第4次産業革命の波到来! AI×IoTで考える未来の製造業

[2018/10/24 08:00]エースラッシュ ブックマーク ブックマーク

製造業が直面するAIの課題

続いて伊藤氏は、製造業の課題をAIで解決する際に直面する課題について解説した。

一般的に画像/音声認識/言語解析などの場合は、1つの案件で作成した学習済みモデルを、別の案件に再利用することができる。しかし、製造業で品質予測や故障検知などを行う場合、入出力の種類や数、モデル化対象が案件ごとに異なるため、学習モデルをそのまま再利用することは困難だ。つまり、製造業においてはノウハウのみを再利用するので、案件ごとにデータ準備から設計、学習が必要なことに加えて、必ずしも課題の解決に至るわけではないのである。

製造業では学習モデルをそのまま別の案件に再利用できない

また、AIを介した入出力の関係がブラックボックス化されているのも課題の1つだ。これはAI研究における「ブラックボックス問題」と呼ばれるもので、AIの思考をたどるのは極めて困難なため、運転改善の指針を得ることができないのである。

そしてもう1つ、ライフサイクルに関する課題も挙げられる。AIは「分析」のみを担っているが、製造業においては「データ収集/蓄積」「分析」「活用」「保守/運用(再学習/追加学習)」という一貫したライフサイクルが存在する。そのため、現場の知識やノウハウを考慮し、IoTとAIを結合したシステム化が求められるのである。

製造業の課題を解決するAI×IoT開発支援ツール「Node-AI」

こうした課題解決への取り組みとして、伊藤氏は現在開発しているAI×IoT開発支援ツール「Node-AI」を紹介した。

AI開発を行う際、Pythonなどのプログラミング言語を用いて1件ずつ開発していては、1つの案件に少なくとも数カ月間の開発期間がかかってしまう。特に時間がかかるのが事前のデータ処理だ。

「実作業の7~8割はデータクレンジングなどの前処理で、ここに多くの手間と時間がかかります。Node-AIでは、学習データに含まれる異常値の除外や欠損値の補完をツール上で行えるほか、学習用データとテスト用データの効果的な分離も可能です。また、ほかのデータと異なり時間単位の幅が存在する時系列データについても、膨大なデータを一部丸めたり、データを組み合わせたりといった変換ができます。

これにより、ニューラルネットワークの大本となる多層構造について最適な設定ができ、誤差の少ない学習が行えるのです。さらに、実際には現場からのフィードバックによって、ディープラーニングの構造や前処理の方式などを繰り返し変更することになりますが、Node-AIではこの試行錯誤の高速化が可能になります」(伊藤氏)

また、Node-AIは、ブラックボックス問題の解決にも効果を発揮する。

プラントなどでは、朝昼晩の時間帯で状況が変化するため、静的に相関関係を表すだけでは不十分だ。そこで刻々と変化する状況の相関関係をいかに可視化できるかが重要になる。そこでNode-AIを使うと、時系列的に変化する入出力について、関係性の可視化が行えるという。

ライフサイクルの課題解決については、横河電機とのコラボレーションが紹介された。これは、NTTコミュニケーションズが持つ機械学習や深層学習に関するノウハウと、横河電機が持つPID(Proportional-Integral-Differential)制御などのノウハウを組み合わせたもので、「デジタルツイン」として実際の工場のコピーを構築。これにより、将来的に要因分析や制御の最適化などが可能になるという。

AI活用の取り組み

そのほかにも、同社のAI活用に向けた取り組みがいくつか紹介された。

例えば、日本カーソリューションズとの協業では、ドライブレコーダーの映像とセンサーデータ(速度、加速度)に音声データを加え、NTTコミュニケーションズが開発したAI(マルチモーダル深層学習)が解析。それが交通事故なのか、事故の直前で止まった「ヒヤリハット」状態なのかを自動検知する機能の精度向上に成功し、運転手の安全意識向上や事故軽減対策への貢献を実現している。

マルチモーダル深層学習によるデータ解析

伊藤氏は「これは交通事故を見分ける例ですが、世の中の製造現場には同じように五感を使ったオペレーション体制が数多くあります。そこで、こうした技術を使って、より高精度なオペレーションを実現していきたいと考えています」と語る。

また、深層強化学習を用いたプラント制御の最適化についても紹介された。

これは、アルミ板の上に5カ所の熱源を置き、その裏側にバルブの開閉で作動する5カ所の水冷装置を設置して、アルミ中央部の温度を指定温度に制御するというもの。1カ所のコントロールだけならば従来のPID制御などでも行えたが、多入力/多出力の場合は困難だった。しかし、深層強化学習を用いたAIなら制御が可能になるという。

深層強化学習を用いたプラント最適制御

最後に伊藤氏は「私たちが目指す『デジタルツインが拓く未来の製造業』は、現場から多種多様なデータを収集、Node-AIで効率的に仮想の工場をモデル化し、そこから高精度な予測や制御、異常検知などを行っていくものです。この仮想工場を作るにはデータだけでなく、現場のノウハウを持つパートナー企業との協業が必要不可欠になります。今後もネットワークからAIまで時代をリードするサービスと技術によって、ビジネスの革新と新規ビジネスの創造を目指していきます」と語り、講演を締めくくった。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

もっと知りたい!こちらもオススメ

VR、AI、ホログラム - 新技術が創り出す映像コミュニケーションの新時代

VR、AI、ホログラム - 新技術が創り出す映像コミュニケーションの新時代

NTTコミュニケーションズは10月4日、5日の2日間、ザ・プリンス パークタワー東京において年次カンファレンス「NTT Communications Forum 2018」を開催した。本稿では、同カンファレンスで多数行われた講演のなかから、NTTコミュニケーションズ ICTコンサルティング本部 第六グループ 主査の田中雅教氏が登壇した「映像コミュニケーショ…

関連リンク

この記事に興味を持ったら"いいね!"を Click
Facebook で IT Search+ の人気記事をお届けします
注目の特集/連載
[解説動画] Googleアナリティクス分析&活用講座 - Webサイト改善の正しい考え方
[解説動画] 個人の業務効率化術 - 短時間集中はこうして作る
ミッションステートメント
教えてカナコさん! これならわかるAI入門
AWSではじめる機械学習 ~サービスを知り、実装を学ぶ~
対話システムをつくろう! Python超入門
Kubernetes入門
SAFeでつくる「DXに強い組織」~企業の課題を解決する13のアプローチ~
PowerShell Core入門
AWSで作るマイクロサービス
マイナビニュース スペシャルセミナー 講演レポート/当日講演資料 まとめ
セキュリティアワード特設ページ

一覧はこちら

今注目のIT用語の意味を事典でチェック!

一覧はこちら

会員登録(無料)

ページの先頭に戻る