ドローン×深層学習で破損をチェック - 除染事業でも活用されるAI

[2019/02/08 08:00]星原康一 ブックマーク ブックマーク

ソリューション

ドローン測量のエアロセンスが支援

現在の運用では、セルの撮影からシートの状態確認までを主にエアロセンスが行っている。

同社はまず現場へ赴き、ドローンで上空約10mからセルを撮影する。通常はラップ率(重複度)を80%に設定。1セルあたり100~500枚を撮影することになる。

ドローンによる撮影の様子。PC上で設定したルート・速度で飛行して撮影する

撮影した画像をGCP(Google Cloud Platform)上にアップロードし、専用ソフトで1枚の大きな全景画像に合成。その画像を使ってシートに穴がないかを確認していく。

GCPに撮影画像をアップロード

測位情報を基に画像が並べられ合成が始まる

合成が終わるとこのような画像に。オレンジ色のフラッグは撮影場所を示している

運用開始当初は、オペレーターが全景画像を拡大し、少しずつマウスで動かしながら、目視で全範囲をチェックしていた。「シートが無地のため、同じ箇所に戻ってしまうケースも少なくなく、画像1枚あたり2時間近くかかっていた」(エアロセンス 技術開発部 額田 将範氏)という。オペレーターと責任者によるダブルチェック体制をとっており、1セルの確認に合計4時間を要していた。

JVでは、160ある全セルを3カ月ごとに点検している。年間480もの点検があり、効率化が避けられない状況だった。

AIで「破損の疑い」を検出

そこで取り入れたのが、画像認識AIによる破損個所の特定だ。

全景画像から破損の疑いがある場所を抽出するAIモデルを作成。オペレーターは抽出された場所を順番に確認する業務フローに切り替えた。

全景画像をAIが判定した結果。赤い四角で疑わしい場所が示される

モデルの学習にあたっては、「疑わしきをすべて”黒”と判定する」(エアロセンス クラウドサービス部 シニアソフトウェアアーキテクト 菱沼 倫彦氏)方針を決めた。間違いも含めて多めに抽出し、最終確認を人間の目に委ねる運用を選んだ。

学習データは、過去に目検してきた画像を使用。破損のある「正解データ」は、数に限りがあるため、回転させたり、明るさを変えたりして増やしながら約1000枚を用意した。一方、破損のない不正解データは大量にあるため、約1万枚を使っている。

また、合成した2Dの全景画像には、セル周辺の地表面も写っており、そちらをAIが異常個所と判定してしまう。そこで、撮影画像にドローンの測量データを組み合わせてセルの3D画像を生成。その3D画像からセルと地表面を識別し、セル上だけをAIが破損判定するよう工夫している。

それまで全景画像を隅々まで注意深く調べていた確認作業は、AIが指摘する場所だけを見れば済むようになり、大幅に効率化。60%もの時間が削減された。

オペレーターはAIが指摘する場所を順番に確認。穴かどうかを判定して、コメントを入れる

3年弱で2000以上の破損を確認

グーグルによれば、(GCPやTensorFlowはだれでも利用できるため、すべての事例を把握しているわけではないものの)今回の活用法は過去に例のないチャレンジングなものだという。穴が空くという問題に対して、ドローンやAIなどの先進技術を駆使して次々と解決していく姿勢は、多くの企業が見習うべきだろう。

2016年5月の運用開始以降、仮置場で見つかった破損は2000以上。今やエアロセンスの技術は、除染除去土壌の管理になくてはならい存在だ。

数年後、中間貯蔵施設への移送が完了するまで、責任を持って続けられる見込みである。

南相馬市仮置場維持管理 JV 副所長 鶴岡 孝章氏(左)と、エアロセンス 技術開発部 額田 将範氏(右)

今後について、エアロセンスでは、「経年劣化などにより破損が起きるものはたくさんある。公共インフラを中心に応用していきたい」(菱沼氏)と語った。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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