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日立製作所が取り組む働き方改革 - 実現を目指す「3つの姿」

[2019/01/11 08:00]齋藤公二 ブックマーク ブックマーク

現場に権限を与える意義

次に、「生産性の向上」については、生産性を向上させる自律的組織、チーム作りをポイントとして挙げた。これは、働く環境の整備を進めた日立が身をもって経験したことでもあるという。

「いつでも/どこでもという柔軟な働き方が可能になることで、さまざまなメリットが生まれます。例えば、お客さまへの訪問時間の増大、思いついたら即処理するために業務のスピードがアップすること、在宅勤務が実現し、自然災害発生時の業務継続が可能なことなどです。一方、期待しない効果も得られました。24時間働くモーレツ仕事人が発生したことや、上司から時間問わずメールで大量の依頼が届くこと、会議頻度が増え、見えない空転時間が増大したことなどです」(荒井氏)

そこで取り組んだのが、RPAやAIなどを使って、決められたルールに基づいた人の判断を伴う作業や、「プロセスの変更が多い」といった理由でシステム化しにくかった業務を自動化することだ。

ただし、こうした自動化はトップダウンで進めればよいわけではないという。荒井氏によると「どの業務にRPAを適用するのか、創造的業務の生産性向上はどうするのか。現場に権限を与え、自発的プロセス改善を促すことがきわめて重要になる」という。

実際、Googleが自社の労働改革プロジェクト「プロジェクト・アリストテレス」で得た知見の1つに「心理的安全性とチームの生産性には相関がある」というものがある。これは「社員一人一人が会社で本来の自分をさらけ出すことができること、そして、それを受け入れるための心理的安全性つまり他者への心遣いや共感、理解力を醸成することが、間接的にチームの生産性を高めることにつながる」というものだ。

日立では、こうした知見を現場に生かすため、行動と成果の相関関係を膨大なデータからAIで解析し、「その社員をどのような部署に配置すれば、フィット感を感じ、モチベーションを高められるか」を導き出したという。実際にこれは「日立人財データ分析ソリューション」のラインアップの1つ「配置配属フィット感向上ソリューション」としてサービス提供もされている。

モチベーションの可視化

「生産性の向上で重要なのは、安心して働くことのできる環境を整え、ジョブマッチングやチームの満足度を把握し、チームの最適化を進めることです。また、仕事をどう進め、時間をどう使うかを、本人が柔軟に決められる状態を作ることが欠かせません。その上で、ITツールを使って社員に気付きを与え、社員が自主的に労働効率を上げる手助けをしていきます」(荒井氏)

鍵は「民間によるセーフティネット」

3つ目の「安心して暮らしていける社会づくり」については、企業内に留まらず、社会全体で働き方改革を進めることがテーマだ。

荒井氏は、北海道大学の長谷川英祐氏の著書『働かないアリに意義がある』(発行:メディアファクトリー)に触れながら、「組織の存続には、いざというときまで働かないアリを余力として残しておくことが必要です。これは、生産性を上げ続けることは組織の存続につながらないことを示唆しています。アリは本能でセーフティネットのある社会を形成したのではないでしょうか」と語る。

セーフティネットは、江戸時代の商人も作り出していたという。江戸経済が進展したことで所得格差が広がり、飢饉が起こると打ちこわしが発生していた。そこで江戸の商人たちは、米を備蓄し、貧しい人に配給する仕組みを構築。この仕組みがセーフティネットとなり結果的に打ちこわしの発生は押さえられ、江戸経済は持ち直したのだという。

「民間によるセーフティネットは、持続的資本主義社会のキーだと考えます。安心して暮らしていける社会とは、多様な働き方を実現し、いつでも自由に仕事が選べる社会を実現して、それが最終的にはセーフティネットが充実した”働かなくても暮らしていける社会”の実現につながることです。ベーシックインカムなどの議論がありますが、国がそうした制度をただ作るだけでは十分ではありません。社会を持続させるために、民間参入モデルを作っていくことが非常に重要です」(荒井氏)

その一例として日立でも、サテライトオフィスを全国規模でネットワーク化する取り組みを行っている。従業員が地方に在住しながら首都圏の会社に勤めることで、都市一極集中の是正や地方活性化につなげる狙いがあるという。

荒井氏は「安心して暮らしていける社会づくりは、私のこれからのライフワークとして取り組んでいきたい」と抱負を語り、講演を締めくくった。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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