ソフト面から見ると、スマートフォンは順調に「エンターテインメントデバイス化」を続けており、ゲームアプリ市場も拡大した。3Dゲームなどメモリーバンド幅を必要とするコンテンツも多く、LPDDR3搭載機ですらさらなるパフォーマンス向上を望む声がある。モバイルメモリのバンド幅拡大をけん引する主因は、前述したとおり急速な解像度アップにあるが、コンテンツの質的向上やネットワーク速度改善によるデータ許容量増大がそれに拍車をかけている形だ。

モバイルデバイス用メモリの標準化を進める団体・JEDECが公開したロードマップによれば、2014年はLPDDR3の高速化版「LPDDR3E」への移行が開始される。64bit/デュアルコアCPUで一般的な2チャネル構成であれば17.1GB/sに到達するというから、相応のパフォーマンスアップが期待でき、これを採用したデバイスの登場も見込まれる。次世代のLPDDR4は2014年に仕様が確定される予定であり、製品が流通し始めるのは2015年以降になるだろうか。

一方、DRAMがパフォーマンスのみ追求する時代も終わりつつある。より薄く/軽くというスマートフォンの性格からすると、実装面積を小さくして薄型化/軽量化を進め消費電力節減を狙う必要もあるはずだ。微細化が限界に近づきつつあるとされるDRAMの外に目を向ければ、DRAMに匹敵する高速性を持ちながら格段に省電力な不揮発性メモリ「STT-MRAM」という技術があり、数年内には量産体制が確立されスマートフォンにも採用されることだろう。同じく不揮発性メモリのReRAMとあわせ、動向を注視して行きたい。

STT-MRAMが量産開始となればスマートフォンにも大きな影響があるはず(写真は東芝が開発した垂直磁化方式STT-MRAM

数年前には想像できないほどの勢いで進化し普及を遂げたスマートフォンだが、メモリに関する事柄だけ見てもこれだけの"伸び代"があり、CPUやGPUを含めた基礎部分にはさらなる可能性があることからしても、巷で言われ始めた完成の領域は遠いように思う。2014年のスマートフォンは、基礎部分における新技術の萌芽が確認できるかどうか、個人的にはそこが見どころのひとつだと考えている。