Android Nの正式名がNougat(ヌガー)と決まりました。バージョン番号については正式な発表がないようですが、7.0だと言う人もいれば、6.xだという人もいます。実際、Marshmallowは、まだ6.0.1なので、7に進むには早すぎる感じもあります。Lollipopでさえ、5.1.1まで出ています。逆にMarshmallowが6.0になったのは、5.xを仕切り直したからとも言われているので、仕切り直しの必要がない6.xが、ここで7.xに進むのは早すぎるといえます。

ですが、Windowsが8から10になったのは、iOSが9だったのでより大きい番号にしたかったからとも言われており、Androidも駆け足で番号を毎年1つ上げていく勢い番号を増やしても、おかしくはありません。というわけで、バージョン番号が未定なので、本稿では、Android Nのまま話を進めていくことにします。

Android Nでは、通知も表示形式が変更になり、通知シェードではより多くの通知を表示できます(写真01)。まず、通知元アプリを示すアイコンが小さくなり、通知トーストの最初に通知内容とともに表示され、そのあとに詳細が表示されます。GMailなどの通知の頻度が高い、あるいは通知詳細が多い場合、「束ねられた通知」(Bundled Notifications)という表示が可能になりました。

写真01: 通知は、アイコンが小さくなり、より多くの情報をコンパクトに表示できるようになった

通知タイトル部分にある三角マークをクリックすることで、要約と詳細表示を切り替えることができるものです(写真02)。たとえば、GMailの場合、要約表示では、アドレスとサブジェクトのみを並べますが、三角マークをクリックすると、メッセージ1つ1つをトーストで表示します。さらにメッセージに対応したトーストをタッチすると、「アーカイブ」や「返信」といったメニューを表示できます(写真03)。

写真02: メールなど多数の通知が行われる場合、サマリー的な表示が行われ、タイトル部右の矢印のタッチで、個々のメッセージの通知が表示できる

写真03: さらに個々のメッセージの時間表示右側の矢印のタッチで、メッセージをより表示させることも可能

チャットアプリなど即時性の高いアプリでは、通知トーストの中で直接応答を返すことも可能になりました(写真04)。

写真04: チャットアプリなどでは、通知トーストから直接応答メッセージを書いて送ることができる

これまでも、ある程度のアクションをトースト内で指定することはできましたが、入力に関しては、アプリ側で行う必要がありました。Android Nでは、通知トーストの下に応答欄が表示され、その場で応答を入力することが可能になっています。ただし、その場で入力するには、アプリ側の対応が必要です。

アプリごとに通知の重要度を6段階で設定できるようになりました(写真05)。これまでは、アプリごとに通知をブロックするかどうか程度しか設定がありませんでしたが、Android Nでは、重要度の設定により、表示方法や通知シェード内での順番などがかわります。アプリごとに6段階の設定を行うのが基本で、設定した重要度により、「ロック画面に表示」や従来の優先通知などの設定が制御可能になります。Marshmallowまでの3つの設定をそれぞれ設定するのに比べて、わりとスッキリした感じになりました。設定は、通知シェードで通知自体を長押しすることでも可能です(写真06)。

写真05: 個々のアプリに対して、通知表示の重要度を6段階で指定できる。また、通知自体を非表示とした場合でも、特定のアプリは、強制的に通知を行わせるといった設定も可能

写真06: 通知シェードで通知を長押しすると、アプリの重要度設定が直接行えるようになっている

なお、アンドロイドの通知では、アプリ側も通知に対して、重要、通常といった区別をもっており、実際にどう表示するのかは、アプリによる通知の重要度、ユーザーが設定したアプリの重要度、通知表示モードの3つを勘案して決められます。

クイックセッティング

通知領域を下にドラッグして表示される「クイックセッティング」(写真07)が拡張されます。まず、複数ページの表示が可能になり、さらにタイルと呼ばれる個々の機能を追加したり、順番を変更することができるようになります。また、これに伴い、アプリなどがクイックセッティングタイルを追加することも可能になります。

写真07: クイック設定は、複数ページの表示が可能になった。ホーム画面などと同じく、下にページ数と位置を表すドットが表示され、左右のスライド操作でページを切り替えることができる

クイックセッティングは、無線LANなどの通信関連の設定や画面関連の設定などが素早く行うためのものです。アクセスがしやすいだけでなく、クイックセッティングタイル自体、タップでオンオフするなど、簡単な操作で設定を完了できます。また、メインの画面にオーバーレイして表示されるため、上にフリックするだけで簡単に閉じることができ、元のアプリケーションに簡単に復帰できます。

実際には、クイックセッティングのパネル追加や編集機能は、Marshmallowでも隠し機能として実装されていました。今回、これが正式機能として利用できるようになったわけです。

なお、DP4には、サンプルとして、デバッグ用の機能「GPUレンダリングのプロファイル作成」、「レイアウト境界を標示」といったパネルが入っていました(写真08)。おそらく、既存の機能でも、パネルさえ作れば、操作可能だと思われます。そもそもクイックセッティングパネルは、ロックスクリーンでも開くことができ、いつでも利用できることから、Android N世代では、さまざまなパネルが作られそうです。

写真08: クイック設定の「編集」をタップすると、アイコン表示順などを変更できるようになる。サンプルとして「夜間モード」などが追加できる

DP4では、ここに「ナイトモード」用のパネルがあるので、ついでにナイトモードについて解説しておきましょう。ナイトモードは、夜間など暗い場所でスマートフォンを使うときに画面の明るさを抑える「テーマ」に切り替える機能です。また、「ティント」調整をオンにすると、通常画面の白地の部分を少し赤みがかった色にすることができます。一般家庭用の蛍光灯シェードなどについている「ナツメ球」のような感じの色になります。

この機能は、DP4以前は、システムUI調整ツール内で設定ができたのですが、DP4では、設定にあるシステムUI調整ツールには項目が表示されなくなり、起動や設定はクイック設定パネルからのみになってしまいました。ただ、クイック設定パネルにあるナイトモードアイコンを長押しして表示する設定ページの表示は「システムUI調整ツール」になっているので、一時的な問題と思われます。

たしかに、部屋の電気を消して暗い中でスマートフォンを見るとちょっとまぶしすぎると感じることがあります。こんなときに使うことを想定しているのが「ナイトモード」です。なお、設定を見ると、「時間や場所に応じて夜間モードに切り替えます」という項目があるのですが、オンオフのみで、具体的な場所や時間を設定することはできません。なんだか、このあたり、まだ「迷い」が見られるようです。

最後に、機能以外の改良点をまとめておきます。これらは、おもに開発者がアプリを作るときに利用するものなので、Android N対応のアプリが登場しない限り、ユーザーがこれらの恩恵を受けることはありませんが、性能や利便性などが向上するため、ユーザーにもメリットがあります。

  • Scoped directory access
  • OpenGL ES 3.2の採用(Lollipopでは3.1だった)
  • GPU制御用APIセットVulkanのサポート
  • ICU4Jサブセット搭載(ICU4Jは文字コードや数値表現などを支援するライブラリ)
  • 開発ツールがjava8に対応

このうち、「Scoped directory access」(スコープ付きのディレクトリアクセス)について説明しておきましょう。これは、主にSDカードなどの外部ストレージ上のディレクトリ(フォルダ)へのアクセスを簡略化します。

Android N以前では、外部ストレージに対するアプリからのアクセスは「すべてを許可する」、「毎回ダイアログを出してユーザーに選択させ許可を出す」の2つの方法しかありませんでした。つまり、1つ1つ毎回ユーザーが選択するか、全部を許可するかの2通りしかなかったのです。しかし、アプリからの外部ストレージのアクセスは、たとえば、写真関連アプリでは撮影データだけ、あるいは、アンドロイドや他のアプリが作成した特定のファイル1つだけといった場合がありえます。

これまでは、アクセス制限がなしか、個別をその場で選択するかの2択だったため、結局、アプリは外部ストレージすべてをアクセスする許可を得て動作することがほとんどでした。しかし、この方法では、外部ストレージのファイルを悪用するアプリが入り込む危険性があります。たとえば、画像表示や画像編集アプリなのに、ストレージの内容をすべて外部サイトに転送してしまうといったことが可能になってしまうのです。

そこで、Android Nでは、外部ストレージの特定のディレクトリやファイルを直接指定してアクセスする方法を提供しました。最初にアクセスするときにユーザーに許可を求め、許可をもらえば次回以降はユーザーに確認することなくアクセスができます。また、ユーザーに拒否された場合、2回目以降のアクセス要求では、「Don't ask again」(2度と聞かない)のチェックボックスが表示され、これをユーザーがオンにすると、その後はユーザーに確認することなく、アクセスが許可されなくなります。

この方法により、たとえば、SDカード上のカメラ画像フォルダのみをアクセスするような場合、最初にアクセスする時点でユーザーに許可を求め、許可をもらえば次回以降は確認の必要がなくなりました。

このDP4のあとはいよいよ最終版になります。正式版は、新しいNexusシリーズと同時に出荷で、その後、既存のNeuxsシリーズへの配布が開始されるはずです。