労働時間をあと3時間減らすには? 働き方を変革するITの「使いどころ」

[2017/11/17 17:25]冨永裕子 ブックマーク ブックマーク

労働時間を所定内に収める「4つの施策」

続いて志賀氏は、知識労働者の就労時間を「メール:2時間」「会議・打合せ:2時間」「コア業務:2時間」「付帯業務:5時間」で構成した11時間モデルを提示。「就労時間11時間」と言えば、健康障害リスクが高まると言われる「過労死ライン」に近い。このモデルは、公式統計などを参考に志賀氏が独自に算出したものであり、あくまでも議論を具体化するためのものだという。

ここからは、講演で解説された「就労時間をあと3時間減らして8時間にする」ための具体的な4つの施策について、詳細を見ていきたい。

実現難易度の高いテレワークを成功させるには?

11時間の就労時間には含まれないものの、ワークスタイル変革の本丸は、自宅からオフィスへの往復に要する時間の削減である。ただしそれには、TV会議システムをはじめ、多くのITソリューションが必要になるだろう。しかも、就業規則を変えるとなると、ITだけでは解決できないことが多く、難易度は高い。

テレワークによる効果/出典:ガートナー(2017年11月)

志賀氏は、これを成功させるポイントは「目的を持つこと」だと説明する。例えば、製造業のある企業では「場所に縛られない働き方の実現で、生産性を向上する」という明確な目標を掲げた。これを共通の目標として人事部門とIT部門が協力することで、間接部門の全職種を対象に週1日の在宅勤務を認める制度の導入が実現されたのだ。結果として、残業時間の削減と女性の離職率の低下といった効果が得られたという。

過度なメール依存からの脱却:1時間の削減

「メール自体は便利なツールですが、毎日大量に届くため、混乱の元になっています」(志賀氏)

ある会社の調査によれば、メールボックスの中身の2割が本来やるべき仕事に関係したもの、残りの8割は「はい・いいえ」で済むようなやり取りや、単なる情報共有を目的にしたものであったという。メールボックスに重要な情報が埋没しないよう、社内コミュニケーションメディアを最適化すれば、1.5時間の削減が見込める。

ただし、新しいツールを使う分、付帯業務が0.5時間増加し、削減効果は正味1時間になる計算だ。リテラシーの向上に加え、ガイドライン策定も必要になるため、「難易度は中程度」だと志賀氏はコメントした。

会議の効率化:1時間の削減

会議は、知識労働者にとって集合知の形成の場でもあり、ナレッジの価値を高める大事な場でもある。志賀氏が提案するのは、会議そのものの時間ではなく、会議周辺の時間の効率化だ。会議日程調整の効率化、スケジューラーの分析機能を使った無駄な会議の発見、孤独になりがちな在宅勤務者をサポートする遠隔会議などが活用できる。ポイントは、「短い時間で最大の効果を上げよう」と考えること、つまり一人一人の意識の改革にあるようだ。これも、難易度は中程度だと志賀氏は見ている。

その他の時間削減:1時間の削減

残りは周辺業務の見直しである。志賀氏は、ある企業がトップ営業担当者のベストプラクティスを共有できるソリューションを導入している例を紹介した。困ったことがあったら上司に指示を仰いで助言を得られる仕組みが、若いLINE世代から支持を得ているという。営業のみに限定される事例だが、プロセスマネジメントに着目し、付帯業務を減らすことを志賀氏は推奨していた。

「古いIT」のままでは大きな効果は得られない

志賀氏が提示した残業時間削減のやり方は、いずれもコア業務以外をITで効率化することに特化している。ワークスタイル変革によって付加価値を生まない時間を減らし、逆に「知識獲得」という付加価値の増大を実現するには、結局はITを使いこなす力が必要になるということだ。

ここで、志賀氏は衝撃的なデータを示した。日本とシンガポール、オーストラリア、米国、英国、フランス、ドイツを比較した調査結果によれば、日本は「業務用途のデジタル・テクノロジーに対する熟練度の自己評価」が低く、「自組織におけるデバイスとアプリケーションの最新度」や「業務用途のデバイスとアプリケーションの満足度」も低く、「デジタルスキルを習得するための手段と機会」も少ないというのだ。

“もったいない精神”が影響しているのか、新しい仕組みへの乗り換えが進まないことも、残業時間の多さに関係している可能性が高いことを志賀氏は指摘し、業務を変えようにもIT投資が追いついていない残念な傾向を明らかにした。

モノを大切に長く使おうというのは尊ぶべき価値観であるが、その半面、「新しいITの価値を考慮した投資が不可欠」と志賀氏は訴える。同氏は「IT部門だけが頑張るのではなく、ワークスタイル変革リーダーを分散配置するなど、組織全体を巻き込み、浸透させる工夫を試すことも必要です」と提言し、講演を締めくくった。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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