京都大学は、同大生存圏研究所の中川貴文准教授が、独自に開発したシミュレーション理論によって木造住宅の地震時の損傷状況や倒壊過程を正確に検証できるプログラム「ウォールスタット(wallstat)」の最新版を、フリーソフトとして公開したことを発表した。

  • 木造住宅倒壊解析ソフトウェアwallstatの活用イメージ

    木造住宅倒壊解析ソフトウェアwallstatの活用イメージ

wallstatは、パソコン上で建物を3次元的にモデル化し、過去に起きた地震や想定される極大地震などさまざまな地震動を与え、木造住宅の耐震性能を動画で確認できるソフトウェア。建物が完全に倒壊するまでを計算できるのが特徴で、これまで数多くの実大振動台実験の成果等を踏まえ、独自のシミュレーション理論の開発と検証を重ねてきた。

このたび公開された最新版では、以下の3つの新たな機能が追加された。まず、制振装置のモデル化機能として、地震の揺れを軽減する制振装置の効果を市販の制振装置に幅広く対応する3つのモデルによって検証できるようになった。

また、木造住宅用CADとの連携強化の面で、実務で使われている木造住宅用CADの詳細な建物情報を直接読み込めるようになった。そして、構造設計支援機能においては、プッシュオーバー解析(鉄筋コンクリート造や鋼構造のビル等の構造設計に用いられている計算方法)を簡単操作で行えるようになった。これにより、地震力等が作用した際の建物の壊れるまでの性能(終局性能)の評価が可能となっている。

これらの新機能により、大学・企業等で研究開発に携わる技術者だけでなく、工務店やハウスメーカー、地方自治体などの幅広いユーザーが耐震性能の検証、顧客へのプレゼン、防災意識の啓発などに活用されることが期待される。なお、wallstat最新版は、京都大学の木造住宅倒壊解析ソフトウェアwallstatの配布ページより無償でダウンロードできる。