ディープラーニングは未来のものではない。今回紹介した記事では、Googleの担当者が自社内のサービスに広く活用している例を紹介している。Googleでの画像検索やAndroidの音声認識、果ては広告の最適な配置方法の検討に至るまで、幅広くディープラーニングでの解析結果が使われているという。特にアメリカでは、大手IT系企業のほとんどがディープラーニングの活用に力を注いでおり、NVIDIAにとっても大切なパートナーとなっている。

NVIDIAのWebサイトより。同社はディープラーニング系について、多数の大手IT企業とパートナーシップを組み、事業を展開している

画像は、NVIDIAのページから抜粋したパートナー企業の例である。IBMやfacebook、Microsoftがパートナーに名を連ねていることに違和感はないだろうが、ちょっと注目の企業の名もある。それが「Netflix」だ。

Netflixは世界最大のビデオオンデマンドサービスの運営元で、日本にも今秋参入が決まっている。ビデオサービスの提供元がディープラーニングとは、ちょっと意外な感じもする。Netflixはこれまで、ディープラーニングの使い道について明確に説明をしたことがない。しかし周辺事情を聞くと、今の用途がおおむね見えてきている。

Netflixは、番組に多量の付加情報をつけている。同じ恋愛ドラマでも「男性向きか女性向きか」はもちろん、「ハッピーエンドかどうか」「コメディ性はあるのか」といった、ジャンルを越えた情報をデータ化している。分類総数は7万以上と言われており、日々進化している。そうした情報は、「顧客がどんな映像作品を好むのか」という趣味趣向のデータベースとして活用されている。

たとえば、あるハリウッド・アクションを、金曜の深夜(すなわち疲れている時)に途中で見るのを止めた40代男性が、次に見ると満足してくれる可能性のあるコンテンツはなにか……という推測まで行うわけだ。サービス開始当時は、そうした「サジェスチョン」の精度は高くなかったが、現在はサジェスチョンの精度の高さが、顧客のサービスからの離脱率の低さにつながっている。

Netflixの従業員の4割はITシステムを担当しているが、さらにその多くがデータ分析に関わるエンジニア。どれだけ力を入れているかわかる。ディープラーニングは、こうした分析の他に、「分析のソースになる付加情報の決定」に使われているのでは……と予測できる。

画像認識や自動運転のような未来的でわかりやすいものだけでなく、我々がなにげなく行う「選択を助けるサジェスチョン」にも、ディープラーニングは使われる。だからこそ、家電は常にネットワークにつながっていて、サーバーと情報をやりとりする存在でなくてはいけないのである。