ソニーは17日、モバイル・コミュニケーション(MC)分野にかかる営業権1,800億円の全額を減損として営業損失に計上すると発表。合わせて都内で緊急記者会見を実施し、同社代表社長兼CEOの平井一夫氏が減損の要因やMC分野の事業方針を説明した。
17日に発表された2014年度連結業績見通しは、営業損益、税引前損益、最終損益(当社株主に帰属する当期純損失)のいずれも約1,800億円下方修正。最終損失見通しはマイナス2,300億円に上る。
詳細はニュース記事「ソニー、スマートフォンの苦戦で通期での最終損失見通し2,300億円に」に詳しいので、そちらをご参照頂きたい。
リスクに対して慎重な姿勢で臨む - 平井社長
同社は従来、MC分野の基本戦略として、マーケットシェアを追い台数の規模を拡大する戦略をベースとしており、中期計画でも売上高の大幅拡大を目指していた。
しかしMC分野における実績、事業環境の変化などを踏まえ、7月に計画を見直し。想定より将来キャッシュフローが減少する見通しとなっていた。
平井一夫社長は会見で、MC分野の中期経営計画見直しについて、「中国スマホメーカーの躍進などにより、普及価格帯の製品の売れ行きが当社の見通しとは大きく違ってしまったのが原因」と厳しい表情をみせた。
変更後のMC分野の戦略は、収益性を重視し、高付加価値ラインアップへの集中や普及価格帯モデルの削減なども視野に入れ、リスクの低下を図る。
平井氏は「リスクに対して慎重な姿勢で取り組み、リスクをコントロールできるものへ変更する。地域戦略を見直し、特に普及価格帯の製品を中心に見直すが、高付加価値も範囲に含まれる。地域戦略では成長性、収益性が見込める市場に対して投資を行い、収益性や成長性が乏しい国を見直す」と説明した。
2014年度は「無配」、上場以来初
また、2014年度の中間配当および期末配当が無配となることも発表された。同社が無配となるのは、1958年の東証上場以来、初めてのこと。
平井社長は、「上場以来初の無配となる状況を重く受け止めている。構造改革をやりきることに経営陣一同取り組んでいく。不退転の決意で業績を回復、復配し、ソニーを立て直す」と語った。
ソニー 2014年度(2015年3月期)中間配当 | |||
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決議内容 | 直近の配当予想 | 2013年度(2014年3月期)中間配当実績 | |
基準日 | 2014年9月30日 | 同左 | 2013年9月30日 |
1株当たり配当金 | 0円 | 未定 | 12円50銭 |
配当金の総額 | ― | ― | 12,970百万円 |
効力発生日(支払開始日) | ― | ― | 2013年12月2日 |
配当原資 | ― | ― | 利益剰余金 |
ソニー 2014年度(2015年3月期)期末配当 | |||
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決議内容 | 直近の配当予想 | 2013年度(2014年3月期)期末配当実績 | |
基準日 | 2015年3月31日 | 同左 | 2015年3月31日 |
1株当たり配当金 | 0円 | 未定 | 12円50銭 |
配当金の総額 | ― | ― | 13,046百万円 |
効力発生日(支払開始日) | ― | ― | 2014年6月3日 |
配当原資 | ― | ― | 利益剰余金 |
約1,000人の人員削減計画
会見では、2014年度中に、モバイル・コミュニケーション事業に従事する7,100人の社員のうち、15%に当たる約1,000人を削減する計画も明かされた。
平井社長は、年間20数%という成長をみせるスマホ市場を背景に、MC事業をイメージング(カメラ事業)やゲーム事業と並ぶ「重要なビジネス」と位置づけながらも、現在は厳しい経営状況にあるとコメント。「今年度は大規模な構造改革を実施しているが、収益力強化に向けた取り組みには手を緩めることなく、実施していく。社内では改革に向けた動きが加速しており、安定した収益基盤の上で、驚きと感動をもたらす新たなソニーの実現を確信している」(平井社長)。
また、2015年度に営業利益4,000億円の達成を目指し、「力強いソニーの復活の取り組みとして、変えることなくビジネスを組んでいく」とした。