NECは2月27日、長岡工業高等専門学校の協力により、耳穴の形状の個人差を音で測定する独自のバイオメトリクス認証「耳音響認証」の強化技術として、人間の耳には聴こえない音(非可聴音)で個人を認証する技術を開発したと発表した。

今回開発した技術は、マイク一体型イヤホン(以下、イヤホン)から送出する高周波の非可聴音により、耳穴の形状を表す音響特性を正確かつ安定的に測定することを可能にするもの。

人間の耳では聞こえない高周波(18~48 kHz)の音を耳穴(外耳道)に送出し、その反射音を分析して個人の特徴を抽出する。反射音としてとらえた30kHzから40kHzの周波数帯は、個人差が現れやすく、個人に特有の特徴を抽出できるという。

  • 人間の耳には聴こえない非可聴音を送出しその反射音から個人を認証

しかし、高周波の音は、周囲の電気機器やイヤホン自体が発する高周波ノイズの影響を受けやすく、また外耳道の内壁に当たっても反射せず壁面に吸収されやすい性質があるため、NECではこれらの課題に対して次の2つの手法を開発し、高周波の音響特性の正確かつ安定的な測定を実現したという。

1つは、短時間同期加算法で、非可聴音を反復的に送出して複数回の特徴抽出を行い、それらを平均することにより、ノイズを低減して本来の外耳道の音響特性を強調する。

2つ目は、対数フィルタバンク法で、個々の周波数ごとに取得された音響特性はノイズの影響で安定しないため、隣接する周波数をまとめた上で音響特性を平滑化することで、ノイズの影響をさらに低減する。

今回、イヤホンの設計についても、マイクやスピーカーの形状や配置、構造などを工夫することで、高周波の反射音の効率的な取得を実現したという。

  • 個人によって異なる耳穴の形状の違いを可聴音と非可聴音で測定

今回の技術は、重要インフラ施設の保守・管理や警備などでの安全・安心に関わる業務でのなりすまし防止や、医療現場やコールセンターなどでのハンズフリー認証による業務効率化、さらに人々の生活に密着したスマートイヤホン領域などへの応用を視野に、2018年度の実用化を目指すという。