デジタル変革を阻むのは技術的な問題ではなく「人の意識」- IT Trend 2019

[2019/10/18 08:00]小池 晃臣 ブックマーク ブックマーク

ソリューション

牽引者に求められるマインドセット

では、そもそもマインドセットとは何か。舘野氏は次のように説く。

「スキルや知識、態度といった目に見える顕在化されたものではなく、それらを支える、思考様式や動機、志/使命感、価値観などの目に見えない潜在化されているものがマインドセットです」

そして新時代のマインドセットをかたちづくる3つの要素となるのが、「知的資本」と「心理的資本」、「社会的資本」の3つである。知的資本とは、物事を理解する上で必要な学びの姿勢であり、心理的資本は、異なる文化や価値観、環境の変化に対応するための寛容性の保持、そして社会的資本は、組織やステークホルダーに対する影響力の行使を指す。

デジタル時代の牽引者に求められるマインドセットは、エグゼクティブ、リーダー、オペレーションスタッフでそれぞれに異なる。

例えば、エグゼクティブに求められるマインドセットの1つには「社会課題へのコミットメント」が挙げられる。

「デジタルテクノロジーを使って何をしたいかを考えるときに、コミットメントするビジョンがない企業は難しいのではないでしょうか。ビジネスを進めていく上でも重要なキーワードとなるはずです」(舘野氏)

また「価値観と目標の開示」もエグゼクティブに強く求められるマインドセットとなる。既に自分たちの行動指針や価値観等を社員と共有する企業も出てきており、リッツ・カールトンやジョンソン・エンド・ジョンソン、楽天グループなどが先進的なケースとして挙げられるだろう。

「何を大事にして何のためにデータを使うのか、しっかり開示すれば社員が顧客の不利益になるような行動をとってしまうのを抑えられるでしょう」(舘野氏)

そして「風通しの良い組織文化の情勢」も大切だ。デジタル化によってさまざまな情報が集まりやすくなり、従業員も働く場所の選択肢が増えた。その結果、通常では秘匿されることの多い情報を従業員や顧客に開示することによって、信頼を高めている企業も登場し始めている。

例えば、米国のクラウドサービス企業Bufferでは、世界中の社員がリモートワークで業務に参加しているため、透明性を重要する。そこで、タイムゾーンごとに全社員のステータスを一覧化し、さらに全社員の給与リストや格式保有率、月間売上などのデータを社内で共有しているという。

「ここまではいかなくとも、自分たちの組織の情報を積極的に外に出していく姿勢を示すことで、信頼を高めるといったマインドセットはこれから必要になっていくはずだ」と舘野氏は語る。

次に、リーダーに求められるマインドセットとしては、顕在化していない課題を見つけ出して皆に提示する「ビジネス課題の発見」や、「デジタルリテラシーの醸成」などが挙げられる。

「デジタル化をリードしようとする際に、ビジネス部門がデジタル世界特有のリテラシーを踏まえていないことが課題となるケースが少なくありません。特に、これからデジタルビジネスで成長しようとしているときには、これまでのベンダーとユーザーという関係から変わってくることになります。なぜなら、デジタルサービスを提供する以上、ある意味でベンダー的な立場にもなるからです。そのため、ユーザー企業のデジタルリテラシーが大事になってきます。ここで、役割分担についてぜひ見直しをしていただきたい」(舘野氏)

最後のオペレーションスタッフに必要なマインドセットの1つが「情報発信の重要性」だ。

「デジタルな世界で情報発信が重要であるのは当たり前と思われるかもしれないが、情報発信しないということは、存在しないこととほぼ同義であると言えるぐらい激しいものだと自覚すべきでしょう。欧米では『Working Out Loud(大声で働くこと)』を推奨する企業すら存在しているほどです。まだまだ作成途中の成果物であっても開示してフィードバックを得る、行き詰まったらすぐに他者に相談するといったように、作業の成果だけでなくプロセスもまた重視し、共有することが今後は必要になってくるでしょう」(舘野氏)

デジタル時代に求められる人材像

では、デジタル時代に求められる人材像とはどのようなものだろうか。舘野氏は、エグゼクティブ、リーダー、スタッフに求められる人材像が、デジタル時代に入り、それぞれ以下のように変化しているとした。

  • エグゼクティブ:規律型の経営から自ら参画型/包摂型の経営へ
  • リーダー:影響力と説得力に基づくリーダーシップ
  • スタッフ:他人任せのテクノロジー活用から自らの体感に基づくテクノロジー活用へ

こうした人材を目指してマインドチェンジをするには、以下の3つが必要となる。

  1. 組織の垣根を越えた対話
  2. デジタル資産の民主化
  3. 現場レベルの創意工夫


舘野氏は、「2と3については特にIT部門にお願いしたいところ」だと語り、「全てのビジネスパーソンには、デジタル変革を”我が事”と捉えて積極的に参画していただきたい」として講演を締めくくった。

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