2014年のデザイントレンドの5つのポイント !

後半は、いよいよ本題である2014年のWebデザイントレンドについての話に突入。福岡氏を中心に、若手デザイナーの冨田氏の実例や、シニアクリエイティブディレクターの戸塚氏、UIデザイナーの鈴木氏の現場での経験や知見も交え、「フラットデザイン」や「レスポンシブデザイン」「パララックス」などのトレンドについて、深く掘り下げた解説や考察を行った。

FICC シニアクリエイティブディレクター 戸塚省太氏

1. コンテンツの魅力を引き出すフラットデザイン
突如として現れ、またたく間にWebサイトを席巻したフラットデザイン。なぜ、それほどまでの影響力をもつようになったのか。「スキューモーフィックはボタンの作成だけで、2~3時間も費やされデザイナーは疲弊していた」(鈴木氏)「オーディオボリュームのつまみのようなスキューモーフィックのデザインは、平面でつまめないのにリアルである必要はあるのだろうか?」(福岡氏)。

2009年頃に主流を極めた「スキューモーフィックデザイン」と比較しながら、フラットデザインの効用を紐解いた。さらに、表示されるサイズに合わせて作成する「ピクセルパーフェクト」デザインの崩壊により、解像度に配慮しなくても作れるフラットデザインが支持されるようになった背景も補足。フラットデザインは、情報量が少なく(多ければ細かく分割し)、余白や写真を大きく使う、コンテンツが映えるデザインとして今後も重宝されるとのこと。

2. レスポンシブデザインは「ユーザー目線」を考えて選択
レスポンシブデザインは、スマートフォンやタブレットなどのデバイスには欠かせないデザインとなっている。ニーズの高いデザインではあるが、コストアップや作業負荷につながる要因も多く、ユーザビリティの点からデメリットもある。レスポンシブ対応がなされていないiPhoneサイトの例を挙げ、VIEWPORTを固定して、ユーザー自身がサイトを拡大・縮小をしながら読みやすい大きさに調整する例や、スマートフォン向けの一番小さいサイズの画面だけを作り、どのデバイスからも見れるようにするという例などを挙げ、ユーザビリティの可能性を示唆。

「キャンペーンサイトでは、こうした方法で作成することも少なくありません。例えば、メインユーザーが若年層で、スマホユーザーが多いとか、予算の関係でPC版とスマホ版の両方は作れないというケースなど、必ずしもレスポンシブデザインが必須というわけではなくなってきました」(戸塚氏)。これからは、ユーザー目線に立ってレスポンシブデザインの有効性を考える必要があるという。

3. パララックスはUIの一種として考えると効果的
バズワードにもなっていた「パララックス」は今回、スクロールと演出を連動させたサイトのことを「パララックスサイト」と定義したうえで解説。フラットデザインやレスポンシブデザインとともに、この時代に急激に増えたデザインの1つである。「その理由は、ページ遷移よりもスクロールのほうがハードルが低くなり、1ページ完結型サイトが増加してきた背景があります」(福岡氏)

それにより問題点も浮き彫りになり、「ユーザーの閲覧ペースの強要」「全然動かない、または逆に速すぎる」など、気持ち良いはずのスクロールを邪魔される気持ち悪さをユーザーが感じるようになってきた。こうした状況を反映して、コンテンツを1画面ずつ分割して見せる「ページ分割」型のパララックスが、新しいUIとして今後発展していく可能性を秘めている。

4. Flashなどのリッチコンテンツは使う前に目的を考えよう
Flashが総合オーサリングツールとして、映像制作などで活用されはじめてきた。リッチコンテンツとしてはFlash以外にも、UnityやCANVASなどがあり、全盛期再来とまで考えられる環境が整ってきた。

FICC フロントエンドデザイナー 冨田一樹氏

「しかし以前と異なり、HTML、CSS、JavaScriptの向上などによってリッチコンテンツに頼らずとも、高度な表現できるようになってきている。リッチコンテンツはボタンの演出に使うなど、部品化される傾向に」(福岡氏)。「Flashが流行っていた頃は、レストランや旅館のサイトでは全画面に使っていましたが、きれいな写真が表示され、シズル感なども演出して、ブランディングとしては成功していましたが、アクション(目的)には結びついていなかった。一連の演出が終わらないとアクセスMAPが閲覧できないとか、SKIPボタンをつけても、最初からアクセスMAPを見たい人には邪魔なものでしかなかった」(戸塚氏)。

Flashなどのリッチコンテンツは手段でしかなく、目的と手段を見誤るとユーザーが離脱する原因になることを解説した。

5. インタラクションとエディトリアルの組み合わせコンテンツは進化する
「情報発信の変遷では、FLASH全盛期はユーザー不在の一方的な情報発信。SEO期では、Googleなどの検索本位となり、情報のあることが重視されていた。それらに比べ、今は、読み手を意識した情報発信が求められている」(福岡氏)。この背景には、Web媒体としての地位が向上し、今まで「Web人」ではなかった人の参入が増えたことが挙げられる。それによりWebに対する需要と供給が増えていき、競争が発生。コンテンツを魅力的に見せる必要性が更に高まり、Webコンテンツもカンブリア紀に突入した。

「実際には、以前のWebコンテンツにはなかった表現や、ECサイトなのにファッション誌のように見出しや写真を大きく使っているものなどもあります。最近では、雑誌の誌面的なレイアウトに加えて、スクロールすると画像にインタラクションな演出があったりして、Webコンテンツならではの表現が増えつつあります」(戸塚氏)。