KDDIは18日、2012年夏モデル以降のAndroidスマートフォンを含むau携帯電話の絵文字デザインをリニューアルすると発表した。これまでの、auオリジナルのものから、NTTドコモの絵文字のデザインに近い、単色、アニメーションなしの絵文字に変更し、他社の絵文字との互換性を向上させる。

なお、旧モデルでは、Android 4.0(Ice Cream Sandwich)にバージョンアップしたスマートフォンでもリニューアルが実施される。リニューアルされる絵文字は、au絵文字全647個になる。

絵文字の例。au新絵文字の部分が新しいもの、au絵文字は従来のもの。それぞれ、他社に送ると該当する絵文字に変換される。他社に存在しない絵文字は、これまで同様顔文字やテキストに変換される

日本の携帯電話は、NTTドコモを皮切りに、携帯3社が1999年に絵文字サービスを開始。ドコモで絵文字開発に携わった栗田穣崇氏によれば、もともとポケットベル時代のハートの文字に人気があったこと、全角250文字の携帯メールで表現力を向上させるために絵文字が開発されたという。

当時はまだ画像ファイルフォーマット「GIF」のライセンスも残っていたため、画像ではなく絵文字として作られたそうだ。携帯の画面の解像度も低く、サイズも小さかったため、12×12ドットの単色でシンプルなものしか作れなかったが、逆にその単純さがユーザーに支持され、mova 504iシリーズで絵文字を追加したときも数は増やしたものの、単色・動きなしのシンプルさは維持したという。

それに対して、後発のauでは2000年の絵文字リニューアル時に他社よりも数を増やし、よりカラフルにして、アニメーションの動きも加えたものにした。当時は、絵文字の多さ、独自の絵文字が重視され、キャリアの囲い込み戦略の一環だった。しかし、2006年に絵文字の相互乗り入れが実現し、他社キャリアに絵文字を送ると、そのキャリアの絵文字に変換されるようになり、その後は「互換性が重視されるようになった」(KDDI)。

相互乗り入れは始まったが、もともと独自で絵文字を整備していた各社の絵文字では、絵で表現されるニュアンスが異なったり、送信先に存在しない絵文字がテキストに置換されたりといった問題があった。例えばauの絵文字で人の笑顔、猫の笑顔という2つの絵文字は、iPhone 4Sでは正確に表現されるものの、他社携帯あてに送ると同じ人の笑顔になってしまう。さらにアイスクリームや天狗の絵文字は、それぞれテキストに変換されてしまうなど、思い通りの絵文字が再現できない場合もあった。

また、カラフルで動きのある絵文字は、通常のメールフォントとの統一感がなく、KDDIの調査では若年層は絵文字にシンプルさを求める傾向があるとの結果もあって、相互互換性とニーズへのマッチを考え、今回リニューアルを決断した。

今回、新たに「どの年齢層にも受け入れられやすいシンプルな絵文字、送り手側の意図したとおりに表現できる」ことを目標に、単色で動きのない絵文字にデザインを変更。デザインはドコモの絵文字開発者の栗田氏(現・バンダイナムコゲームス)に依頼。ドコモの絵文字のデザインを意識し、統一感を図った。auにしかない絵文字では、Unicode 6.0で国際標準化された絵文字との互換性も意識した表現にした、という。

ドコモと共通の絵文字については両社で協議した結果同等のものに変更。新幹線やテレビなどの絵文字を、現代に合わせて液晶テレビや「のぞみ」のようなデザインに変えるといった微調整はあるが、ドコモ絵文字との共通化を行った。

従来の絵文字と新絵文字での比較。例えば新幹線は「のぞみ」風のデザインになるなど、微調整も加えられている

これによって、auとドコモ間で絵文字を送受信すると、ほとんど同じ表現・ニュアンスが実現できるようになる。もともとウィルコムはドコモの絵文字を使っており、さらにKDDIが各社に呼びかけた結果、イー・アクセスがイー・モバイル携帯でau絵文字への変更に同意し、12年夏にも絵文字を変更するという。このため、ドコモ、au、イー・モバイル、ウィルコムで互換性の高い絵文字のやりとりが可能になる。

携帯メールや絵文字を含めて、各社ではかねてからさまざまな協議を重ねており、ソフトバンクも参加しているが、同社は2008年に絵文字リニューアルを行い、他社との互換性自体を向上させたことで、今回のデザイン変更には当面追従しないという。

カラフルで動きのある絵文字は、デコレーション絵文字の登場によって実現できるようになったことも、変更の大きな契機だ。こうした絵文字はデコレーション絵文字で実現できるため、通常の絵文字との差異を明確化することも重視したそうだ。このため、現在の絵文字で使われている動きのある人の表情や猫の絵文字など、一部はデコレーション絵文字として端末にプリセットするそうだ。

デコレーション絵文字としてプリセットされる絵文字の一部

今回の変更によって、ドコモ絵文字との互換性が向上したが、全647個のau絵文字のうち、ドコモと共通なのは213個しかなく、残る434個の絵文字を他社に送るとテキストに変換されてしまうという問題は残っている。これについてはさらに「完全互換を目指す」(KDDI)考えで、各キャリアで存在しない絵文字がないように数をそろえる方向で協議を進めていく。なお、グーグルはGmail内で絵文字変換に対応しているが、同社との協議は今後行うという。

(記事提供: AndroWire編集部)