iPhone SEの登場で、4インチのiPhoneの下位機種となるiPhone 5s。iPhone SEが端末デザインを変更しないことから考えて、当面iPhone 5sも併売されていくことになると思われる。

現在iPhone 5sは、米国においては、2年契約を前提に、16GBモデル/0ドル、32GBモデル/49ドル、SIMフリーモデルで16GBモデル/450ドル、32GBモデル/499ドルのデバイスとして販売されている。iPhone SEの16GBモデルがSIMフリーで499ドル程度(2年契約を前提に49ドル程度)で販売されることになれば、iPhone 5sはより低価格で販売することになるはずである。

この値下げは、途上国市場に対して、より低価格でiPhoneを販売するオプションを提供することにつながる。

例えばインドにおいて、Appleは2015年9月時点で4万4,500ルピーだったiPhone 5sの価格を、2015年12月に2万4,999ルピー(約370ドル)にまで引き下げている。iPhone SEの発売で、AppleはiPhone 5sをさらに値下げする準備があるのではないか、と考えられる。

IDC Researchによると、インドのスマートフォン市場規模は、2017年までに米国を追い抜くと予測されている。現在Appleのインドのスマートフォン市場におけるシェアは2%程度に留まっており、インドで人気のあるスマートフォンの大半は300ドル以下で販売されている。

Appleはブランドを保ちながら、低価格帯へのアプローチを行わなければならない。iPhone SEとiPhone 5sの値下げが、こうした新興市場でのAppleのシェア拡大へつながるかどうか、発売以降も注目していきたい。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura