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AIが発展した未来、社会はどう変わる? -『Detroit: Become Human』のクリエイターが語る

[2019/10/02 08:00]山田井ユウキ ブックマーク ブックマーク

AIは自我を持てるのか? 寄せられる期待

『Detroit: Become Human』が描く2038年の世界では、失業問題だけでなく、アンドロイドが一般化したことによって生まれたさまざまな社会問題が描かれている。社会は分断され、格差は広がる一方。それらはもしかすると、現実の社会の延長線上にある未来かもしれない。そうした社会を見据えて、我々は社会をデザインしていく必要がある。

「AIに対する何らかの倫理基準は必要かもしれない」と語るのは大澤氏だ。『Detroit: Become Human』では、バスに乗る際でも人とアンドロイドでは違うスペースが割り当てられている。アンドロイドは狭いスペースに押し込められ、人と同じように乗ることは許されていない。この場面は、かつての差別と隔離の歴史を想起させると大澤氏は語る。

他方、希望を見い出す意見も出た。三宅氏はAIについて「これまでのテクノロジーと違うのは自律性と知能があること」だと述べ、「AIは人間同士の関係性を変えられる可能性がある」と見解を示す。例えば、喧嘩をしている人の間にAIが割って入り仲裁するなど、人間同士の摩擦を解決できる可能性を秘めているという。「人とAIが共生できる社会をデザインできれば、人だけが社会を動かすという重荷から解放される」(三宅氏)のだ。

さらに三宅氏は、自らもAIをつくる立場として「いつかAIが人の手から離れ、新たな生命体として自立してほしいという思いがある」と述べ、その理由として「人間は人間以外の対等な知能を持つ存在を無意識に望んでいる」と説明。「それがAIの開発をドライブしている理由の1つ」だと語った。

では三宅氏が言うように、「AIが新たな生命体として自立する」――すなわち、自我を持つことはあるのだろうか。この問いに対してのアンケート回答では、会場は約6割、世界のユーザーは約7割が肯定的に考えているという結果が出た。

ただ、やはりAIが自我を持つのはそう簡単なことではない。そもそも”人間らしさ”とは何だろうか。以前はクリエイティブは人の特権だと思われていたが、実はディープラーニングを用いることでAIもクリエイティブな活動が可能だということがわかっている。『Detroit: Become Human』でもそれを示唆する場面が描かれる。

ケイジ氏は「人間らしさで重要なのは『共感』と『死の恐怖を覚えるか』」だと述べ、AIがその感情を抱けたなら、それは新しい知性と言えるのではと見解を示した。

パネルディスカッション前には、パネラーたちが日本科学未来館に常設展示されるアンドロイド「オルタ」(写真左)や人間そっくりの見た目を持つ「オトナロイド」(写真右)などを見学

他方、三宅氏は疑似生命とも言えるゲーム中のAIキャラクターを開発している。ゲームでのキャラクターは「生まれたばかりは空っぽで、世界に執着を持たない悟りきった状態」だと言い、そこに偏見や矛盾、欲求を与えていくことで人間らしくなるのだという。「非対称であること、混沌としていることが人間らしさ」(三宅氏)なのだ。

ディープラーニングでAIに混沌を与えることは以前よりも難しくなくなったが、それでもAIが人たり得ないのは「体験を持たないから」ではないかと三宅氏は推測する。「情報収集と体験は別物。AIが世界を”体験”できるようになれば、人間らしさを持てるようになるのかもしれません」(三宅氏)

ヒューマノイドロボット「ASIMO」がボールを蹴る姿も実演された

4人で記念撮影!

究極的には「人間の側がどう受け取るか」だと語るのは大澤氏だ。

「AIが自我を持てるかというテーマは昔からSFで語られているもの。そもそも我々が自我だと思っているものすら、プログラムされている可能性がある。重要なのは中身がAIかどうかではなく、我々がそれをどう受け取るかではないでしょうか」(大澤氏)

本イベントがそうであるように、『Detroit: Become Human』は現実に起こり得るかもしれない”少し先”の未来を提示し、さまざまな議論を呼び起こした。それこそがSFの1つの価値だと大澤氏は語る。

「SFはよく未来予想図だと言われますが、そうではなく、可能性として存在するいくつかの未来のうちの1つ。そこから未来を見つけていく手助けになればいい。いわば、人類のコンサルとしてSFがあるのでは」(大澤氏)

* * *

イベント終了後には関係者による交流会が開催され、わずかな時間だがケイジ氏に話を聞くことができた。

今回のトークイベントについて、ケイジ氏は「とても興味深いものだった」とし、自身の作品が議論の源になっていることについて喜びを語った。

『Detroit: Become Human』の優れたシナリオが示す通り、世界最高のゲーム作家の1人であるケイジ氏。作品作りにおいてはマーケティングや売上ではなく、自分たちの情熱や直感を大事にしており、人の感情を呼び起こすことを目指す。

自身のクリエイティブに関しては、ゲーム以外にも映画や文学、演劇や絵画などさまざまなジャンルから影響を受けたものであり、最近では自分自身の人生や家族、チームとの関係からインスピレーションを受けることが多くなっているという。

2019年秋には、『Detroit: Become Human』のPC版(税込:3,990円)がEpic Gamesストアで発売されることが決定している。「より多くの人に遊んでほしいから」と思いを述べたケイジ氏。未プレイであれば、この機会にぜひ体験してほしい。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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