30階建て以上のビルが立ち並ぶ香港のビジネス街・セントラル。ランチタイムになるとどこの飲食店も大行列なのだが、「春回堂薬行」(8 Cochrane Street,Central、営業時間:9時~19時30分、定休日:日曜日)という薬局にも、なぜかビジネスマンが行列を作っている。お目当ては店頭で販売されている謎のドリンク。現地の人いわく、食後にはこの一杯が欠かせないのだとか。一体どのようなドリンクなのだろう。

次から次へとなくなっていく「春回堂薬行」の人気ドリンク

24種の漢方をブレンド

現地の人が飲んでいるのは「廿四味涼茶」(7香港ドル 約80円)。"廿四"は24のことで、その名の通り24種類の漢方薬から作ったお茶で、中国に昔から伝わるスペシャルドリンクである。ちなみにこの春回堂薬行も1916年創業と、漢方薬の名店だ。

香港では、脂っこいものを食べたりイライラしたりすると身体に熱がこもり、体調を崩しやすくなると言われているそう。体内にたまった余分な熱を取り払うのに、涼茶がよいとされている。特に「廿四味涼茶」に関しては、美肌や解毒、ガン予防といった効果を期待して、現地の人は飲んでいるようだ。店頭には次々とビジネスマンが立ち寄り、紙コップに入れられたドリンクを一気飲みして立ち去っていく。まるで、無料の試供品を配っているかの勢いで、たくさんドリンクを並べてもすぐになくなっていくほどの人気ぶり。

コーヒーのような黒い水色のこの飲み物、"良薬は口に苦し"というはこういうことを言うのだろう。様々な漢方薬の匂いが強烈に漂い、もちろん苦味もある。二口目をためらいつつ、現地の人たちはこれをおいしいと思って飲んでいるのだろうかと疑問に思った。

「廿四味涼茶」は7香港ドル(約80円)とお手頃価格。コーヒーのような水色だが味は……

薄オレンジ色のドリンクは「アメリカ人参茶」。熱を冷ます、唾液を増やす、目を覚ますという効果があるのだとか。絶大なる人気を誇っているのは「廿四味涼茶」の方だった

そこで、ガブガブ飲んでいる現地の人々に「おいしいんですか? 」と聞くと、「まずい! まずいけど身体にいいんだ!! 」と言って目をつぶりながら、一挙に飲み干す。自分と同じ感想を抱いていることになぜか安心感を覚えつつ、私も最後までゴクゴクと飲み干した。まずいのに超人気のこの漢方ドリンク、観光の合間のエネルギー充填にオススメしたい。