「Herlock」でアプリ開発の手間を大幅削減

ソニックムーブの青海航介氏

次に登壇したソニックムーブの青海航介氏は「楽々・お手軽! スマホアプリ開発のススメ!」と題した講演を行った。同社は「世の中にもっと便利で面白いものを創りだす」を目標に、ソーシャルゲーム/受託開発/自社サービスソリューションをメイン事業とする企業だ。国内初となるネイティブアプリのクロスプラットフォーム開発環境「Herlock」を提供しており、社内案件にもこのHerlockを使用している。

青海氏はアプリ開発の手間に関して「ネイティブアプリ開発はコンパイル・配布方法・言語などの面で、Webアプリの開発と比べて面倒に感じる部分が多いと思います」と語る。

確認時の工程が多いネイティブアプリ開発

開発時の工程だけを見ると、Webアプリが「コードを書く→アップロード→ブラウザ確認」、ネイティブアプリが「コードを書く→ビルド→端末確認」と、あまり変わらないように見える。しかし確認工程が問題で、Webアプリが「アップロード→確認」で不具合発生時に修正作業を行うのに対し、ネイティブアプリは「端末ID取得→端末ID登録→ビルド→アップロード→インストール→確認」の後、修正箇所があればビルドからやり直さなければならない。

この点について青海氏は、アップルが提供する「iOS Developer Enterprise Program」の使用を提案する。規約上、利用は社内配布に限られており、年間参加費2万4800円、別途Store用アカウント、OTA (Over The Air) 環境などが必要になるものの、端末登録作業を省略できるメリットは大きい。

さらに青海氏は、コンパイルの省略も可能になるという。目的の明確化と可変部分の確保、特定機能を外部データに依存させるなど、ある程度は設計の問題として考えられる。だが、それだけで解決できない部分もあるためJavaScriptエンジンを導入し、コンパイルレスの動的実行環境を作り出すというのだ。要件次第ではWebViewベースという方法も利用できる。

ただし、導入する上では「設計レベル>環境レベル>実用レベル」と、ある程度のブレイクダウンが必要になる。例えば、すでにあるものを利用する場合、動作環境にハイブリッドモバイルアプリ開発フレームワーク「PhoneGap」を、開発環境にHTML5モバイルアプリ開発プラットフォーム「Monaca」を用いる方法も有効だろう。

しかし、ソニックムーブではより高いパフォーマンスを求めてHerlockを開発したそうだ。JavaScriptを動的に実行することにより、コンパイルレスでの実装レイヤー確認およびWebブラウザライクな開発環境が実現可能。さらに用途を満たしたパフォーマンスも出せるという。 「動的に実行可能な環境を挟むことで、Webブラウザベースの開発に近い感じになります」と青海氏は語り、実際に会場でデモを行った。現在はHerlockの追加開発を行っているそうだ。

そのほか青海氏は、開発におけるリソースについても言及した。ヒューマンリソースに関しては、絶対数の少なさや技術力のばらつきなどでリソース確保の難易度が上がったと指摘。ここでもやはり、環境として整ってきているJavaScriptに優位性があるという。ただし青海氏は「銀の弾丸ではないので、あとは社内の取り回しに合わせて考えていく必要があります」と語る。物理的なリソース問題に関しては、社内ワークフローの共通項整備、共通言語・共通認識の作成など、開発環境の方を寄せることである程度まで吸収できるという。新しい技術を、既存のものの再利用に使うことも重要だ。ちなみにソニックムーブの社内ではHerlockを使い、全員がモノを見やすいWeb開発に近い環境を意識的に作り出している。

まとめとして青海氏は「開発環境はわりと考える余地のある領域です。仕組みで解決できるものは積極的に活用し、いまあるものを上手く活かす方法が重要になります。工夫の余地は必ずあるので、楽できる部分は楽をしてより良いものを作りましょう」とエールを送った。

動的に実行可能な環境を挟み込むことで、Webブラウザベースに近い開発環境が構築可能に

Herlockを使い、全員がモノを見やすい環境を意識的に作り出している

3つのSDKでゲームユーザーを活性化

カヤックの杉政英樹氏

最後に登壇したカヤックの杉政英樹氏は、「コストをかけずに、ゲームユーザーを活性化させる3つの方法」と題した講演を行った。

同社は、「姫騎士と最後の百竜戦争」や「冒険クイズキングダム」などのソーシャルゲーム、リアルタイムな情報交換が行えるチャット&ゲームコミュニティサービス「Lobi」を運営する企業だ。

Lobiでは"ゲームをおもしろくする3つのSDK"として、コミュニケーション促進用の「チャットSDK」、ランキング表示が可能な「Ranking SDK」、簡単にプレイ動画が作成・共有できる「REC SDK」を提供している。これらは3つのKPI「新規獲得×継続率×課金率」に対応しており、チャットSDKで継続率と課金率のアップ、Ranking SDKで継続率アップと課金ポイント、REC SDKで共有と継続率アップを実現するものだ。杉政氏はこれらの機能について順番に解説していった。

チャットSDKは、アプリのファン全員が交流できるチャット機能を実装可能。継続率アップに貢献する機能として、アプリ独自のスタンプ、アリーブメントスタンプ、ギルドチャット、チャットからゲーム内への遷移といったことが行える。

Lobiでは"ゲームをおもしろくする3つのSDK"を提供

アプリユーザーのリアルタイムコミュニケーションを実現するコミュニティ機能

Ranking SDKは、iOS/Androidに両対応しており、Facebook連携や追い越し通知機能を搭載。ゲームとの融合性や、マネタイズ支援効果も特徴といえる。

REC SDKを使うと、特にゲームユーザーと相性が良いプレイ動画の作成や共有が可能になる。

杉政氏は「プレイ動画はダウンロードを促進します。友達のプレイ動画は最高の広告であり、SNS連携による広告効果、そしてバイラルダウンロードにも貢献します」と語った。

REC SDKではインカメラを使った実況をはじめ、ゲーム内アイコンでの実況や音声の有無など各種設定、LINE/Facebook/Twitter/YouTube/Lobiによるシェア機能も利用できる。ユーザー側では再生回数順/スコア順/タグでのソートが可能で、動画をシェアするとゲーム内コインを付与するシステムも設けている。これにより"拡散の仕組み化"を実現しているわけだ。

最後に杉政氏は「SDKはいますぐ無料で使えるので、皆さんもぜひ活用してください」とアピールした。ニフティクラウド mobile backendで効率良くアプリを開発しLobiで更に面白くするという提案は大変興味深く、また共に費用の心配がほとんどないというのが驚きだ。

最高の広告として、SNS連携でのバイラルダウンロードにも貢献するプレイ動画

セミナー終了後には飲食を伴った懇親会が開催され、セミナー講師やニフティクラウド関係者、受講者同士の交流が行われたり、急遽飛び入りのセミナーが行われたりと終始盛況な『ニフティクラウド meet-up!』となった。

ニフティクラウド mobile backendは、単に効率良くサーバ連携アプリが開発できるサービスというよりも、いかにヒットするアプリ開発環境を提供するかを追及しているサービスではないだろうか。アプリ開発を検討している方は無料のプランから試してみてはいかがだろう。