自転車で知らない街の隠れた景色や趣のある建物など気ままに巡ることは楽しいものだ。自動車やバイクとは異なり、駐車スペースの確保を気にせずに、小道から大通りまで行きたいところを進んで行ける。ソフトバンクグループの社内アイデア新規事業提案制度から設立されたOpenStreet社。同社が展開する自転車シェアリングシステム「HELLO CYCLING」は、東京を中心に設置された各ステーションで借りた自転車を別のステーションで返却するシェサイクリングサービス。スマホで会員登録をしておけば、利用予約や検索、決済までをスマホやPCで完結できる。1アカウントで複数台の利用にも対応しているのも嬉しい点だ。
現在「HELLO CYCLING」は、東京都を中心にステーションが数多く設置してあるが、同サービスを瀬戸内海の小豆島(しょうどしま/香川県)に500台規模で導入しようという試みに向けた実証実験が12月18日から2018年5月7日にかけて行われる。実験を行うのは、セグラス スクエア社とシェアリングサービス社が設立したハローアイランドで、地元企業や観光協会と協力しながら小豆島の交通インフラ強化を目指す。映画「二十四の瞳」の撮影舞台としても知られる小豆島には、撮影で使われた木造校舎をはじめ、資料館に映画館、茶屋、ユニークな土産物屋など約1万平方メートルの小豆島映画村もある。自然が色濃く残り日本三大渓谷美とも称される寒霞渓(かんかけい)、"迷路のまち"とも銘打たれ、石垣に囲われた趣ある家屋や建物が並ぶ街並みや瀬戸内海を展望できる景色と自転車があれば、より一層楽しめそうな場所だ。
実証実験は、2019年に開催される現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」に向けて自転車500台規模での運営を目指すもので、30のステーションを設置。タクシーやバス、レンタカーなどの既存の移動手段との組合せで、島の課題でもあるという交通インフラ強化を目指す。実証実験期間中の利用料金は15分/100円、24時間/1,500円。
小豆島観光戦略会議 本部長/二十四の瞳映画村 専務理事 有本 裕幸さんは「外周158kmある小豆島には観光・文化・産業・景観など『インスタ映え』するスポットが多く、幹線を走る路線バスをカバーする意味でも自転車シェアリングが小豆島に導入されたことは画期的なことです。船から電動自転車へのバトンタッチにより、観光で小豆島を訪れる人の自由度がさらに引き上げられるとともに、海岸線での魅力的なサイクリングを楽しんでいただけるはずです。」と外周158kmと大きな小豆島に、新たな交通手段が加わることでさらに魅力が増加することを強調している。
また、一般社団法人 小豆島観光協会 事務局長 石床 渉さんは、「小豆島では観光のみならず比類ない産業や文化が古くから受け継がれ、そして今も残されています。狭い路地の奥にある醤油蔵や素麺工場、日本の原風景が残る場所にある農村歌舞伎舞台など小豆島の魅力を満喫するには二次交通の拡充が急務でありました。そのような状況の中、利便性に優れ、環境に優しい自転車シェアリングサービスを導入したことは小豆島において画期的な観光の手段を得たと言えるでしょう。」と二次交通手段が課題であったこと、そしてそれを解決する手段としてシェアリングサイクリングが適していたことを述べている。