日本のご当地グルメ界で、絶大な人気を誇るもののひとつがカレーだ。肉、魚、野菜とどんな食材もカバーできる魔法の料理で、新商品も開発しやすい。今回紹介するのも、昨今、岐阜県の奥美濃地方で誕生したカレー。その名も「奥美濃カレー」だ。
名水を生かした地物と味噌が条件
この地方は水がうまい。当然、米も野菜もうまい。牛も鶏も豚も豊富だ。食材のポテンシャルが極めて高い地域であり、カレーにする具材の宝庫なのだ。
奥美濃カレーのルールは、地元産の味噌を使うこと。あとは地元の食材を使えばOKだ。地元では各店がオリジナルの奥美濃カレーを開発してしのぎを削っている。ちなみに、奥美濃カレーのプロジェクトを紹介するwebサイト上では、実に30近くの店舗が紹介されている。その中から、口コミで人気の数店舗を紹介しよう。
トマトの酸味、地元のどっさりきのこ
最初に紹介するのは、「レスト&喫茶メイホウ」。この店の奥美濃カレーは、地元名産のトマトケチャップをカレーに煮込んだ一品の「きのこカレー」(700円)である。「コクのある郡上味噌に加え、酸味と甘さがあるトマトケチャップの味がカレーの風味を深くさせているんです」とはスタッフの国田美保子さん。
食べてみると、トッピングされた地元名産「明宝ハム」の角切りが口の中で強く主張する。さらに、地元でとれた野菜やキノコをがっつり食べられるボリューミーな一品なのだが、ヘルシーなのでダイエット中でも安心。奥美濃ならではの食材の奥深さをかみしめられるカレーである。
●Information
レスト&喫茶メイホウ
岐阜県郡上市明宝大谷1015
堤防を境に、カレーと鶏ちゃんが並ぶ
次に紹介したいのは、奥美濃カレーの本丸・白鳥町の店である。「レストラン日高」では、奥美濃地方に昔から伝わる、味噌や醤油で味付けした鶏肉を季節の野菜と炒める料理「鶏(けい)ちゃん」と、奥美濃カレーのコラボレーション「古地鶏ケイチャンとビーフカレー(850円)が人気だ。
皿の中央にご飯が堤防を作り、左右にビーフカレーと鶏ちゃんが盛られている、インパクト大なカレーである。必須となっている郡上味噌は、直接カレーの味付けに使っていない。「味噌は、鶏ちゃんの味付けに使っています」と店主の角(かく)義隆さん。
鶏ちゃんには、郡上味噌に加えて11種類の香辛料をブレンド。カレーは5時間仕込んだ店伝統のビーフカレーだという。カレーと鶏ちゃんを食べる直前に、スプーンで合わせることによって、郡上味噌とカレーが合体して奥美濃カレーになるという逸品なのである。
「いろいろ試しましたが、素材をあらかじめ混ぜると、味がぼけてしまうんです。直前に合わせることで、互いの味が引き立つんですよ」。なるほど。「鶏ちゃんは、ビールのつまみにもなります。飲んだ後のシメがカレーというのもいいですよ」と、店主よりコメントを頂いた。
●Information
レストラン日高
岐阜県郡上市白鳥町白鳥9-3
エスニック風のカレーをガーリックライスで
最後に登場するのは、大和町の洋食店「じぇいあん」。「カレーに郡上味噌を加えることでコクとうまみが出ます。塩分は味噌の塩加減だけで調整しています」と店主の佐藤実さん。この店の奥美濃カレーの特徴は、ライスがガーリックライスだということ。その名も「ガーリックライスカレー」(900円)。ニンニクの風味が食欲をそそる。これが、味噌入りのカレーと絶妙な相性なのだという。
しかも、ガーリックライスに使用されている米は、じぇいあん自家用の減農薬コシヒカリ100%。ほのかな甘みを感じられる米が、ニンニクの主張をやさしく包み込む。ちなみに、客に提供する前に「秘密のひと手間」を加えることで、カレーの香りがより引き立っているとか。ひと口頬張ると、エスニック風の複雑なスパイスが鼻腔を刺激する。同時に、郡上味噌のまろやかなおいしさが口いっぱいに広がったかと思いきや、ガーリックライスのパンチが押し寄せる。
「地域おこしを目的に誕生した奥美濃カレーですが、一過性のブームで終わらず、すっかり定着しています。今後も、街全体で団結して、この味を守っていきたいですね」と佐藤さん。地元の食材たっぷりのおいしさを、是非一度は現地で味わってほしい。
●Information
じぇいあん
岐阜県郡上市大和町剣254-11