日本ヒューレット・パッカードは7月17日、Armベースのサーバプラットフォームである「HPE Apollo 70 System」を販売開始した。価格は170万4800円(税別)から。

新製品は、6月18日に米ヒューレット パッカード エンタープライズ(HPE)が発表した、米エネルギー省(DOE)及び同省サンディア国立研究所と共同で開発を行う、世界最大級となるというArmベースのスーパーコンピュータ「Astra」のベースとなるシステム。

Astraは、米国のVanguardプロジェクトの一環として、国家核安全保障局(NNSA)が使用し、国家安全保障、エネルギー、科学といった分野の高度なモデリング及びシミュレーションワークロードを実行する新しいシステムとして利用する。

HPEはエクサスケールの早期実現を目指し、これまでx86ベースの技術が主流だったハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)のエコシステムにArmなど新しいプロセッサを提供することで、高い競争優位性や多くの選択肢を可能にし、次世代スーパーコンピュータを支える広範なネットワークを構築しているという。

また、急増するデータ集約型HPCワークロードに対応し、メモリ主導型アーキテクチャの開発を進めている他、Armベースの堅牢なHPC技術をスーパーコンピュータのAstraや次世代のシステムに採用することで、高機能サーバの高密度化にも取り組んでいるとしている。

Apollo 70 Systemは、HPE初のArmをベースにした高密度・高拡張性システムとして、従来製品には無い選択肢と高い柔軟性をHPCプラットフォームにもたらすという。

同社標準のプロビジョニング、クラスタ管理、パフォーマンスソフトウェアに対応しており、HPC技術を容易に導入できるとしている。

メモリ集約型HPCワークロード向けに設計した64ビットの「Cavium ARMv8-A ThunderX2」 Server Processorを搭載し、業界の標準的なサーバと比較した場合、メモリ帯域幅を最大33%向上させるという。

また、Red HatのEnterprise Linux、SUSEのLinux Enterprise Server for ARM、Mellanoxの高速InfiniBand及びEthernetファブリックソリューションなど、HPEのパートナーエコシステムが提供するHPCコンポーネントにも対応しているという。

なおAstraは、2.3ペタフロップを超える理論ピーク性能を備え、従来の市販製品と比較した場合、メモリ性能を最大33%向上させる他、高いシステム密度を可能にするという。

DOEに属する機関として米国の核兵器、核拡散防止、及び海軍原子炉プログラムの管理とセキュリティを統括するNNSAは、Astraによりモデリング及びシミュレーションツールを進展させ、データ集約型科学実験における分析精度の向上を図るとのこと。

また、Astraはサンディア国立研究所に設置し、HPE Apollo 70 Systemで動作するという。

このHPC専用プラットフォームには、ArmベースのCavium ThunderX2プロセッサを搭載する。 Astraは2592台のデュアルプロセッササーバ構成により、14万5000基以上のコアを持ち、各2Uフォームファクターに4ノードの高密度を実現しているという。

HPEは最適な性能をもたらすためとして、HPE Performance Software - Message Passing Interface(MPI)、HPE MCS-300 Cooling Unit、HPE Performance Cluster Managerといった独自技術も提供するという。

Performance Softwareは、プロファイリング及びランタイム最適化ツールを備え、コードを再コンパイルすることなく、既存MPIアプリケーションのパフォーマンスを向上させる高性能MPIライブラリ。

高度に最適化したという同社独自のMPIにより、HPCアプリケーション実行時のパフォーマンスを高速化し、拡張性を向上させるとしている。

MCS-300 Cooling Unitは、エネルギー消費を抑え、高密度システムをサポートする電力効率にすぐれた水冷システムとのこと。

水冷方式のインフラストラクチャにすることで、HPCシステムの密度と運用環境を向上させ、従来の空冷方式よりもコストを抑えられるという。

Performance Cluster Managerは、HPCクラスタに特化した同社初という統合型システム管理ソフトウェアとのこと。

システムセットアップの高速化、総所有コストの削減、生産性の向上、ハードウェアに関連する高い費用対効果を可能にするとしている。