットワークづくりといった使い方ができ、生産性を高め、個人が成功することを支援することができる。来年にはさらに多くのサービスを提供できる」と語った。現在、日本では200万人の利用者がいるという。