NTTドコモとカプコンは、『ストリートファイターV CE』を使ったeスポーツリーグの新シーズン「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2021(SFL)」を、eスポーツブランド「X-MOMENT」として開催すると発表しました。
「X-MOMENT」は、『PUBG MOBILE』のリーグ戦「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE(PMJL)」や、『レインボーシックスシージ』のリーグ戦「Rainbow Six Japan League 2021(RJL)」、『リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト』のトーナメント戦などを展開するeスポーツ大会のブランド。今回の『ストリートファイターV CE』のSFLが4つめのタイトルで、初の対戦格闘ゲームの採用です。
リーグ本節は10月から12月の開催を予定。8チームのうち上位3チームが参加できるプレイオフを1月に開催し、グランドファイナルにて優勝チームが決まります。また、グランドファイナルの上位チームは、北米で行われるUSリーグの上位チームと戦う「ワールドチャンピオンシップ」の出場権を手にします。
「ストリートファイターリーグ」は、X-MOMENTで新たに企画された大会ではありません。カプコン主催で2018年より開催されており、国内で3人1組の6チームが対戦するリーグ戦や、リーグ上位チームがUSチームと対戦する世界大会も行われました。
これまでのストリートファイターリーグは、リーダーとなる選手の名を冠したチーム名での対戦となっていましたが、X-MOMENTブランドで開催する「ストリートファイターリーグ:Pro-JP 2021」からは、企業によるチームオーナー制になることが発表されました。
チームオーナー制に変わり、8企業が名乗りをあげた
参加するのは、「KADOKAWA Game Linkage」「グッドエイトスクアッド」「再春館システム」「Sun-Gence」「忍ism」「DouYu Japan」「TOPANGA」「名古屋王者」の8企業。メンバーは、基本的にチームに所属している選手がそのまま参加するようですが、チームに所属している選手が4名以下、もしくはストリートファイターV部門が創設したばかりで、選手が登録してないチームは、ほかのチームから選手をレンタルしたり、8月に行われるドラフト会議によって参加選手を決定するようです。
「KADOKAWA Game Linkage」は、eスポーツチーム「FAV Gaming」を運営する会社。sako選手とりゅうせい選手の2人が以前より所属しています。さらに、ときど選手とボンちゃん選手を招聘し、チーム名も「v6プラス FAV Rohto Z!」としています。
「グッドエイトスクアッド」は、eスポーツチーム「Good 8 Squad」を運営する会社で、ガチくん選手、カワノ選手、ぷげら選手の3名が加入し、チーム「Laplace」所属のキチパ選手の参加も発表されています。元々ガチくん選手とカワノ選手のマネジメントをしていたので、新チームとしての立ち上げながら、急造チームではないと言えるでしょう。
「再春館システム」は、新たにeスポーツチームを発足し、ネモ選手が中心となって活動する予定のチーム。チーム「AXIZ」よりShuto選手がレンタル移籍の形で参加しています。現在はこの2名のみで、残りの2名は8月に開催予定のドラフト会議で補充されます。
「Sun-Gence」は、老舗eスポーツチーム「DetonatioN Gaming」を運営する会社。所属の板橋ザンギエフ選手、ナウマン選手、竹内ジョン選手に加え、「バーニングコア」の立川選手が参加しています。ナウマン選手、竹内ジョン選手、立川選手は20代前半。『ストリートファイターV』で活躍する若手選手です。
「忍ism」は、プロ選手でもあるももち選手がオーナーを務めるeスポーツチーム。オーナーのももち選手と、藤村選手、ひぐち選手、大谷選手の同一チームでの編成です。対戦格闘ゲーム系のeスポーツチームとしては歴史が長く、チームとしての一体感は他の追随を許さないでしょう。ももち選手、藤村選手のベテランと、ひぐち選手、大谷選手の若手という組み合わせで、バランスのいいチームです。
「DouYu Japan」は、動画配信サイト「Mildom(ミルダム)」を運営する会社。「Team Mildom Beast」のウメハラ選手とふ~ど選手の2名が参加しています。2選手ともストリートファイターシーンを牽引してきたベテラン選手で、実力の高さも折り紙付き。残り2人はドラフト会議によって、補充する予定です。
「TOPANGA」は、eスポーツイベントや配信を行う会社です。eスポーツチーム「魚群」の運営もしており、チームメンバーも魚群所属のマゴ選手、まちゃぼー選手、モケ選手、水派選手の4人。2020年はまちゃぼー選手がウメハラゴールドに参加していましたが、今シーズンは、「TOPANGA」のチームに参加します。
「名古屋王者」は、『Shadowverse』のプロリーグに参加しているeスポーツチーム。ほかにサッカーゲームの『FIFA』や対戦格闘ゲームの『BLAZBLUE』部門などがあります。この度、『ストリートファイターV』部門が新たに発足。とはいえ、主力メンバーは、ほかのチームに所属している2選手で、急造チーム感は否めません。メンバーは、「CYCLOPS athlete gaming」所属のどぐら選手と、「Team GRAPHT」所属のMOV選手。残りはドラフト会議にて補充する予定です。
なお、2020年のストリートファイターリーグでは、「モモチスプラッシュ」が忍ism、「マゴスカーレット」がほぼ魚群での編成となっていました。今回はこれに加えて、「DetonatiN Gaming」や「FAV gaming」などもあり、チームの特色を感じられるリーグ戦になりそうです。
これまでのリーグ戦では、毎年ドラフト会議によりチーム編成を行っていたため、チームとしての存在感があまりありませんでした。良く言えばドリームチーム感、悪く言えば寄せ集め感といった印象。今シーズンからはチーム戦が基本となるシューティングゲームやMOBA系のプロシーンのように、チーム自体の応援ができそうな気がします。新規参入である再春館システムもネモ選手とeスポーツ事業の協業契約も締結しており、ネモ選手のカラーが出るチーム作りに期待したいところです。
ドコモの5G回線は配信にどう活用されるのか
また、「X-MOMENT」となることで期待できるのは、報酬や賞金額です。PMJLは、賞金総額3億円に加えて、選手の最低年俸350万円という好条件でした。試合数や試合期間から考えてそこまでの金額にはならないと思いますが、それでも昨シーズンのストリートファイターリーグ以上の報酬が用意されるのではないでしょうか。
ほかにも、IPホルダーではないX-MOMENTが主催することで、スポンサーの獲得などにも期待が持てます。ゆくゆくはリーグ戦そのもの、もしくはグランドファイナルに冠スポンサーが付くことも考えられるでしょう。
変更されそうなのが、試合の配信です。昨シーズンは、無観客ながら選手が会場入りして対戦していましたが、現時点だと選手もリモートで参加する可能性があります。もしかしたら、実況解説もリモートで行われるかもしれません。2020年は録画した動画の配信でしたが、リアルタイムのストリーミング配信に戻る可能性もあるでしょう。
ストリーミングの魅力は、やはりライブ感が出ること。配信とはいえ、盛り上がりがダイレクトに伝わります。
ただし、イベントのライブ配信では、トラブルがあった場合、30分、1時間程度の待ち時間が発生することもあるので、それらをすべてカットできる録画配信にもメリットがありました。実況解説、インタビューなどにテロップが付け加えて、理解しやすくなる点もありますし、次回予告のハイライトも配信の終盤に挿し込むことも可能です。
そのため、どちらが優れているとは言えないでしょうが、特性に合わせた配信がされれば、さらに盛り上がることでしょう。
そのほか、NTTドコモの発表会では、スマホの5G回線を利用し、選手の表情や試合後のインタビューなどを、ゲームのオンライン対戦とは別に配信すると話していました。
eスポーツイベントの配信は、ゲーム画面だけだとどうしても試合感が薄れてしまいます。選手の表情を映し出すことで、より選手同士が戦っていることを感じられるので、オフラインのイベントでは必ず選手の顔が配信画面に入っています。リモートでの対戦となると、顔を映し出す為の環境、ウェブカメラなどの機材が必要となるため、ゲーム画面だけになる大会も少なくありません。5G回線のスマホであれば、特別な機材も必要なく、遅延の少ないリアルタイムな映像を送れるので、まさにうってつけと言えます。
今回は第一報ということで、詳細までは発表されませんでしたが、ドラフト会議のある8月までにはより詳しい情報が発表されると思います。