Primeサービス2つの狙い

AmazonがPrimeを提供する狙いは2つある。一つはAmazonに利用者を定着させること。米国でお急ぎ便は8ドル-15ドルなので10回ぐらいの買い物で年会費分になる。標準便なら20回程度だ。もし映画のストリーミングサービスの契約を検討しているのなら、競合するオンラインストリーミングサービスは8ドル/月程度なので、Primeを契約したら映画・TVのストリーミングとAmazonで1回買い物をするだけで年会費分に達する。「それぐらいなら使いそう」と思わせる割安感。でも、契約したらAmazonのサービスを使わないともったいないと思わせる絶妙な料金設定で、Amazonにユーザーを引きつけている。

もう1つは、Amazonの進化を加速させること。有料会員になるぐらいだから、Prime会員は一般会員よりもAmazonへの関心が高く、まったく新しい種類のサービスや商品でも試してくれる可能性が高い。そこで同社は、Prime会員を新市場開拓のコアに位置付けている。例えば、Instant VideoやPrime Musicなどデジタルコンテンツの利用を促すサービスをPrimeで積極的に提供し、スマートフォン「Fire Phone」や音声アシスタント・スピーカー「Amazon Echo」といった新デバイスをPrime会員には最初から割り引き価格で販売している。Amazonが開発中のドローンを使った配達システムも名称が「Prime Air」となっているので、もし実現したらまずはPrime向けのサービスとして投入する可能性が高い。

11月に招待制の限定的な販売が始まった「Amazon Echo」

ドローンで荷物を配達するという奇抜なアイディアが議論を呼んだ「Prime Air」

2014年はAmazonの伸びに陰りも……

今年7月に発表したFire Phoneの売り行きが思わしくなく、7-9月期決算では市場予想を上回る赤字になって株価が急落するなど、2014年はAmazonの伸びに陰りが見えた年だったと言える。短期的な利益を犠牲にして長期的な成長に投資するAmazonの戦略に疑問符を付ける投資家も増えている。それでもAmazonが強気の姿勢を崩さないのは、米国においてAmazon支持者の規模を示すPrime会員が今も順調に増加しているからだ。利用者は利益ではなく、Amazonが提供するサービスや製品、同社のユニークさを評価する。熱心なAmazonユーザーの増加が、競争力のあるサービスや製品の投入、失敗のリスクもはらむ挑戦を後押ししている。Primeは、Amazonの進化の源泉になっている。