《藤袋草子絵巻》(部分) 16世紀(室町時代) 紙本・彩色 サントリー美術館 [前後期で巻替]

山種美術館は2014年1月3日~3月2日、「特別展 Kawaii 日本美術 —若冲・栖鳳・松園から熊谷守一まで—」を開催する。

思わず「かわいい!」と声を上げたくなるような作品を観賞

上村松園《折鶴》(部分) 1940(昭和15)年頃 絹本・彩色 山種美術館

現在、日常でもよく耳にする「かわいい」という言葉。今や海外にまで広がり、日本から発信される「Kawaii」文化に注目が集まっているという。さかのぼれば、平安時代に著された『枕草子』には「うつくしきもの(=かわいいもの)」として稚児や雀の子などが挙げられており、小さいものや幼いもの、未完成なものの愛らしさ、儚さを「かわいい」とめでる文化が、古くから続いてきたことがわかる。同展は、文学の世界だけでなく美術の世界でも、時代を超えて人々の心を捉えてきた「かわいさ」に注目した展覧会となる。

室町時代の「藤袋草子絵巻」は、子供向けの絵本を思わせる素朴な描写によって猿を擬人化して描き、江戸時代の伊藤若冲は、枡目描きの技法で愛嬌たっぷりの動物尽くしの屏風「樹花鳥獣図屏風」を制作した。

また、近代日本画においては、温かいまなざしで小さな命を見つめた竹内栖鳳「みゝづく」、折紙で遊ぶあどけない少女の姿を描いた上村松園「折鶴」など、自然、あるいは日常に見られる生きものや子どもの愛らしい瞬間を捉えようとする意識がうかがえるという。さらに、熊谷守一の洋画や谷内六郎の挿絵原画に表されたほのぼのとした「ゆるさ」もまた、現代人にとっての「Kawaii」という感覚に通じるものとなっている。

竹内栖鳳《みゝづく》1933(昭和8)年頃 絹本・彩色 山種美術館

谷内六郎《童謡にっぽんのわらべうた さし絵シリーズ》のうち「ほ、ほ、ほたるこい」厚紙・水彩 谷内達子氏所蔵 (C)Michiko Taniuchi

同展では、中世から現代までの絵画ほか、乙女心をつかむ小さな化粧道具などの作品を幅広く紹介。外見のかわいさだけでなく、シンプルな線、カラフルな色彩、ユーモラスな表現に潜む「Kawaii」を、日本美術を通して紐解く展覧会となる。

会期は、2014年1月3日~3月2日。前後期で一部展示替あり。前期:1月3日~2月2日、後期:2月4日~3月2日。会場は、山種美術館(東京都渋谷区広尾3-12-36)。開館時間は、10時~17時(入館は16時30分まで)。休館日は月曜日。ただし、1月13日は開館、1月14日は休館。入館料は、一般1,200円、大高生900円、中学生以下無料。その他、詳細は同館Webサイトを参照のこと。