携帯キャリア各社は現在、高速通信のLTEサービスに力を入れており、エリア展開や高速化でしのぎを削っている。各社から販売されているスマートフォンの多くもLTEに対応したモデルとなっているが、これらのLTE対応スマートフォンでは、快適な通信を利用できる一方で、従来よりも利用料金が高額になる可能性があり、注意が必要だ。

その中のひとつが通話料で、LTE対応スマートフォンでは、無料通話分のない料金プランしか選べず、通話料も21円/30秒という高めの設定となっている。そのため、頻繁に電話をかけた月などは、利用料金の合計が想像以上に高額となってしまうことがある。

LTE対応スマートフォンの高額な通話料が注目される中、脚光を浴びているのがスマートフォンから無料や格安の通話料で電話をかけられるIP電話アプリだ。IP電話アプリはインターネット経由で通話する仕組みとなっており、外出先でも高速通信を利用できるLTE対応スマートフォンとも親和性は高い。本稿では、IP電話アプリでも代表的な「SMARTalk」と「050 plus」という2つのサービスを比較し、料金や機能などの違いについて見ていきたい。

SMARTalk(左)と050 plusアプリの利用イメージ。ともにiOS版

IP電話アプリとは何か?

まず、IP電話アプリとは何かについて、簡単におさらいしておこう。IP電話アプリは、インターネット経由で音声通話ができるスマートフォン向けIP電話だ。スマートフォンの通常発信よりも格安の通話料で電話をかけられるのが特長で、ユーザー同士で無料通話を楽しむことも可能。

スマートフォンでは、「LINE」などの無料通話アプリも人気となっているが、これらのアプリでは同じアプリ間でしか通話できないのに対し、IP電話アプリでは"050"から始まる電話番号を使って、固定電話や携帯電話の番号にも電話をかけることが可能になっている。

「SMARTalk」と「050 plus」を徹底比較

スマートフォン向けのIP電話アプリの中でも代表的なのが、「SMARTalk」と「050plus」の2つだ。SMARTalkは、フュージョン・コミュニケーションズが提供するスマートフォン向けIP電話サービス「IP-Phone SMART」の公式アプリ。月額基本料が無料で、固定・携帯電話に一律の通話料で電話をかけられる。一方、050 plusは、NTTコミュニケーションズが提供するIP電話アプリ。月額基本料は315円となっているが、とりわけ固定電話への通話料が安いのが特長だ。それでは、2つのサービスの詳しい料金や機能などを見てみよう。

SMARTalkと050 plusの料金、サービスなどを比較してみた

まずSMARTalkについて説明する。同サービスは、先述のように月額基本料が無料となっており、初期費用も無料のため、月によって電話をかける頻度が変わる場合でも気軽に利用できる。また、固定・携帯電話のほか、有料の050IP電話やPHSへの通話料も一律の8.4円/30秒となっていて分かりやすい。LTE対応スマートフォンの一般的な国内通話料は21円/30秒のため、半額以下で通話可能。また、国際電話は通話できる国は限られているが、主要国への通話料はアメリカ以外では050 plusよりも安くなっている。

また、050 plusでは利用できない機能として、着信転送や通話内容を録音できる機能を備えているほか、アプリを起動していなくても着信がプッシュ通知されるため、スマートフォンのバッテリーをより長持ちさせることが可能だ。

さらに、SMARTalk同士の通話のほか、対応するISP(インターネットプロバイダ)のIP電話サービスの050番号との通話も無料となっている。また、先日実施されたiPhone、Android向けアプリのバージョンアップにより、無料通話可能な050番号を入力すると「無料通話」マークが表示されて事前に確認できるようになった。

一方の050 plusでは、月額基本料315円となっているが、固定電話や有料の050IP電話への通話料が8.4円/3分でSMARTalkよりも安い。固定通話などに電話をかける機会が多い人にとっては、月額基本料を支払ってもお得になると言えるだろう。携帯電話への通話料は1分換算ではSMARTalkと同額となる。国際通話は対応する国が多く、アメリカへの通話料はSMARTalkよりも安いが、ヨーロッパやアジアなどの主要国への通話料はSMARTalkよりも割高だ。

050 plus独自の機能としては、050plus同士でテキストメッセージや写真を送受信できるコミュニケーション機能を搭載。また、スマートフォンの通常発信と比べて、どのくらい通話料がお得になったかを確認できる「おトク額表示」や、電話帳をグループ分けできる機能を備えている。また、申し込み時には、利用する050番号の下4桁を指定できるなど、電話番号を選べるのも特徴のひとつだ。

そのほか、SMARTalkと同様に、050 plus同士の通話、対応するISPのIP電話サービスの050番号との通話は無料。無料通話が可能なISPは、050 plusのほうが多くなっている。なお、着信時には、電話をかけてきた相手側に「050 plusにお繋ぎします」というアナウンスが流れるようになっているので、あらかじめ留意しておいたほうが良いだろう。

「SMARTalk」「050 plus」は、それぞれどんな人に向いている?

基本利用料や通話料、機能やサービスが異なるSMARTalkと050 plusだが、それぞれどのような人に向いているか考えてみよう。まず、SMARTalkは基本利用料が無料のため、月によって電話をかける頻度が異なる人におすすめだ。たとえ、ほとんど通話を利用しない月があっても、通話料のみを支払えばよいので、使った分だけお得に通話することが可能だ。

一方、050plusは、固定電話や050番号に毎月決まって多く電話をかける人におすすめだ。ただし、基本利用料が必ず発生するため、あまり通話をしない月があると、お得になった通話料の額よりも基本利用料のほうが高くなってしまう可能性がある。

以上のことから考えると、基本利用料が無料で気軽にお得を試せるSMARTalkのほうが使い勝手は良さそうだ。加えて、着信のプッシュ通知機能も常にバッテリー残量が気になるスマートフォンユーザーにとってはありがたい。

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本稿で紹介した通り、IP電話アプリを活用することで通話料を節約することができる。LTE対応スマートフォンに機種変更し、月々の支払額に不満を感じている人は、IP電話アプリの利用を検討してみてはいかがだろうか? アプリのインストールや利用登録など、”ひと手間”かかってしまうが、一度導入すれば便利に活用することが可能。利用しているうちに、きっと通話料の節約を実感できるだろう。