マイホームや事務所などの建物の建築を検討しているなかで、市街化調整区域内だからとあきらめていませんか? 都市化を積極的に行わない市街化調整区域では、原則として建物の建設が認められていませんが、実は建築できる裏ワザが存在します。
本記事では、市街化調整区域に家を建築する4つの裏ワザや、区域内に家を建てるメリット・デメリットなどを、Q&A形式で紹介します。裏ワザといっても決して脱法的なものではなく、法律に適合したものなので安心してください。本記事を読むことで、市街化調整区域に家を建てるべきかどうか、判断できるようになるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。
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市街化調整区域とは?
まずは、市街化調整区域とはどのようなエリアなのか、定義を見ていきましょう。市街化調整区域について詳しく知らない方は参考にしてください。
都市化を積極的に行わない区域のこと
市街化調整区域は、国内の土地を計画的に開発するために制定された法律である都市計画法に基づき定められた、都市化を積極的に行わないエリアのことです。商業施設や住宅の建設が原則認められない区域でもあります。しかし、以下のようなメリットのあるエリアです。
- 土地の価格が安い
- 交通量などが少なく閑静である
このようなメリットがありながら、生活利便施設が近くになかったり、インフラが整っていなかったりするデメリットもあるため、市街化調整区域に家を建築する場合は、メリット・デメリット両方を理解しておきましょう。
市街化調整区域に建物の建築が規制されている理由は、農地を市街地化から守るためです。農地から宅地にする農地転用が増加した場合、国内の農地が減少し続けてしまうため、市街化調整区域は制定されています。
市街化区域は都市化を進めている区域のこと
市街化調整区域とは反対に、インフラの整備などが積極的に行われる、街を活性化させるために活用するエリアである市街化区域があります。今後10年以内は優先的に市街化を進めていく都市計画エリアです。東京都を例にすると、東京23区は市街化区域です。
市街化区域は、ある程度土地の用途を制限することで環境や利便性を図る用途地域が定められており、要件を満たせば住宅などの建物を建設することができます。
市街化区域も市街化調整区域も、都市計画法に基づいて、大半の人々が住む都市計画区域に含まれています。都市計画区域には、市街化区域や市街化調整区域のほかに非線引き区域があります。
市街化調整区域には建築ができない?活用できない?
市街化調整区域では条件をクリアすれば建築可能です。また、建物を建てることなく、土地を活用する方法がたくさんあります。ここでは市街化調整区域に建築できる条件と、さまざまな土地活用の方法について紹介します。
条件によっては建築可能
市街化調整区域は、一定の条件を満たすことで建物を建築できる可能性があります。一定の条件とは、都市計画法第34条に適合する建築・開発と認められ、知事(指定都市等では市長)の許可(農家等住宅などの場合は事前協議)を得ることです。
周辺に暮らす人々にとって必要な建物や、土地所有者が自ら使用するための建物などであれば、許可は下りやすいです。例えば、高齢者施設や社会福祉施設、医療施設などは許可を得やすいでしょう。
市街化調整区域での立地基準についてより理解を深めたい方は、以下の記事をご覧ください。
建物を建てなくても活用する方法はある
市街化調整区域で建物を建てなければ、許可申請が必要なく、土地活用ができる可能性があります。建物がなくても始められる土地活用の種類は、以下の通りです。
土地活用の種類 | 内容やメリット |
太陽光発電 |
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駐車場経営 |
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墓地 |
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資材置き場 |
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さらに市街化調整区域の土地活用について知りたい方は、以下の記事で解説しています。
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市街化調整区域に建築する裏ワザとは?
市街化調整区域に建物を建築するためには、以下のような裏ワザがあります。
- 農林漁業を営む者の居住用建築物として建築する
- 立地基準をクリアした土地の上に建てる
- 宅地利用が認められている土地の上に建てる
- 開発許可を取得済みの土地の上に建てる
ここでは、各裏ワザの詳細を見ていきましょう。
1.農林漁業を営む者の居住用建築物として建築する
農林漁業を営む者の居住用建築物や農林漁業を行うのための建築物であれば、市街化調整区域での開発許可は必要ありません。農林漁業を営む者とは、農作物の栽培・収穫や林木の育成・伐採、水産動植物の捕獲などを行っている人のことです。
ただし、事前協議が必要な場合があるので、念のため市区町村役場に相談するのがおすすめです。
2.立地基準をクリアした土地の上に建てる
都市計画法第34条11号に定められた立地基準を満たしている土地の場合、建築を認められるケースが多いです。都市計画法第34条11号の内容を簡単にまとめると、市街化区域との境界付近にある場所ならば、建築を認められる可能性があります。
立地条件の詳細は、市区町村役場や不動産会社に確認してみましょう。
3.宅地利用が認められている土地の上に建てる
宅地利用が認められている場所でも建物を建てられるケースがあります。ただし、以下のような建物に限定されています。
- 店舗と一体になっている「住宅兼用店舗」
- 農業の本家から分家した「分家住宅」
- すでに建物が建っている場所での建て替え
こうしたケースでは、市街化調整区域での開発許可は必要ありませんが、建築許可を受けなければならないことを認識しておきましょう。
4.開発許可を取得済みの土地の上に建てる
市街化調整区域であっても、以前ディベロッパーが開発許可を取得した分譲住宅地などであれば、個人が家を建てることは可能です。後から購入しても、開発許可を得られているため問題ありません。さらに大規模開発された分譲住宅地は、市街化区域の住宅地の見た目と大きな差はありません。
ただし、低層の戸建て住宅しか建てられないなどの条件があるため、注意が必要です。
市街化調整区域に建築をするメリットとは?
市街化調整区域に建物を建てるメリットは、以下の通りです。
- 土地が安い
- 固定資産税が安く都市計画税がかからない
- 騒音が少なく静かに暮らせる
各メリットについて把握し、建物を建築するのか判断しましょう。
土地が安い
市街化調整区域に建築をするメリットは、土地の価格が低いことです。土地が安い理由は、上記で紹介してきた通り、建設や建て替えにさまざまな条件が必要であったり、都心部から離れた場所にあったりするためです。土地価格は、郊外よりも都市部の方が高い傾向にあります。
市街化調整区域の土地価格は、市街化区域の70~80%程度に抑えられている可能性があります。「できるだけ広い土地に住みたい」「可能な限り建物にお金をかけたい」という場合に、市街化調整区域はおすすめです。
固定資産税が安く都市計画税がかからない
一般的な土地よりも固定資産税が低く、都市計画税もないことは、市街化調整区域に建物を建てるメリットです。固定資産税は所有している土地・建物の評価額に対して課せられますが、市街化調整区域は評価額が低いため、固定資産税を抑えられます。
また、市街化区域内にある不動産のみが対象となっている都市計画税もかかりません。できるだけ税金を抑えたい場合も市街化調整区域に建物を建てることを検討しましょう。
騒音が少なく静かに暮らせる
静かな環境で暮らせることも、市街化調整区域に建物を建てるメリットです。市街化調整区域は、建物の建築に許可が必要であり、ビルや商業施設などが建つことはほとんどありません。
また、交通量も多くなく、道路が増える見込みもあまりないため、自然の中で静かに暮らせるでしょう。隣家があったとしても距離が離れている傾向にあり、近隣住民とのトラブルが起こりにくいメリットもあります。
市街化調整区域に建築をするデメリットとは?
市街化調整区域に建築をするデメリットは、以下の通りです。
- 建築や建て替えに大きな制限がある
- インフラが整っていない場合もある
- 生活に必要な施設が近くにない
- 将来的に売却するのが難しい
- 住宅ローン審査が通りにくい
ここでは、各デメリットについて詳しく見ていきましょう。
建築や建て替えに大きな制限がある
市街化調整区域での建築や建て替えにはさまざまな制限があり、スムーズに家を建てられないデメリットがあります。新築の建設や中古住宅の建て替え、リノベーションを行うこともハードルが高いと認識しておきましょう。
一部例外はあるものの、さまざまな申請が必要になっており、手間がかかるデメリットもあります。所有している市街化調整区域の土地で建物を建てたい場合は、最寄りの不動産会社に相談してみましょう。
インフラが整っていない場合もある
インフラが整っていないケースが多いことも、市街化調整区域に建築をするデメリットです。インフラとは、電気やガス、水道のような生活を支える基盤のことです。
そのため、自分でガスや水道を通したり、電気を引いたりする必要があり、インフラの整備費用がかかってしまうでしょう。すべてのインフラを自力で整えるには、それなりの費用がかかってしまうため注意が必要です。
生活に必要な施設が近くにない
商業施設や娯楽施設などが近くになく、特に都市生活に慣れている場合、日常生活には不便であることもデメリットです。基本的に市街化調整区域は、農業などを行う場所になるため、都市部にあるような施設は付近にほとんどありません。
コンビニやスーパーだけではなく、駅や学校、病院なども遠方にある可能性が高いです。そのため、居住用の住宅を建てる場合は、車の所有が必須となるでしょう。
将来的に売却するのが難しい
「将来的に市街化調整区域を売りたい」と考えても、なかなか売却できないデメリットもあります。売却不可というわけではありませんが、さまざまな制限がつくため、一般的な土地よりも売却のハードルが高い傾向にあります。
また、売却しづらいからこそ、不動産会社側もあまり仲介を引き受けたがらないでしょう。「どうしても売りたい」という場合は、市街化調整区域の売買に長けている不動産会社に相談することをおすすめします。
不動産会社を探す際は、一括査定サイトを利用しましょう。一括査定サイトは、複数の不動産会社に査定依頼でき、手間や時間をかけずに不動産会社を比較できるサービスです。
一括査定サイトの詳細は、以下の記事で解説しています。
住宅ローン審査が通りにくい
住宅ローンの審査を通過できない可能性があることも、市街化調整区域に建築をするデメリットです。住宅ローンは、土地と建物を担保にして融資するものですが、市街化調整区域の土地の場合、そうではない土地よりも価値が低く売却が難しいため、住宅ローン審査に通りにくくなってしまいます。
多くの住宅ローン商品には、「建築場所が市街化調整地域ではないこと」という但し書きが加えられており、市街化調整区域を審査の対象外にしている金融機関もあるため注意が必要です。住宅ローンを申請したい場合は、事前に審査対象になっているのか確認しましょう。
市街化調整区域に建物を建てるには?
市街化調整区域に建物を建築する場合は、自治体に相談してから申請しましょう。ここでは、申請の流れや必要な書類について紹介します。
まずは自治体へ相談を
市街化調整区域に建物を建てるときは、最初に土地がある市区町村役場に相談することからスタートです。申請方法や申請に必要なものは、自治体やケースによって微妙に異なることもありますが、流れは以下の通りです。
- 市区町村役場へ相談
- 事前協議
- 都市計画法34条に該当する建築物であることの証明
- 開発審査会が開かれる
- 都市計画法43条の許可が下りる
- 建築確認申請
具体的な計画が定まっていない場合も、市区町村役場が相談に乗ってくれるため安心です。また農地の場合、事前に宅地に転用する必要があるため、注意が必要です。
申請に必要な書類一覧
市街化調整区域で建築許可を得るためには、以下の種類が必要です。
- 住民票の写し
- 建築理由書
- 確約書
- 登記事項証明書
- 建築行為施行同意書
- 他の法令による許可書や同意書
- 設計図書
- 公図の写し
また、事前相談や協議の際に必要だった書類も用意しておきましょう。申請手続きなどに関しては、建築許可申請に詳しい行政書士に依頼することがおすすめです。権利関係の書類の作成を行ってくれる行政書士へ依頼すれば、用意すべき書類の不足などを防げ、スムーズに申請を進められます。
まとめ
都市化を積極的に行わない市街化調整区域では、都市化を進めている市街化区域とは異なり、商業施設や住宅の建設が原則認められていません。
しかし、都市計画法第34条に適合する建築・開発と認められ、自治体の許可を得られれば、建物を建築できる可能性があります。また、農林漁業を営む者の居住用建築物や宅地利用が認められている土地、開発許可を取得済みの土地ならば建築可能です。建物を建てなくても、駐車場経営などの土地活用ならできます。
市街化調整区域は、土地が安く、静かな環境で暮らせるメリットもある反面、インフラが整っていなかったり、生活利便施設がなかったりするデメリットがあります。市街化調整区域に建物を建てる申請手続きも、簡単なものではありません。本記事で紹介した裏ワザが利用できそうであれば、まずは土地がある市区町村役場に相談してみてください。
市街化調整区域のような農地の活用方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
※「マイナビニュース土地活用・不動産投資」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.fsa.go.jp/news/30/20190328_summary.PDF
・https://www.fsa.go.jp/news/r4/kokyakuhoni/20230120/kpi_toushin_230120.pdf
・https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/overview/minpaku/law1.html
・https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001411696.pdf
・https://www.fsa.go.jp/
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