■『CHAOS;HEAD』の着想
結局僕は変態なんですよ。皆さんがどう思っているのかは知らないけれど、音楽も作って、ゲームの原作も書いて、いろいろとやっていて立派だと思ってくれる人が一人でもいるとしたら、それは間違いです。もう変態もいいところですね。何が変態かというと、今日この学校に入ってきてから、いろいろな人にすれちがったんですけど、たとえば、さっきもエスカレーターを上がっているときに金髪のお兄ちゃんがいたんですよ。たったそれだけで、その人の今日の朝からの生活や、これからの人生なんかを勝手に妄想してしまうんですね。「このドキュンなチャラ男め。お前みたいなリア充は、今この瞬間に人生を終わらせてやろう!」みたいな(笑)。だからそんな妄想をゲームに落とし込もう、なんて考えていたら、おのずと妄想がテーマのゲームになってしまった、と。変態でしょ(笑)。

■『STEINS;GATE』は大人気?
売れてると思われるかも知れませんが、実際はそれ程でもないですよ。秋葉原中を探しても見つからなかったんだとしたら、それは売れているというよりも品切れしているだけですね。そもそもそんなに沢山作っていないので。ほら、品切れするぐらいのほうが、無いから欲しいみたいな、無いものねだり的な感じになるでしょ(笑)。

■12番目の法則
12番目の法則は『STEINS;GATE』という作品の中にありますよ。『CHAOS;HEAD』を作っているとき、まず妄想について科学するっていうことをずっと考えていたのですが、もうひとつ別のテーマとして、"時間"ってなんだろうっていうこともずっと考えていたんですよ。もしくは"今"ってなんだろうって。"今"って何だと思います? "今"って無いんですよ。"未来"というものがあって、"未来"はやってくるものではないけれども、とにかく"未来"が過ぎると"過去"になるじゃないですか。つまり"今"というのは通過点でしかないんですよ。それは"点"なのか"線"なのかはわかりませんが、その"今"ということについて考えるんです。たとえば、"今"何やってるの? って、電話とかで聞いてくる人がいるわけですよ。え、"今"って言われても、もう過ぎてるみたい……。こだわっちゃうんですよね。だから変態だって言ったじゃないですか(笑)。

■『STEINS;GATE』の着想
なので、"今"を探すために、今度は時間を科学するという意味で、『STEINS;GATE』を作ったんですよ。ごく自然な流れですね。世界観はリアル秋葉原です。舞台を秋葉原にしたのは、オカリンという主人公がいるんですけど、彼らが作るサークルというか研究機関が、どこかに拠点を選ぶとしたら秋葉原かなと。彼らの考えを想像すると、秋葉原しかないだろうということで舞台に選びました。『CHAOS;HEAD』が渋谷になった理由? それはドキュンの街だからです。あそこが一番苦手なんですよ、僕。

■『STEINS;GATE』で難しかったところ
辻褄合わせかなあ。まず伏線があって、その伏線をどれだけ回収するか。『STEINS;GATE』は『CHAOS;HEAD』よりも伏線回収率が高いんですよ。おそらく、およそ90%は回収していますね。伏線の回収率が低過ぎるのも問題だし、逆に100%回収してしまうと、想像して語ることができないのでWEBなどでのコミュニティが形成されにくかったりします。ここの設定がああだろう、こうだろうってみんなで語るのって、映画でもそうですが楽しいじゃないですか。それから伏線回収とは別に辻褄の整合性にも苦労しました。個人的な所感では辻褄矛盾度は10%以内に押さえたつもりです。つまり10%の伏線未回収部分と、10%の辻褄整合矛盾について、プレイしてくれた皆さんで意見を出し合って考えてもらいたいんです。それには僕も参加したいです(笑)。

(次ページへ続く)