Kindle Fire

米Amazon.comが9月28日に発表したタブレット製品「Kindle Fire」の原価予測を、米IHS iSuppliが発表した。それによれば、総部品コスト(Bill of Materials: BOM)が191.65ドルで、組み立て工程を含めた総コストが209.63ドルになるという。

Amazon.comはKindle Fireの販売価格を199ドルと発表しているが、改めてハードウェアの販売そのものからは低利益あるいは赤字を想定し、代わりにプラットフォーム普及とコンテンツ販売を交えた総合戦略を狙っていることがわかる。

詳細はiSuppliの調査レポートを確認してほしいが、部品で最も高価なのがディスプレイ/タッチスクリーンの87ドルで、それにメモリの25ドル、バッテリの18.25ドル、アプリケーションプロセッサの15ドルが続く。他のタブレット製品と同様に、やはりディスプレイまわりの部品コストが原価の大部分を占めていることがわかる。Kindle Fire発表時にすでにいわれていたことだが、他の競合製品の多くが250-400ドル程度のBOMを想定しているため、Kindle Fireの199ドルという価格は赤字、よくてもトントンといったレベルの設定であり、「低価格でハードウェアを販売してプラットフォームの普及を加速」「その後にコンテンツ販売で回収」といった従来型のゲーム機に近い戦略を採っていると考えられる。つまりAmazon.comにとってKindle Fireというハードウェアの販売そのものはビジネスと考えられておらず、コンテンツ拡販のためのツールという位置付けに近いといえる。

またWall Street Journalによれば、同じタイミングでカナダのUBM TechInsightsもまた、Kindle Fireにおける「Teardown Analysis」と呼ばれるコストの分析調査報告も行っている。UBM TechInsightsの場合、BOMは150ドルで、組み立て関連の諸経費を含めた総コストは160ドルを上回る程度と予測している。例えばiSuppliがディスプレイ/タッチスクリーンの予測原価を87ドルとしているのに対し、UBM TechInsightsは60ドルとするなど細かい違いはあるが、おおよその部品の価格構成は似通っている。ただiSuppliの結果ではほぼ赤字販売になるのに対し、UBM TechInsightsの結果では若干のマージンが得られることになる。もっとも、部品や製造以外の間接コストである開発費やマーケティング費用などは原価表には含まれないため、UBM TechInsightsの結果をもってしても赤字傾向にあることには変わりないだろう。Amazon.comは赤字のリスクを抱えつつ、Kindle Fireで広く長くビジネスを続け、コンテンツ販売を行っていく必要があるだろう。