多種多様な候補から自分好みの端末を選択でき高度なカスタマイズが可能、それがAndroidの魅力であり強みです。しかし、その自由度の反面わかりにくさを指摘されることも少なくありません。このコーナーでは、そんな「Androidのここがわからない」をわかりやすく解説します。今回は、『スマホのメモリは寿命に差があるってどういうこと!?』という質問に答えます。

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AndroidかiPhoneかを問わず、ほとんどのスマートフォンの内蔵ストレージには「NAND型フラッシュメモリ(NANDフラッシュ)」が採用されています。これは電源をオフにしてもデータが失われない「不揮発性メモリ」の一種で、USBメモリやSDカードにも同種の記憶素子が使われています。

このNANDフラッシュですが、書き込み/消去のとき電荷が通り抜ける特性上、データ保持の役割を担う絶縁層(トンネル酸化膜)は次第に劣化していきます。技術の進化により、以前に比べ"寿命"は延びていますが、めやすとしての書き込み回数の上限は存在します。

NANDフラッシュは、「セル」と呼ばれる1つの区画に1ビットの情報を記録しますが(SLC、Single Level Cell)、高集積化が進み1つのセルに2ビットを記録するMLC(Multi Level Cell)、3ビットのTLC(Triple Level Cell)、そして最近では4ビットのQLC(Quad Level Cell)が登場しています。

しかし、セルあたりのビット密度が増えると短期間に複数回書き込むことになるため、書き換え可能回数は少なくなります。制御技術を考慮しなければ、TLCの書き換え可能回数はMLCの10分の1ともいわれています。

スマートフォン向けNANDフラッシュは、これまでMLCが主流でしたが、ここ数年でTLCを採用する端末が増えています。どちらが搭載されているかユーザが見分けることは困難ですが、内蔵ストレージが大容量のモデルはTLC、小容量モデルはMLCという傾向があります。

もっとも、高速な揮発性メモリ(DRAM)をバッファーとして書き込み頻度を抑制したり、書き込みが特定のセルに集中しないよう平準化したりするなど、制御技術が進化しています。3、4年で機種交換されることが多いスマートフォンの場合、NANDフラッシュの"寿命"が尽きる前に買い替えとなるパターンが多そうです。

NANDフラッシュの種類によって書き換え可能回数に差があるものの、制御技術の進歩により影響は抑えられています(写真はイメージです)