スマートフォン出荷量の世界シェアはここのところ1位サムスン、2位ファーウェイ、3位Appleという状況が続いています。毎年第4四半期(10月-12月)は新型iPhoneを発表したAppleがシェア1位を奪回するのも恒例のこと。ところが今年の第3四半期(7月-9月)、なんとシャオミがAppleを抜いて世界シェア3位になりました。

シャオミはスマートフォン以外にスマートウォッチやスマートTVなども手掛けており、今や総合的なIoT製品を扱うメーカーになっています。しかしスマートフォン世界シェア3位になれた理由は、それらIoT製品だけを展開しているからではありません。

  • 世界シェア3位になったシャオミ

    世界シェア3位になったシャオミ。その理由は意外なところにあった

日本でもシャオミのスマートフォンは販売されており、低価格モデルが話題になってはいるもののまだまだメジャーな存在ではありません。一方、海外ではシャオミが国内シェア上位に入っている国もあります。中でもインドはシャオミが1位の座をずっとキープしています。IDCの調査ではインドのスマホシェアは1位シャオミ、2位サムスン、3位Vivoと続きます。

  • シャオミはインドで1位をキープしている

インドでシャオミが人気なのは、日本でも2万4,800円で発売中の「Redmi Note 9S」に代表される、カメラ画質が高く、低価格のRedmiシリーズが人気だからです。IDCによるとインドのスマートフォン平均価格は156ドル(約1万6,000円)。インドで売れたスマートフォンの84%が200ドル(約2万1,000円)以下のモデルで、29%は100ドル以下、なんと1万円以下です。

  • インドで大人気のRedmiシリーズ

しかしスマートフォンが安いだけでは人気を維持するのは厳しいのが実情です。サムスンも最近は低価格なGalaxy Mシリーズを投入して巻き返しを図っています。またOPPOから独立したRealmeもあっという間に急成長し、インドでシェア5位以内に食い込んでいます。

シャオミの強みはスマートフォンだけではなく、スマートスピーカーからスマートフォン連携の扇風機など、数多くのIoT製品に着手していること。さらにTシャツやボールペンなど生活雑貨までも展開しています。中国のシャオミのストアに行くとここがスマートフォンメーカーの店舗であることを忘れてしまうほどです。日本でも炊飯器やスーツケースを出しています。

  • 炊飯器も売っているシャオミ。もちろんスマホから操作できる

そんなシャオミの「非・スマートフォン製品」は世界各国で販売されていますが、インドでは、インド向けの製品や、インドならではのプロモーションを行って消費者の心をわしづかみにしています。たとえばサッカーチーム、FC Goaのスポンサーになっており(2018-2019年)、そのオフィシャルシャツを販売しています。シャオミが服を売っているわけです。オンラインストアの製品ページにはこんな写真が出ています。サッカー選手が集まってセルフィーをしているのです。

  • 男性がセルフィーするのが当たり前のインドならではの写真

インドはセルフィー大国なのですが、残念ながら、毎年多くのセルフィーによる事故が起きています。セルフィーで事故を起こした人の割合は男性が8割以上だったとの調査結果を受けてのことなのでしょうか、シャオミインドのオンラインストアでは、セルフィースティックの商品ページのモデルは男性が務めています。

  • セルフィースティックのモデルも男性

このようにインドの消費者が好むような製品を投入し、さらにプロモーションもインド向けにすることでシャオミは人気を高めていったのです。シャオミの人気製品、格安なバックパックもインド向けには撥水仕様の特別モデルが販売されています。雨の多いインドならではの製品で、シャオミの「Mi」ロゴがワンポイント。価格はわずか299ルピー。日本円で420円です。桁を一つ間違っていると思うかもしれませんが、500円硬貨1枚でおつりがくるのです。こんなに安くてファッショナブル、そして実用性があれば誰もが買ってしまうでしょうね。

  • 420円のシャオミバック。撥水処理で実用性も高い

他にも899ルピー、1,280円(1万2,800円ではありません)で出しているサングラスはまるで女優を思わせるかっこいいイメージで売り込みを図ります。シャオミはスマートフォンメーカーですが、総合的なライフスタイル製品も多数展開してファンを増やしているわけです。

  • サングラスはインドで必需品。格安なのにかっこいい

ちなみに中国のシャオミストアの同じサングラスの紹介はこのような写真が使われています。サングラスが必需品ではない中国だけに、若者に売り込もうとしているもののアピール力は弱いですね。

  • 同じサングラスが中国ではこのような感じで売られている

シャオミはスポーツシューズまで作っています。もうなんでもありですが、シャオミが目指しているのは「スマートフォンはiPhoneを持っていても、身の回りの物、TVや扇風機、ケーブルやマウス、そして洋服はシャオミのものを買ってもらう」ことなのです。

  • シャオミのスポーツシューズ。値段は1,499ルピー、約2,200円

中国のみならず香港や台湾のシャオミストアへ行くと、100円のボールペンまで売っており、しかもシャオミのロゴがしっかり入っています。スマートフォンを買わずとも、生活雑貨を見に行くだけでも楽しいのです。このように「シャオミの製品は楽しい」と思う消費者を増やしたことで、スマートフォンの購入者も増えていったわけです。世界シェア3位はいきなり成れたものではなく、製品展開を多岐に広げていった結果なのです。

日本ではまだスマートフォンもライフスタイル製品もわずかしか出していないシャオミですが、手軽に買える生活雑貨を出せばシャオミのファンも増えることでしょう。そしてそれらが購入できるシャオミのリアル店舗を日本でぜひ展開してほしいものです。

  • スマホ以外の製品も並ぶ海外のシャオミストア。日本にも欲しい