AppleがiPhoneでの有機ELディスプレイ(OLED)採用に向けた動きを強めるなか、関連各社の奔走が続いている。Reutersによれば、ジャパンディスプレイ(JDI)は2018年春を目標にOLEDパネルの大量生産をスタートさせる意向で、同年中にリリースと噂されるiPhoneのOLED搭載モデルへのパネル供給に向けた体制を整えつつある。

同件は、もともと日刊工業新聞が昨年2015年11月30日に報じていたもので、2016年春に石川工場内に試作ラインを整備し、国内での量産計画を推し進めていく計画とされている。複数の情報筋によれば、実際にJDI関係者が12月中にApple本社まで出向いて量産計画を伝えたとのことで、先行する2社に急ピッチで追いつこうとしているようだ。今回は、1月後半のタイミングでJDIの滝本昭雄センター長が報道陣に対してOLEDパネル製造への参入を表明したもので、2018年に向けた動きが活発化してきた印象を受ける。

以前にもレポートしたように、AppleがiPhoneでのOLED採用に興味を示している一方で、現状ではiPhoneの年間2億台を超える製品ラインを満たすだけのOLEDパネル供給力が存在しておらず、さらに小型向けではSamsungのAMOLED方式がシェアのほとんどを握っている独占供給状態にあり、サプライヤのマルチソース化を推進するAppleにとっては大きな問題だったといえる。供給が1社に偏るのは価格決定面で不利なだけでなく、過去にAppleが何度も経験した「部品供給トラブルにより生産ラインそのものが停止する」というボトルネック状態を生み出す。

現状で2018年に確実に供給可能なのはSamsungのみだが、LG Displayも急遽、需要に応じられるよう対策を進めているといわれ、すでにAppleに液晶パネルを提供しているサプライヤである日本国内勢の動向に注目が集まっていた。AppleのOLED採用決定とSamsungの動向を伝えた日本経済新聞の報道は2015年の11月26日だったが、日刊工業新聞が報じるようにJDIの動きは素早く、このトレンドの変化にいち早く対応すべくAppleへのアピールを行ったことになる。現状でパネル・サプライヤの1社であるシャープの動向は不明だが、当面はこのSamsung、LG、JDIの3社体制でのOLED供給になるとみられる。

この状況について、各社では引き続き情報収集に追われているものの、2018年のタイミングで確実にパネルを供給できると確約できるのはSamsungのみで、LG DisplayとJDIについてはまだ未知数の部分が大きい。またSamsung自身も、今後2年でどれだけOLEDの供給キャパシティを上げられるかは不明な部分があり、最悪のケースでは3社合わせてもiPhoneの年間販売台数の1~2割程度、場合によっては2018年中の出荷分はSamsungのみに頼り切りといった状況が生まれる可能性もある。このため、2018年のタイミングではiPhone製品ライン全体にOLEDが展開される可能性は低いと筆者は分析しており、各社の動向を見極めつつAppleが2018年春のタイミングまでに最終判断を行うことになるだろう。