Google I/O 2012で発表されたNexus 7

米国の調査会社であるIHS iSuppliは7月11日(現地時間)、Google I/O 2012で発表されたGoogle謹製タブレット「Nexus 7」について、恒例の部品原価(BOM)分析結果を発表した。Nexus 7の8GBストレージモデルは販売価格199ドルに対し、BOMは151.75ドルだった。これは現在のKindle Fire 8GBモデルの133.80ドルというBOMに対して20ドル弱ほど割高だという。

BOM (Bill of Materials)の詳細はiSuppliのレポートに詳しいのでそちらを参照してほしい。ダイジェストを紹介すると、Nexus 7 8GBモデルの151.75ドルというBOMのうち、もっとも原価の高い部品がディスプレイ+タッチスクリーンの62ドル(38+24ドル)で、次いでプロセッサ(NVIDIA Tegra 3)の21ドル、メモリ(ストレージ)の13.50ドル、バッテリの12.75ドルとなっている。なお、16GBモデルのメモリモジュールの原価は21.00ドルで、8GBモデルとの差額の7.50ドルのみがBOMの上昇分となる。それにも関わらず16GBの販売価格は249ドルであり、7.50ドルの部品原価を考えればやや割高な設定だといえるだろう。

興味深いのはNexus 7そのもののBOMよりも、Kindle Fireとの比較の部分だ。iSuppliは同時にKindle FireのBOMも提示しており、両者を比較可能になっている。前述のように133ドルのKindle FireのBOMのうち、最も高価な部品はディスプレイ+タッチスクリーンの59ドル(35+24ドル)で、次いでプロセッサ(TI OMAP 4430)の13.50ドル、メモリ(ストレージ)の13.35ドル、バッテリの12.75ドルとなっている。誤差の範囲ではあるものの、Nexus 7 8GBとはカメラ等センサーの有無のほか、プロセッサの原価がトータルでのBOMの差になって表れた形だといえるだろう。iSuppliによれば、この部品構成を見る限り、Nexus 7のライバルはiPadというよりも、Kindle Fireを非常に意識した製品だという。

Kindle Fireについてはもう1つ面白い傾向がある。Kindle Fireが昨年末に初めてリリースされた際、iSuppliはやはり同製品のBOMを分析結果として提示している。当時、iSuppliはKindle FireのBOMを191.65ドル、組み立て工程を含めた総コストを209.63ドルと見積もっており、199ドルという価格設定は明らかに赤字だと分析していた。だが現在、同製品のBOMは133.80ドルで、組み立て工程を含めても139.80ドル程度だとしている。組み立てコストの下落もさることながら、各部品の原価下落、特に最も高価なパーツであるディスプレイモジュールとメモリ(NANDフラッシュ)の価格が半額ないし3分の2程度まで落ちたことが大きい。これは7インチタブレットの数が増えたこと、NANDフラッシュが比較的潤沢に供給できるようになったことが大きいとみられる。一方でプロセッサ原価はそれほど変化していない。

今回のiSuppliの調査結果を見る限り、Kindle Fire単体の販売で黒字かトントンレベルには持ち込めるようになったといえる。Nexus 7もおそらく同水準を狙っていると思われ、今後は7インチクラスのタブレットは200ドルの価格帯が中心となり、この価格でないと他のライバルは非常に勝負しにくい状態になる可能性がある。これはAppleとて例外ではないと思われ、もし噂の「iPad mini」をリリースする場合、価格設定が勝負ポイントの1つになるだろう。またタブレット市場にはMicrosoftがWindows 8/RTを搭載した「Surface」を今年後半にかけてリリースすることになるが、少なくとも下位モデルとなるSurface for Windows RTは現行iPadと200ドルタブレットに挟まれる形になるため、ターゲット選定において非常に厳しい判断を迫られることになるとみられる。

(記事提供: AndroWire編集部)