「ゴルフ」といえば50年以上の歴史を持つフォルクスワーゲン(VW)のロングセラーモデルだ。その初代モデルのデザインを手掛けたのがジョルジェット・ジウジアーロだった。
新たな国民車の誕生
「小型実用車デザインに革命をもたらした記念碑ともいうべき1台」。「オートモビルカウンシル2025」に展示された「ゴルフⅠ」(ゴルフの初代モデル)の説明プレートには、こんな風に書いてあった。初代ゴルフの直線基調のデザインを参考にした(真似した?)ようなクルマは、枚挙にいとまがないくらいだ。
1960年代まで、VWを代表する「国民車」だったのが、フェルディナンド・ポルシェが設計した「タイプ1」(ビートル)だ。その後継として、VWがジウジアーロに新たなデザインとパッケージングを依頼し、完成したのが初代「ゴルフⅠ」である。デビューは1974年だ。
コンパクトな外寸ながら、横置きエンジンとFF(前輪駆動)というパッケージングに合わせて設計した四角くて広い室内空間を持つゴルフⅠは、小型乗用車として理想的なデザインを実現したことで世界中で人気となった。1983年までに生産台数は680万台に達した。日本では1975年からヤナセが輸入、販売を行った。
ジウジアーロのすばらしい基本デザインは、それをもとに社内デザイナーが設計したという新型の「ゴルフⅡ」が引き継いだ。
ゴルフⅠのボディは全長3,725mm、全幅1,610mm、全高1,410mm、ホイールベースは2,400mm、重量は780kg。当初のエンジンは1.6L直列4気筒SOHCで、1.5Lや1.7L、ディーゼルモデルも存在する。
1976年には1.6Lにボッシュ製Kジェトロニックインジェクション(燃料噴射装置)を装備した「GTI」がデビュー。110馬力を発生するGTIは“ホットハッチ”の愛称で呼ばれるようになった。
GTIの「I」はインジェクションの頭文字。赤い縁取りを追加したフロントグリルには「GTI」バッジを装着していた。足回りはビルシュタイン製ダンパーなどで強化。GTIはクルマ好きの憧れのクルマとなっていたが、残念ながら日本に正式輸入されることはなかった。
展示車はゴルフⅠのEグレード。鮮やかな水色のボディがよく似合っている。