また、こうした対策に引き続き、ネットワークの強化も継続する考えだ。今回のiPhone 5s/ cは、同社の900MHz帯のLTEもサポートしている。現在は3G向けに提供されている「プラチナバンド」だが、来春から順次LTE化し、そこでさらに「トリプルLTEになる」ことが大きなポイントになる。

現在は、既存のMCA無線やRFID機器・システムといった利用者の移行を進めているところで、これが2014年3月末までに終わる予定になっている。とはいえ、移行が遅れる場合もあり、同社では4月1日から順次LTEサービスを提供開始、という表現になっているが、いずれにしても提供できるエリアでは一気にLTE化を進めていく方針だ。

KDDIの場合、iPhone 5s/cが対応するLTE周波数帯は800MHz帯・2.1GHz帯で、帯域幅は10MHz幅×2。ドコモは2.1GHz帯がメインで20MHz幅。800MHz帯はまだ少ないが、1.7GHz帯が本格導入の際には「40MHz幅を持ってくると思う」と宮川氏は語る。

また、1.7GHz帯・2.1GHz帯で20MHz幅×2の帯域幅でスタートするが、900MHz帯がさらに20MHz幅となるので、全体の周波数のリソース割り当てが1.5倍になることで、さらにネットワークに余力が出てくると見込んでいるとのこと。ただし、iPhone 4SからiPhone 5に変わってLTE通信に対応したことで、トラフィックは1.5倍から2倍近くまで跳ね上がり、現在も伸び続けているという。CPUが高速化しただけでも、利用率の向上のためか、上昇するそうだ。そのため、iPhone 5s/cの発売でもトラフィックが延びることを予想。それで接続率が低下していかないことを目指す考えだ。

iPhone 3Gの導入時には、周波数割り当てが少なく、トラフィックの増加を見越して取り扱いの反対論もあったそうだが、「やると決めたらやるしかない」(同)ため、セルスプリットを行って基地局を増やし続けて当時はしのいだと振り返る。

だが今回は、周波数のリソースは確保してあるので、LTEの帯域を倍増化させる方針だ。イー・アクセスはまだ「1万局程度」(同)と基地局が少なく、ソフトバンクは3Gだけでも3万局の基地局を持っているため、まずは同程度まで基地局を増やす計画。ちなみに、イー・アクセスのLTEサービスの帯域幅の半分をダブルLTE向けに割り当てたソフトバンクだが、現存のユーザーの通信は、2.1GHz帯対応端末を使えば、ソフトバンク側で引き受けることができる。特に通信量の多いユーザーを2.1GHz帯に引き込むようにしており、「全体としては、スループットは向上しているはず」と宮川氏は言う。

さらに「普通に考えれば、(中国最大手の通信事業者の)China MobileもTD-LTEを入れているわけだし、(iPhoneの)将来のモデルではどこかでAXGPが入る可能性は十分にある。必ず戦力になる」との認識だ。これに加え、「もう一手ある。次の一手までは計画している」と話す。この一手は説明されなかったが、「来年いっぱいぐらいまでの計画は見えている」と言うことで、今後のネットワークの改善に自信を見せる。

「準備万端なので、そんなに焦っていない」と宮川氏。KDDI側の主張に対して反論する形ではあるが、「田中社長がネットワークのことを話すから出てこなくちゃいけなくなった」と宮川氏は漏らしつつ、他社に「負けていない」点は強調する。

さらに、今後LTE-AdvancedやVoLTE、キャリアアグリゲーション(CA)といった新技術も投入するが、この3つの技術でさらに周波数の利用が「楽になる」という認識で、「(導入が)一番になるつもりはないが、他社に遅れないように開始する」(同)考えを示している。

この説明の間、宮川氏が一番気にしていたのは、「ネットワークは改善されているのに、評価が低いのはなぜか」という点だ。データとして改善率は向上しており、さまざまな対策も導入している。しかし、「ネットワークで一番はドコモ、次いでKDDI、さらに下にソフトバンクというイメージ」が払拭できない、という悩みを吐露する。

そのため、今回も他社データを含めて出しつつ、自社のネットワークの現状と改善策を詳細に説明しアピールする宮川氏。今後も、接続率の改善を続け、ユーザーの満足度を向上させるネットワーク作りを目指していく意向だ。