今朝の新聞でNTTドコモのiPhone販売報道が流れ、同社が「当社が発表したものではございません」とコメントするややこしい状況の中、「もし、ドコモの契約数をソフトバンクが追いつくとしたら、それはいつなのかを大胆に予想する」というミッションが下されましたので、TCA(電気通信事業者協会)が出している数字に個人的所感を交えつつ考えたいと思います。

事業者別契約数

契約者数の増加から見るとやはりiPhone発売がカギになるのか?

2008年7月にソフトバンクがiPhoneの発売を開始しましたが、この時のTCAの事業者別契約数を見ると、ドコモが5,486万4,100件に対し、ソフトバンクは2,095万6,200件と2倍半近くの差があります。ただし、純増数はドコモが9万4,200件だったのに対し、ソフトバンクが21万5,400件と倍以上。もちろん、このころはまだ誰もがスマートフォンという時代ではありませんが、新入学・就職シーズンがひと段落して新規契約件数が落ち込むはずの6月でソフトバンクは先月よりも12万件も契約数を伸ばしています。

一方、ドコモが初めてスマートフォンを発売したのは、1年遅れの2009年7月。日本初のAndroidスマホ「HT-03A」です。しかし、iPhoneほど劇的な変化はなく、逆に6月の純増数が16万4,600件なのに対して、7月は14万3,600件と逆に落ち込む結果。

2009年から2010年ごろまでは、「一部のMacファンやガジェット好きがiPhoneとソフトバンクを支持しているだけ」という空気だったかと思います。「どうせ、みんな携帯の方を選ぶんだろ」的な。そんな空気がガラッと変わってくるのが、2011年あたりから。Androidスマホのラインナップも充実してきて、携帯からスマホに買い替えが当然の選択になってきます。

iPhoneを販売しなかったからドコモは劣勢だったのか?

ただ、スマホの選択肢は増えども、「初心者ユーザーや女性に優しいiPhone」というイメージは大きいな、と思います。また、マスコミに大きく取り上げられるということでiPhoneを選ぶ人は多く、結果的にAndroidだけのドコモが苦境に立たされることに。実際、KDDIがiPhoneの発売を開始した2011年10月の契約数を見ると、ドコモが8万9,600件なのに対し、ソフトバンクが24万7,600件、auが19万6,900件と、2キャリアの後塵を拝す結果になっています。

そして2012年9月、ソフトバンクとKDDIがiPhone5を発売し、LTEを開始した時、ドコモは純増者数においてソフトバンクとKDDIの間に大きな溝ができてしまいました。契約者数は依然トップであるものの、純増者数は2キャリアを抜けずにいます。また、2012年11月、2013年1月、6月は純増者数がマイナスという結果に。

さて、この状況がドコモからiPhoneを出すことで変わるのでしょうか? ネガティブな要素とポジティブな要素両方あります。ネガティブな要素は、iPhoneを持ちたい人がすでに他キャリアに転出したのでは、ということ。また、ポジティブな要素としては、現時点でドコモからiPhoneにするために他キャリアに転出した人がつながりやすさを求めて、ドコモに戻ってくるということが考えられます。

また、ドコモにはiモードを使用していた大人世代や、電電公社からよく知るシニア世代コアユーザーが「メジャー感があって安心して使える」というイメージを持っているため、子供や孫がiPhoneを持ちたくなった場合に選択肢として、ドコモで契約するという状況もありそうです。

ソフトバンクがドコモを追い越すのは10年先? ……だけど

新iPhoneの発売が話題になっていることもあり、iPhoneの存在を軸に契約者の傾向と今後を説明してきましたが、いよいよ本題の「契約者数においてソフトバンクはドコモをいつ追い抜くのか」について。なかなか難しいところであります。確かに純増数は2キャリアに負け続けていてマイナスになることもなりますが、いかんせん2013年8月現在の契約数はドコモが6,183万8,800件、ソフトバンクが3,379万4,800件と、2,800万件以上の大差があります。価格やサービス品質に劇的な差が出ない限り、すぐにソフトバンクの契約者数がドコモのそれを覆すことはないかと思います。

TCAの数字のみ追っていけば、今のペースだとソフトバンクがドコモを追い抜かすのは10年や15年先になるかと。ただし、ドコモのスリートップ戦略や、もしかしたらのiPhone販売、KDDIのマルチバンド戦略、さらには新iPhoneに対抗してGoogleが世界的に人気のお菓子「キットカット」とのタイアップなど、今のスマホ市場は明日には何が起こるかわからない展開になっています。

総務省によると今や高校生の84%が所有と、若年層も持つのが当たり前になりつつあるスマホ。これまでの大人ユーザーとは違う視点でのキャリア選択や購入もありえるので、今後のスマホ市場の推移から目が離せないところです。