ソフトバンクは、2010年3月期の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比3%増の2兆7,634億円、営業利益は同29.7%増の4,658億円、経常利益は同51%増の3,409億円、当期純利益は同2.24倍の967億円で、増収増益となった。携帯電話事業の業績が好調に推移し、営業利益は同社が連結決算を開始した1995年3月期以降、最高となり、2006年3月期から5期連続で過去最高益を更新している。同社は2011年3月期の連結営業利益を、前期比7.3%増の5,000億円と見込んでおり、6期連続で過去最高益を更新することを目指す。

同社の事業全体を牽引する携帯電話事業の売上高は同8.9%増の1兆7,014億円、営業利益は同52.2%増の2,609億円と大幅に伸長した。携帯電話の純増数は124万3,700件となり、同期末の累計契約数は2,187万6,600件、累計契約数のシェアは前期末から0.3 ポイント上昇して19.5%となった。増益の要因は、iPhoneの販売が「iPhone for everybody キャンペーン」などの実施により好調であったほか、通信機能付きデジタルフォトフレーム「PhotoVision」の好調な販売が寄与したことなど。ユーザー数が順調に伸び、中でも、iPhoneを中心とした、高いARPUの端末が売れ、ユーザーが増えた分だけ利益が増加した。

同期のARPU(1契約当たりの平均収入)は4,070円で、基本使用料+音声ARPUは、事業者間接続料金の改定や通話利用減少などにより、前期比で270円減少の2,050円となった。今回の連結決算で注目されるのは、データARPUの動向だ。同期第4四半期(2010年1~3月期)のARPUは3,890円となっており、基本使用料+音声ARPUは1,750円、データARPUは2,140円であり、データARPUが四半期ベースで初めて基本使用料+音声ARPUを上回った。通期のデータARPUは前期比280円増の2,020円となった。孫正義社長は「世界で初めて、携帯電話事業者で、データARPUが基本使用料+音声ARPUを上回った」と述べた。

固定通信事業の売上高は、同4.1%減の3,487億円だが、営業利益は同21.2%増の229億円だった。減収となったのは、前期まで、この事業セグメントに含めていたソフトバンクIDCソリューションズの売上高を、同期からインターネット・カルチャー事業に含めていることが主な要因であるという。また、同事業セグメントの中核会社であるソフトバンクテレコムは、直収電話サービス「おとくライン」などが引き続き堅調であった反面、「マイライン」などの中継電話サービスや国際電話サービスでの減収傾向が続いているとしている。同事業が営業増益となったのは、「おとくライン」など利益率の高いサービスの回線数の増加が主要因だという。

ADSLサービスなどをはじめとするブロードバンド・インフラ事業は、売上高が同13.5%減の2,034億円、営業利益は同3.2%増の487億円だった。この背景について同社では、「主に、ADSL事業部門で課金回線数の減少により減収傾向が続いた一方で、ADSL事業の販売関連費用を削減したことや前期末の光インフラ事業専用資産の減損処理などに伴い減価償却費が減少したことによる」としている。

今期は、設備投資もさらに積極化する。孫社長は、全世界のモバイルデータトラフィックが2009年からの5年間で40倍に急増するとの予測があることを紹介。このような状況を想定、ネットワークの改善にいっそう注力する意向を示し、ひとつの基地局で狭い範囲をカバーするマイクロセル、カバー範囲をさら小さくしたフェムトセル、Wi-Fiを組み合わせることによりトラフィックの爆発的増加に対応していくとしている。

また、2010年3月末に6万の基地局数を今後1年で倍増させる計画を発表しており、これらの目標を達成するため、前年同期2,229億円であった設備投資を今大幅に拡大し、4,000億円とする方針だ。

一方、同社が、携帯電話の料金プラン「ホワイトプラン」を2年契約に改定したことについて、孫社長は「当社はこれまで、料金プランで2年縛りをするのはおかしいと主張してきたが、NTTドコモ、KDDIも事実上2年縛りになっており、業界慣行に右へならえということにした。ユーザーの大半は、2年割賦で端末を購入しており、実態としては変わらない」とした。

また、決算発表と同日に、ヤフーとDeNAがソーシャルゲーム事業で業務提携したことについては「SNS、ソーシャルゲームの分野は世界的にユーザーが増えており、この提携は、双方にとってウィンウィンであり、それは我々の、インターネット、モバイルインターネットに、良い影響をもたらすと考えられ、歓迎している」と評した。