DXに取り組むなら押さえるべき「7つのキーテクノロジー」- IT Trend 2019

[2019/10/28 08:00]小池 晃臣 ブックマーク ブックマーク

AI/ロボティクス:向上する精度 - 人手不足の解決策として寄せられる期待

キーテクノロジーの2つ目、AIに関してアインシュタイン氏は3つの事例を紹介した。

1つ目に挙げられた英国のAIスタートアップ企業Tractableの事例は、自動車事故が起きた際にAIが事故車両の画像を分析し、ダメージを査定するというもの。現場で人が撮影しなくとも自動的に撮影して査定を完了することができる。2つ目は英国のSurrey大学の事例で、心拍だけでAIが心不全を検知するというもの。検知の成功率100%だと言うから驚異的だ。そして3つ目は、米国マクドナルドの事例である。同社はAIの音声認識企業を買収している。

アインシュタイン氏は「(将来は)ドライブスルーでの注文をAIが理解するだけでなく、ロボットがハンバーガーをつくるようになるのでは」と述べ、3つ目のキーテクノロジーであるロボティクスへと話を進めた。

人手不足の問題を抱える日本において、ロボティクスは特に注目度が高い分野だ。なかでもセキュリティ、建設、物流といった特に深刻な状況に置かれている業界では、先述したセコムの事例のように人手不足の解決策としてロボティクスへの関心が高まっているという。

xRサービス:さまざまな活用の可能性

AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)といったxRテクノロジーが4つ目のキーテクノロジーとして挙げられた。

「スマートフォンはいずれこの世界から姿を消し、スマートグラスになるかもしれません。これからさまざまな種類のサービスがxRのテクノロジーを活用するようになっていくでしょう」(アインシュタイン氏)

同氏は、xRテクノロジーについてそれぞれ次のように説明した。

  • AR:DHLではGoogle Glassを使って作業員が荷物をピックアップしている。これにより紙を使わずに済むだけでなく、両手を自由に使えるため、作業効率の向上につながっている。
  • VR:米国で最もVRが活用されているのが、医療分野である。例えば、歯医者で患者がヘッドセットを着用して楽しみながら治療を受けたりといった具合だ。
  • MR:MRは軍事分野での活用が進んでおり、米国陸軍は10億ドルでマイクロソフトのホロレンズを購入している。

バイオメトリクス(生体認証):いち早く活用に着手するのは空港、医療業界

成田空港では、来年から空港の運用にバイオメトリクス認証を使う予定だという。具体的には、顔認証によって空港のチェックインから航空機の搭乗までのプロセスを全て完了できるようにする計画だ。

「来年の東京オリンピック/パラリンピックに向けて、訪日外国人の数は4000万人にも達すると予想されています。その対応に有効な手段の1つとなるものです」(アインシュタイン氏)

併せてアインシュタイン氏は、スペインのCaixa銀行や米国のヘルスケア企業HDNAの事例を紹介。前者は顔認証によるATMでの現金の引き出しを可能としており、後者はスマートフォン上でのバイオメトリクスによって遺伝子的な希少疾患を発見できるようにしているという。

エッジコンピューティング:高速処理の実現

より多くのデータをセンサーから取得してデバイス側で処理することで、さらに高速化を図るというのがエッジコンピューティングの趣旨の1つだ。

「例えば、米国では多くの家庭でドアベルにカメラを設置していますが、そこにエッジコンピューティングのセンサーを加えることで、木が揺れたり犬が通ったりしただけではカメラは作動せず、人間のみを撮影するようにといったことが可能となります」(アインシュタイン氏)

デジタルツイン:製造業/航空産業を中心にした広がり

工場や製品などに関わる物理世界の出来事を、そのままデジタル上にリアルタイムに再現するデジタルツインの試みは、製造業や航空産業を中心に急速に広がりつつある。なかにはシンガポール政府のように、国全体のシミュレーションをしている壮大な取り組みもある。そこでは、人の移動などをリアルタイムにトラッキングして、都市計画や緊急避難に役立てようとしているのである。

アインシュタイン氏は「10年後には、誰もがが自分のデジタルツインを持つようになるだろう。そうなれば、例えば、医師がDNA情報から処置に対する反応を判断したりといったことも可能となるはずだ」と見解を示した。

この先DXはどう各業界を変えていくのか

アインシュタイン氏は一連のトレンドを踏まえた上で、主要な業界や分野ごとにDXの活用事例を紹介していった。

  • 農業:アイルランドのある企業では、バイオメトリクスで乳牛のモニタリングを行っている。乳牛の振る舞いを監視し、病気や食べすぎ、もしくは逆に食べていないなどの異常を自動的に検出する仕組みだ。また米国のある企業では、画面上で納屋に戻したい牛を選択し、その牛に音楽を聴かせることで移動を促すといった”バーチャルフェンス”を実現している。

  • スマートシティ:この分野では、韓国が先行している。アインシュタイン氏は「いずれ都市の地図を5Gでリアルテイムに表示することも可能になるだろう。Googleのストリートビューがリアルタイムで見られるようなものだ」と語った。

  • 保険:最も成功したIoTの事例としてアインシュタイン氏は、米国の保険会社のユースケースを紹介。同社は1カ月の運転行動を記録してそのデータを分析することで保険内容を見直すようにしたところ、1年間に30%もの保険料の削減に成功しているという。

  • 交通輸送:今ホットなのが、「MaaS(Mobility as a Service)」だ。これは月額のサブスクリプションでどんな交通輸送サービスでも使えるというサービスであり、1つのプラットフォーム上で1つの価格でさまざまな移動手段が提供される。過疎化や人手不足により公共交通サービスの維持が難しくなっている日本の自治体も注目している分野だ。

いずれの業界/分野においても、海外の事例が目立ち、日本は遅れをとっているように見える。だが、それは必ずしも悪いことばかりではない。

アインシュタイン氏は、「既に海外ではDX活用の優れたユースケースが数多く存在している。日本企業はそうしたベストプラクティスを学ぶことで、さまざまなメリットが得られるはずだ」と語り、講演を締めくくった。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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