プロセッサの微細化とは?

実際のところ、ユーザーが手にするのは「iPhone」や「iPad」というスマートフォンやタブレットといった完成品であり、中の部品の製造メーカーが変更されたからといって直接的な影響は受けない。ただ、TSMCで製造されるプロセッサは20nmという最新の製造プロセスのものであり、現行ハイエンドの「A7」が使用している28nmよりも微細化が進んでいる。

これが意味するのは「より省電力」「高パフォーマンス」「高機能」となる可能性が高いことで、ユーザーにとってのメリットは大きい。より省電力になれば「バッテリ駆動時間が長くなる」または「本体のさらなるスリム化」が進む。また微細化が進んでより多くのトランジスタを回路上に載せることが可能になるため、それをより高速処理が可能なパフォーマンス重視に振ったり、あるいは「4K動画再生のための専用回路」といった機能追加に振ったりと、できることが増えるようになる。

■微細化で考えうるメリット
・省電力によるバッテリ駆動時間の延長
・本体のスリム化
・高速処理化
・4K動画再生専用回路等による機能追加

これらはすべてプラスの効用だが、TSMC移管に不安がないわけでもない。問題の1つは「TSMCが最新プロセスで製品を安定供給するまで時間がかかる」という点で、過去にはTSMCの製造トラブルでAMDやNVIDIAといったGPUベンダーの製品出荷が遅れたり、Qualcommが需要に対して十分に製品を供給できず、プロセッサや通信チップを搭載できないスマートフォンの出荷が長期にわたって滞ったりと、とかくトラブルの印象がある。ファブレスの半導体メーカーがTSMCに製造を委託する過程で発生するトラブルであり、これが不安材料だ。

実際、すでに安定供給ができているSamsungからわざわざTSMCに乗り換えるという行為はこうした問題を内包している。だがAppleもこのあたりは熟知しているとみられ、かなり早い時期からA8の製造が始まっているという話がある。出荷は第2四半期からのスタートとWSJでは報じているが、製造自体は昨年末ないしは今年初旬にはすでに開始されており、半年近いリードタイムを確保して要求に応えていたようだ。その意味では、「iPhone 6の供給がプロセッサ不足でタイトになる」という状況は避けられる可能性が高い。