「ペース・レイヤー」の3層分類がデジタルビジネスにマッチ
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アプリケーションの特性を考える手法として、ガートナーでは「バイモーダル」と「ペース・レイヤー」という2つの考え方を推奨している。
バイモーダル(2つの流儀)とは、企業ITを、ERPやSCMなどの基幹系システムに代表される安定稼働が重視されるIT(モード1)と、CRMのようなデジタルトランスフォーメーションのために必要で環境の変化に追随することが重視されるIT(モード2)の2つに分類し、それぞれ検討していく手法である。モード1は品質や堅牢性が重要だ。モード2がスピードを重視することはすでに述べたとおりである。
ペース・レイヤーとは、アプリケーションを変化の頻度(ペース)で分類する手法である。更新頻度の低いほうから「記録システム」「差別化システム」「革新システム」の3層に分類し、ビジネスの土台となる前者は品質や堅牢性、競争力の源となる後者はスピードを重視する。
「ペース・レイヤーをベースとしたアプリケーション戦略は、すでに国内でも金融機関や情報系企業が採用しています。プロセスの変更は厳格に行うか、実験的に行うか。アーキテクチャは従来型と代替プラットフォームのどちらにするか。開発手法はウォーターフォールかアジャイルかと、各レイヤーに合わせたガバナンスを適用することが容易になります。『SoE (Systems of Engagement )』と『SoR(Systems of Record)』の2つに分けて考える企業も多いようですが、こちらの分類の方が始めやすいのではないでしょうか」(片山氏)
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ペース・レイヤーをベースとしたガバナンスを適用する(出典:ガートナー ジャパン) |
的確な戦略を打ち出せる強いIT部門
片山氏は、これからのアプリケーション戦略において、人材の確保も重要な課題であり、十分な検討と施策が必要だと忠告する。
「ITエンジニアの人材不足が問題視される中で、特にレガシーなシステムは、技術者を確保することがますます困難になります。今後、自然と増えるような余地はありません。自社内で育成したり、レガシー技術に長けたパートナーを確保したりと、能動的な活動が必要です」(片山氏)
また2017年以降、特に開発やテストの領域では、自動化技術を応用するケースも増えていくことが予測される。積極的な企業が取り入れ、市場優位性を確保することも十分に考えられる。自動化の採用において重要なことは、やはりアプリケーションの特性を捉えることだ。
こうした新しい取り組みに踏み出し、IT部門がビジネスに貢献するためにも、企業の経営課題・ビジネス戦略に沿った的確なアプリケーション戦略を立案できるようになることが重要である。一方で経営層にも、ペース・レイヤーで示されるような複数の手法を認める許容力も求められる。
IT担当者やCIOは勉強を怠らず、自らのこととして、一人一人が5年後を考えて動かなければならない。そして、経営者やビジネス部門を説得できる力を身に着けてほしい。それが、片山氏の切なる思いだ。
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