所有している土地に傾斜がある場合、「こんな斜めでも駐車場付きの戸建てを建てられる?」「傾斜地に家や駐車場をつくる場合はどんな準備が必要?」といった疑問を感じている方も多いと思います。
結論からいえば、傾斜地に駐車場付きの戸建てを建てることは可能です。ただし事前に念入りな地盤調査を行ったり、法律による規制がないかを確認したり、十分な安全を確保できるのか確かめる必要があります。
本記事では、傾斜地に駐車場付きの戸建てを建てることを仮定した場合の工事方法や、駐車場をつくる場合に発生する費用の目安について解説します。
駐車場をつくる場合に注意したいポイントを怠ると、どのようなデメリットが発生するのかも解説しますので、参考にしてください。
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傾斜地とは?
土地を活用する際、どのような特徴を持っているか把握することは重要なポイントです。土地の特徴を知ることで、より土地に合う工事や家の建て方を選びやすくなります。ここでは、傾斜地の特徴について解説します。
建築基準法の位置づけは崖
土地が傾いており、そのままでは通常の用途に使えない土地のことです。がけや法面(のりめん)などと呼ばれることもあります。建築基準法では「がけ」(崖)という用語で示されており、19条4項で次のように規定されています。
建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。
“引用: e-Govポータル「建築基準法(敷地の衛生及び安全):第19条4項」”
ここから分かるのは、どのくらいの傾きなら傾斜地なのか定義されているわけではない、という点です。
ただし、自治体によっては、条例等で定義を設けている場合もあります。土地が傾斜地として扱われている場合は、事前にどのような規定があるのか、自治体の条例等を調べておくとよいでしょう。
住宅を建てるためには造成が必要
傾斜地はそのままの状態では通常の土地活用ができないため、造成工事が必要となります。造成工事とは、簡単に言えば山を切り崩したり、土を盛ったりすることで、土地を平らな状態にする工事のことです。
また、斜面の崩落を防ぐためにコンクリートブロックなどで作られた、擁壁と呼ばれる壁状の建造物を建てることがあります。土地に樹木が多く生えている場合は、事前の伐採や根の処理も必要です。
傾斜地に住宅を建てるメリットは多い
造成が必要な傾斜地ですが、家を建てるメリットもあります。立地にもよりますが、次のようなメリットを得られます。
- 平らな土地より価格が安い
- 場所によっては目の前を遮る建築物がほとんどない
- 風通しが良く湿気が溜まりにくい
- 基礎を深く作る必要があるため地下室や半地下を造りやすい
傾斜地は斜面の上の方に家を建てることになるため、周囲を囲む建造物が少なく、展望が良い傾向にあります。周りを遮るものがないことから、太陽光も取り入れやすく、風通しが良いのも特徴です。
また、住宅を建てる場合は基礎を深く作り、その部分を駐車場にするビルトインガレージにする、といった活用方法もあります。
地盤調査は必須
傾斜地の地盤が緩くないか、上に駐車場を造っても崖崩れが起きないような十分な強度を保てるのかを確認するためにも地盤調査を必ず行いましょう。
地盤調査を行う際は、建築士や施工会社を通じ、地盤調査専門の会社へ依頼します。地盤品質判定士や住宅地盤主任技師など、専門家が在籍する実績の豊富な会社がおすすめです。地盤調査報告書の発行や、検査時の不備への補償制度の有無も確かめておくとよいでしょう。
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傾斜地に駐車場を造ることは可能?
家を建てるメリットも多い傾斜地は、駐車場として活用することも可能です。ここでは傾斜地に造ることができる駐車場の種類を解説します。
造成工事をすれば可能である
傾斜地を平らにするための造成工事を行うことで、駐車場として活用できるようになります。これは傾斜地が平地と比べると、大雨が降った際に斜面が崩れたり、傾斜によって車にダメージが及んだりと、さまざまなリスクが高いからです。そこで傾斜地を平らな状態にする造成工事を行うことで、リスクを減らし安全な駐車場を造れるようにする必要があります。
戸建ての住宅を建てる場合は、住宅の建設費以外にも造成工事の費用がかかると考えておきましょう。
造成工事について詳しく解説したこちらの記事もおすすめです。
傾斜地に造れる駐車場の種類1:掘り込み車庫
駐車場用地に接している道路が敷地より高い位置にある場合は、掘り込み車庫を造ることができます。
これは、敷地の上に家を建てる場合、下にある空いた空間に駐車場を埋め込むような形です。コンクリートやブロックなどで床や天井を固めて造るため、イメージとしては地下駐車場が当てはまります。
掘り込み車庫のメリットとデメリットを、以下にまとめてみました。
メリット | デメリット |
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傾斜地に造れる駐車場の種類2:架台車庫
敷地の前にある道路よりも駐車場を造りたい敷地の位置が低い場合は、架台車庫が候補となります。
これは架台と呼ばれる土台を鉄骨を使って造り、その上にコンクリートを打って駐車場を造る方法です。駐車場と道路の段差がなくなるため一見すると使いやすいものの、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット |
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傾斜地のまま駐車場にした場合のデメリットは?
傾斜地であっても、中にはそれほど傾斜が急ではない場合もあるでしょう。
しかし、地盤検査を行い造成工事を検討することは、傾斜地に駐車場を造る上で重要となります。なぜなら、造成工事をせずに傾斜地を駐車場にしてしまうと、次のようなデメリットが起きる可能性があるからです。
- オイルが偏ってしまう
- ボディがねじれてしまう
- タイヤが変形してしまう
オイルが偏ってしまう
傾斜地に車を停めると、オイルパン内でオイルが偏ることで、オイルが各部まで行き届かなくなり、エンジンの劣化や燃費の悪化が起きるリスクがあります。
オイルパンとは、エンジンが滑らかに動くよう使われるエンジンオイルを溜めておくための部品です。このオイルパンが傾き、エンジンオイルがうまく行き届かなくなるということは、エンジンへダメージを与え、車の寿命を短くしてしまう恐れがあります。
2ヶ月以上車を放置する可能性がある場合は、エンジン内部のオイルがオイルパンに落ち切ってしまうため、さらにエンジン始動時のダメージが増し、燃費が悪化するなど不具合が出ることもあります。
ボディがねじれてしまう
車が一定の向きへ傾いた状態が続くことで、車のボディがねじれるリスクがあります。
ボディがねじれると、ドアの開閉に違和感が出たり、ねじれの状態が酷くなると走行中の安全性に悪影響を及ぼしかねません。傾斜地のまま駐車場を造ることは、車の寿命や安全の面からもデメリットが大きいです。
タイヤが変形してしまう
傾斜地の傾きにより、タイヤの片側だけに車の重さがかかることで、タイヤの接地面が変形したり、タイヤの寿命が短くなってしまったりする恐れがあります。
タイヤの変形は自然に戻ることがないため、そのまま運転をするとタイヤが本来の性能を発揮できず、ハンドルがぶれたり、劣化が進むと走行中に突然破裂(バースト)することも考えられます。
造成工事とは?
土地を有効活用するには、活用方法に適した土地の形状や立地であることが求められます。駐車場を造る場合も、造成工事が必要であると解説しました。では、造成工事はどのようなことが行われるのでしょうか。
ここでは造成工事の大まかな流れと共に、工事内容を解説します。
土地の形を整える工事のこと
土地を造成するということは、簡単に言えば工事をして土地を利用目的に適した状態にすることです。傾斜地の場合は、そのままでは駐車場として車を停められないため、斜面を平らにする工事が行われます。
ただし、自分の所有する土地だからといって、造成工事を自由に行うことはできません。造成工事を行うことで土砂崩れなどの災害が起きやすくなる恐れがある場所には、宅地造成工事規制区域の指定が行われ、特別な許可を得る必要があるためです。そのため傾斜地の造成工事は、更地を平らにする場合などに比べると、費用や手間もかかりやすくなっています。
1.整地
斜面のついた土地を削り、平らにする工事を「整地」と呼びます。凹凸が多い土地を平らにするほか、雑草や石、別の建造物から出たコンクリートガラなどを取り除き、地面をなめらかな状態にすることが目的です。
2.伐採・防草
駐車場を造るにあたり、不要な樹木を伐採し、草が生えないように防草シートをかぶせる工事を「伐採・防草」といいます。樹木や草は根っこまで取り除くため、土地に生えている樹木の大きさや数によっては、費用が高額になることもある工事です。これを怠ると、後で樹木や草が生えてきて、土地の強度に影響を及ぼす可能性があります。
また、樹木の数が多い場合は運搬費用が追加で発生することもあります。伐採した樹木は廃棄物処理場へ運ぶ必要があるからです。
3.土盛・土止
駐車場や家の敷地が隣接する道路より低い場合は、土砂などで埋め立てて土地を底上げする「土盛」が必要です。これは駐車場を造る位置に水が流れ込むのを防ぐほか、有効に使える土地の面積を増やす効果もあります。
しかし、工事後に崩れ落ちてしまっては危険なため、合わせて行われるのが「土止」や「擁壁工事」です。鉄筋コンクリートやブロックなどで壁を造ることが多いものの、斜面の角度や高低差によって工事内容は異なってきます。
4.地盤改良
元が田んぼや畑、長期間手入れがされていない土地は、傾斜地に限らず地盤が弱っていることがあります。
そのままでは駐車場を造ったとしても、地震や大雨など災害で地盤沈下やひび割れなどが起こるかもしれません。そこで、土地に鋼杭を打ち込むなど地盤を安定させる「地盤改良工事」を行うことで、安全性を高めます。
傾斜地を駐車場にするための造成費用の相場は?
造成にかかる費用は、結論から言えば立地や傾斜度によって異なります。ここでは費用の相場を解説するとともに、どのような条件が重なると費用が高くなりやすいのか紹介します。
地域別・傾斜別の費用相場
駐車場にしたい地域や傾斜の度合いによって、費用相場は異なります。例として、東京都と大阪府における傾斜度別の費用の相場を、1坪あたりの価格で比較してみましょう。
土地の傾斜度 | 東京都 | 大阪府 |
3~5度 | 37,700円/坪 | 35,400円/坪 |
5~10度 | 64,800円/坪 | 61,200円/坪 |
10~15度 | 89,300円/坪 | 84,600円/坪 |
15~20度 | 138,200円/坪 | 135,200円/坪 |
表を見ると地域によって相場は異なりますが、傾斜が大きいほど造成費用は高くなるという点は共通することがお分かりいただけるかと思います。
特に「急傾斜地崩落危険区域」に指定されている場合は、さらに費用が高くなる可能性があるため、事前の調査が重要となります。この急傾斜地崩落危険区域とは、がけ崩れなどが発生した際に多くの住民に危険が及ぶリスクがある、傾斜度が30度以上ある土地のことです。都道府県知事が指定しており、建物を建てる場合は行政の許可を得る必要があります。
指定地域に駐車場を造る場合は、崩落対策工事が必要です。国や自治体からの補助を受けられるものの、そもそもの工事費用が莫大になり、出費が増える可能性が高いです。
また、駐車場を造りたい傾斜地に樹木が生えている場合は、その木を伐採して根を掘り起こし、処分する費用も掛かります。他の地域から土砂を搬入して土を盛り上げる際には、その費用も必要です。このように費用がかかる要素が多い傾斜地ほど造成費用は高くなります。
擁壁工事費について
勾配がきつい傾斜地の場合、擁壁工事が必要になることがあります。相場としては1平方メートルあたり5万円から10万円です。擁壁工事は造成工事とは別に費用が発生するため、事前に自治体が制定する「がけ条例」を調べ、駐車場を造るにあたり擁壁工事が必要となるのか調べておきましょう。
また、擁壁がすでに作られている場合であっても、経年劣化により補修が必要となることもあります。補修費用は1平方メートルあたり2万円前後ですが、勾配が急で工事を行いづらい場所や、住宅地が近く道幅の狭い道路しかない場合は、運搬費が多くかかることもあるため事前の見積もりが重要です。
そして擁壁工事に対して、自治体によっては助成金をもらえます。助成金の上限額や支給条件は自治体によって異なるため「がけ条例」について調べる際に併せて確認しておきましょう。
業者によって工事費用は変わる
地盤の状態や道路との高低差による作業内容の違いだけでなく、工事を依頼する業者によっても、造成工事の費用が変わります。
可能であれば、自分で複数の造成工事を請け負える業者に見積もりを依頼し、費用を比較してみましょう。これは業者ごと、所有する重機やこれまで手掛けてきた物件によって、ノウハウや対応力が異なるからです。
また、依頼する流れによっても費用が異なります。例えば、住宅と共に駐車場を造る場合、ハウスメーカーや不動産会社に依頼すると、造成工事を別の会社に依頼する過程で中間マージンと呼ばれる手数料が発生することがあるのです。
紹介料として扱われ、費用のおよそ10%ほどが支払われます。逆を言えば、中間マージンが発生した場合は費用が10%増えてしまうことになるため、自分で業者を見つけることは重要といえるのです。
造成工事の業者を選ぶポイント
併せて、業者を探す際には費用が相場に見合っているかどうかだけでなく、次のようなポイントをチェックしておきましょう。
- 過去に駐車場を含め造成工事の実績がある
- 見積書からどのような工事計画か分かる
- 担当者が質問に丁寧に回答してくれる
- 産業廃棄物管理票がある
- 工事が始まってから明らかになった土地の状況への対応などアフターサービスが手厚い
まとめ
地盤調査や造成工事を行うことで、傾斜地でも安全に駐車場付きの戸建てを造ることができます。基礎を深く造る必要があり、造成工事の費用もかかりますが、半地下や地下室を活用して駐車場の設置も可能です。
ただし、適切な工事を行わないと、土砂崩れなど危険が伴うだけでなく、大切な車へダメージを与える原因になる可能性もあります。事前に建築のプロである建築家や地盤調査会社に相談し、自分でも業者選びをしっかりと行うことが大切です。
大切な自宅や車を守るため、今回紹介したポイントを参考にしながら、駐車場付きの戸建ての建設計画を進めてください。
※「マイナビニュース土地活用・不動産投資」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.fsa.go.jp/news/30/20190328_summary.PDF
・https://www.fsa.go.jp/news/r4/kokyakuhoni/20230120/kpi_toushin_230120.pdf
・https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/law1.html
・https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001411696.pdf
・https://www.fsa.go.jp/
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