目下、スマートフォン分野で注目されるキーワードのひとつに「VoLTE」がある。LTE回線を利用した音声通話システムのことだが、その特徴はどのようなものなのだろうか。利用者にはどのようなメリットがあるのか。

VoLTEの特徴

VoLTE(Voice over LTE、ボルテ)とは、第3.9世代移動通信システムであるLTE回線を利用した音声通話システムのこと。LTEに対応した携帯電話/スマートフォンで音声通話する場合、LTEには回線交換網が存在しないため3Gネットワークに切り替えていたが(CSフォールバック)、VoLTEではその必要がない。VoLTEが実現されれば、データ通信はLTEで音声通話は3Gという二重構造が不要となるのだ。

エンドユーザにとってVoLTEのメリットは、音声品質の向上が期待できること。VoLTEの音声符号化方式(コーデック)には、既存の3Gで利用されているAMR-NB(Adaptive Multi-Rate Narrow Band)が必須コーデックとして規定されているほかに、より高音質なAMR-WB(Adaptive Multi-Rate Wide Band)も用意されている。サンプリング周波数はAMR-NBの8kHzに対しAMR-WBは16kHz、ビットレートもAMR-NBの最大12.20Kbpsに対しAMR-WBでは最大23.85Kbpsと、その情報量の差は大きい。ビットレートなど条件はそのときの通信環境や端末により変わるが、おおむねPHSと同等以上の音質と考えていいだろう。

CSフォールバックとVoLTEの違い(NTTドコモが情報通信審議会 情報通信技術分科会に提出した資料より)

低遅延もVoLTEのメリットといえる。LTEにはQoS(Quality of Service)制御機構があり、そのパラメータ(QCI)には帯域制御の有無や遅延許容時間などに応じて9段階の優先度が設けられているが、VoLTEではそのうち遅延許容値が100msかつ帯域保障型の通信が行われる。LINEなど一般のIP通信として扱われる音声通話は遅延が200~400ms前後とバラつきがちで、帯域保障がないうえ時間帯など条件に左右されることから、VoLTEのほうが有利だ。

キャリア側には、電波の利用効率アップというメリットがある。3Gに切り替えるCSフォールバックでは通話先までの伝送路が通話中占有されてしまうが、パケット通信で音声データをやり取りするVoLTEでは効率よく周波数帯域を利用できる。そしてVoLTEへの移行が進めば、3Gの回線設備を維持し続けるコストを減らすことができ、回線に余裕が生じれば現在3Gが使用している周波数帯域をLTEに割り当てることも視野に入るというわけだ。