最初は小さなネットワークから! 農家が挑むディープラーニング活用

[2018/04/04 08:00]小池 晃臣 ブックマーク ブックマーク

現場での運用で見えてきた「新たな課題」

1号機、2号機での反省点を踏まえて、小池氏は3号機の開発に着手する。開発コンセプトも、”AIによる自動化”から”AIで人間の作業をサポート”へと、より現実的なものへと変更する。そうして完成したのが、テーブル型のきゅうり選別システムであった。

試作3号機の紹介動画


これは、テーブル上に置いたきゅうりの画像を撮影して、判断結果をきゅうりの下に表示するというものだ。テーブルの板には、PC用のディスプレイを用いている。開発費も、1号機、2号機同様に2万円程度で収まってしまった。

また、収穫時期によりきゅうりの太さの傾向が異なるので、判定のキャリブレーションの仕組みを作り、ニューラルネットワークへの入力を調整できるよう工夫。カメラで撮影した画像にゆがみをつけるキャリブレーション装置を作ったのである。

今回の教師データは画像36,000枚に及んだ。しかし学習結果は79.4%の認識率に留まる。小池氏は、その原因がカメラの台数を減らしたことにあると推測している。しかし、テーブルにきゅうりを乗せると画像に等級が表示される3号機は、「これなら使える」と現場での評判が良く、現在実作業で使い始められているという。その結果、従来と比べて1.4倍の選別作業のスピードアップにつながっているようだ。

これまでの実環境での運用について、小池氏はこう評価した。

「西日などを受けると精度は少し下がりますが、選別作業のサポートには十分な精度が出ていると思います。ただし、今のところ問題だと思っているのが、等級におけるB級品をA級品と判断してしまう確率がまだまだ高いことです。逆にA級品をN級品と判断する分にはさほど問題はないのですが、B級品をA級品として出荷してしまうとクレームにつながるので、正答率を100%に近くする必要があります。また、より多くのデータを集めれば確かに正答率は上がりますが、どこまでコストをかけるかの判断が難しいかなと感じています」

開発過程を通じてわかったのは、「勘と経験の世界なので、熟練農家から仕様を聞き出すのは難しい」ということだ。

「基準が複雑なため言葉でうまく説明できず、仕様書などには落とし込めないからです。だからこそ、現状から学んでいくディープラーニングは適しているように思えます」と小池氏は語る。

「ディープラーニングというのは、完璧じゃなくても役に立つ場面は多いのではないでしょうか。今までは、天才的な人がアルゴリズムを構築しなければなりませんでしたが、そうでなくてもある程度の精度を出せる可能性が大きいと考えています」と話す小池氏は、現在、地元の町工場でディープラーニングを教えているという。

「『自分たちでできる』というのがポイントで、皆、勉強意欲を燃やしてくれます。そこが面白いところで、今後もディープラーニングは専門家以外の手による活用が進んでいくのではないかと思っています」(小池氏)

農業におけるAIの活用事例や、今後新たに挑戦したい事柄について言及した小池氏は、最後にこう締めくくった。

「まずはAIによる自動化を推し進め、より品質や収量を上げるための時間を確保できるようにしたいと考えています。同時に、長年かけて築き上げた技術や信頼を次の世代に伝えながら、今後も農業のIT化に取り組んでいきたいと思います」

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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