早速だが、このピロシキを食べてみよう。

んん!?
これはカツレツとスクランブルエッグと白米!! 何だこのピロシキ!?!?

これは「カツ丼ピロシキ」(税込300円)というもの。その名でピンときた人もいるだろう。そう、2016年10月~12月に放送されていたテレビアニメ『ユーリ!!! on ICE』に登場した「カツ丼ピロシキ」がモチーフになったピロシキだ。実際にアニメを見ていた人は、「これ絶対うまいじゃん……」と思った人も多いだろう。筆者もそのうちの1人だった。

実際に食べてみると、しっとりと柔らかいヒレカツに卵、ご飯が口の中で合わさり、まさしくカツ丼そのもの! ちょっと甘めの玉ねぎもちゃんと入っており、大満足の味わいだ。アニメを見たときに思ったそのまんまの味だった。

さて、この「カツ丼ピロシキ」はどこで食べられるのかというと、埼玉県桶川市にあるコーヒーとロシア風家庭料理店「喫茶サリュート」だ。東京から少し離れたJR高崎線「桶川」駅から歩いて約15分。

外は風が強く、立っているだけで凍えてしまいそうな日だったのだが、中に入ると心から温まれる優しい空間が待っていた。

「喫茶サリュート」(埼玉県桶川市)

このメニューを開発したのは、同店のオーナーである武田直子さん。もともと20種類以上のピロシキを販売しており、1人で切り盛りしているようだ。せっかくなので少し話を伺ってみよう。

福田: 「カツ丼ピロシキめちゃくちゃおいしかったです! そもそもこれは以前から販売されていたんですか?」


武田さん: 「よかった~。これはですね、2016年の年末だったかな? いつも来てくださるお客さまからリクエストを受けたんですよ」


福田: 「ファンからの声から生まれた商品だったんですね! ちなみに武田さんは『ユーリ!!! on ICE』をご覧になりました?」


武田さん: 「見ました見ました。劇場版映画のような完成度でしたよね! なんでここまでやるのかしらって思っちゃいました」


福田: 完成度高いですよね!! 音楽、映像美、キャラクターの魅力をフィギュアスケートで全て表現している。ストーリーは王道だけど、演技中はついつい応援してしまうし、演技をミスするとああ! って声が出てしまうくらい引き込まれるアニメでした! ちなみに、武田さんはどのキャラクターが好きですか?」


武田さん: 「え、ええ……。やっぱり主人公の勝生勇利君ですね」


福田: 「そこはユリオ君(15歳のロシア人スケーター)じゃないんですか(笑)」


武田さん: 「ユリオ君はツンデレ系ですからね~」


福田: 「ちなみに僕はピチット・チュラノン君(20歳のタイ人スケーター)が好きです!」


武田さん: 「…………」


福田: 「…………。テ、テレビアニメででてきたメニューを再現するのって大変だったんじゃないですか?」


武田さん: 「かなり試作品を繰り返し作りましたね。カツ丼と同じ白ご飯、ロースカツ、卵を入れて、ピロシキを焼いてみても味は再現できず、卵かけご飯やヒレカツに変えたり、いり卵を入れたりして、ようやくカツ丼の味を再現できました」


グリンピースや甘く煮た玉ねぎも入っていた

福田: 「試行錯誤の方向がすごい。ここまで話を聞いてなんですけど、そもそもピロシキって何なんですか?


武田さん: 「日本で言うおむすびのようなものですね。パン生地の中には何を入れてもいい、スナックパン。米と違うのは、甘いものもしょっぱいものも相性がいいところです」


「喫茶サリュート」のピロシキは焼いている。手前が「プレーン」(税込240円)、奥が「アップルシナモン」(税込240円)

福田: 「なるほど、何でもパンってことですか。ピロシキって揚げているイメージだったんですけど、ここのピロシキは焼いて仕上げていますね」


武田さん: 「それはおそらくシベリア側のピロシキですね。ヨーロッパ側では焼くのが主流なので、こちらではそれに倣ってます」


「プレーン」(税込240円)にはキャベツとひき肉がたっぷりと入っており、小腹を満たすのにちょうどいい

福田: 「つまり、パン生地で色んなものを包んだものはピロシキと呼べるってことですね。それにしても、ここのピロシキは肉や魚介、スイーツと豊富だなあ。価格もどれも200円台でお得な気がします」


武田さん: 「近くに学校があるので、お客さまには中学生や高校生も多いですね。個人経営なのでちょっと怖がって入ってこられない子もいるようですが(笑)」


福田: 「こんなに温かいお店なのにもったいない! カツ丼ピロシキを聞いてたくさんの人が来てくれるといいですね」


武田さん: 「いろんな人に来ていただけるとうれしいです」


福田: 「本日はどうもありがとうございました!」


りんごがたっぷりと入った「アップルシナモン」(税込240円)は子どもも大人も大好きな味だろう


カツ丼ピロシキがあると聞きつけて行った「喫茶サリュート」。ここの魅力はピロシキだけでなく、オーナーの武田さんにあるのではと思わされた。終始ほがらかで話し上手。親しみやすく温かい女性オーナーだった。

そもそもカツ丼ピロシキを作ったのも、「お客さまに少しで面白がってほしい」という願いからだそうだ。そんなカツ丼ピロシキは、平日は10個、休日は20個程度用意されている。「わざわざ遠方から来たのになくなってた!」という事態を避けてほしいので、カツ丼ピロシキを求めて「喫茶サリュート」に行く際は、事前に電話連絡をしてほしい。

information
喫茶サリュート
所在地: 埼玉県桶川市末広2-6-17
アクセス: JR高崎線「桶川駅」から徒歩15分
営業時間: 9時~20時(モーニングは9時~11時、ランチは11時~15時)
定休日: 水曜日

桶川駅までの帰り道は明るいところを通ってほしいとのことで、わざわざ地図まで書いてくれた