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大成建設の田辺氏が語る、「今の建設テックに足りない大切なこと」

[2021/02/22 09:00]周藤瞳美 ブックマーク ブックマーク

“既存の最新技術”のみを採用せよ!

こうした背景の下、今の建設テックに足りない大切なこととして田辺氏がまず挙げるのは「”既存の最新技術”のみを採用する」という点だ。ただし、「我々は自分が知らない技術を全て最新技術だと認識してしまっている。使ったことのない技術が全て最新というわけではないということに注意すべき」と忠告する。

田辺氏によると、最新技術にも「世界のIT業界がチャレンジしている最新技術」と「世界のシステムエンジニアにとって実用品として認識されている最新技術」があり、後者はさらに、「エンジニアのコミュニティが大きく常に改善されており、しばらくは衰退する兆候が見当たらない技術」と「少し前には多くのエンジニアが採用していたが、何らかの理由で衰退していく要因の存在が顕在化している技術」の2つに分けられるという。そして、田辺氏が採用すべきだとする”既存の最新技術”は「エンジニアコミュニティが大きく常に改善されており、しばらくは衰退する兆候が見当たらない技術」のことを指す。

「仕事のやり方を変えること自体にリスクがあるので、そこに確立されていない最新技術を導入しようとしてもうまくいくはずがありません。しっかりと見極めて、”既存の最新技術”のみを採用するという縛りが今の建設業界には必要です」(田辺氏)

"既存の最新技術"とは

“既存の最新技術”とは

業務をディスラプションせよ!

もう1つ今の建設テックに足りない大切なこととして田辺氏が挙げるのが「業務のディスラプション」だ。

いわゆる「デジタルディスラプション」は、テクノロジーによって産業を根底から揺るがし崩壊させてしまうような革新的なイノベーションのことを指すが、田辺氏が言う業務のディスラプションとは「人手で一生懸命やっていたような業務を無くしてしまうような変化を起こすこと」である。そして、それを実現するには、これまでとはまったく異なる発想を持つ必要があるという。必ずしも、やりたいことを直接的にやればよいわけではないということに注意が必要だ。

田辺氏はAppleの「AirPods」を例に挙げ、次のように説明する。

「日本の家電メーカーは、人々がイヤホン型のデバイスを用いてハンズフリーで電話をするような未来は考えていたはず。しかし、がんばってもそれを実現することはできませんでした。一方、AirPodsは、セルラー機能+モバイル端末+通話アプリ+Bluetooth+イヤホンという技術の組み合わせで、”イヤホン型の電話機”が実現されたものです。

AppleはiPhoneなどのスマートデバイスを開発する際に、初めからAirPodsを作ろうとしていたかと言えばそうではなく、全く違うことを実現しようとして開発された各要素技術を組み合わせただけです。こうして、直接的なアプローチでの挑戦は、全く違うことを考えたディスラプションに駆逐されてしまうのです」(田辺氏)

だからこそ、意図的に業務のディスラプションを実現することは難しい。1990年代にはすでに、業務の自動化を目指す「OA」という言葉が存在していた。建設業界で言えば、紙からPCへの業務転換が具体的な変化だろう。しかし、OA化は人間が行っていたことを単純にコンピュータが代替するという発想であり、道具を変えること自体が目的だった。インターネットやPCが急激に普及した時代の生産性が日本だけ上がらなかったことから、道具を変えるだけでは不十分なことは明白だという。

現在やるべきデジタル化はそうではなく、「人間とは異なる方法で作業をコンピュータに任せることで効果を最大化すること」だとする田辺氏。「業務フローを変えずにデジタル化をしても改善の伸び代は少ない。日本は、最新技術を使ったOA化をしようとして失敗している状態」と、業務フロー自体に変化を求める必要があることを指摘する。

小さく始めて大きく育てる

では、具体的にはどのようにして業務のディスラプションを進めていけばよいだろうか。田辺氏は、「主要な業務ではなく、周辺で小さく成功させ『やってみせる』」「小さな成功を大きく育てるシナリオを描く」という2点しか、日本企業における本当の成功パターンはないと断言する。最終的に大きく育つような取り組みを、まずは周辺業務で小さく成功させる、ということだ。

「業界全体のDXは難しいものです。現状の建設テックは、工事現場内のテック化に囚われすぎています。現場での施工管理そのものではなく、まずは現場事務所や会社でのデスクワークを中心に考え、”既存の最新技術”できっちり結果を出すというところから始めるべきです」(田辺氏)

DXの実現を目指して最新技術にチャレンジしているつもりでも、身の周りの業務はただOA化しただけの状態になっていないだろうか。田辺氏の指摘を念頭に、真のDX実現を目指してほしい。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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