新800MHz帯/2GHz帯のマルチバンド化で、基地局数は旧800MHz帯の頃と比べて約2.6倍に、カバーエリアは20%向上。東京23区だけでは、基地局数は約4倍まで拡大したという。この基地局拡大も、「単純に基地局を増やすと容量は増えるが、最適な数や位置がキモになる」(西山氏)ため、以前の「解像度の低いエリアシミュレーション」(西山氏)ではなく、3Dマップを使ったエリアシミュレーションや最適な基地局設置場所の選定、エリアの調整を行っているそうだ。

エリアは拡大を続けて、観光地などもエリア化できた

3Dマップによるエリアシミュレーションなどによって、よりきめ細かい基地局設置ができるようになった

解像度が低いシミュレーションでは分からなかった路地裏のような場所も、新たにエリア化できるようになった。地図は東京・大久保と新大久保間

通信品質の悪い場所は、品質情報解析システムを使うことで素早く把握し、ユーザーからのクレームがくる前に能動的に 改善するようにしているという。こうした取り組みによって、混雑することの多い都内駅周辺などで順調につながりやすさや途切れにくさが改善されており、同社調査では、他社と比べても良好な通信環境を実現できている、という。

さまざまな情報によって集められた品質情報を一元管理する解析システムによって、より素早い対応を行っているという

そのほか、新800MHz帯/2GHz帯というマルチバンド環境では、ハンドオーバーや干渉の問題などが発生するため、「ネットワークと端末の動作を含めた調整が必要」(西山氏)であり、これまでのエリア構築や端末チューニングのノウハウも蓄積してきたことで、今年12月にも開始を計画しているLTEエリアの構築にも活用できる、としている。

エリア改善の例

無線LANスポットと同様、「生活動線上の通信品質の強化」を目指しており、要望の多かった地下鉄駅間は、都内でも3月から携帯事業者共同でのサービスが一部で開始されており、2012年度中に都内地下鉄駅間をエリア化する。

地下鉄駅間のエリア構築だけでなく、地上区間を含めて走行中の電車内でのハンドオーバーも確実に行えるように配慮している

2006年から07年にかけて西山氏は、周波数再編が始まってハンドオーバーなどがうまくいかず、「品質が悪くなったといわれた」が、順次改善を続けて「かなりよくなった」という認識を示す。ただ、高層住宅などでまだ不備があるとみており、auへの連絡で電波状況を確認・改善を図る作業も続けていき、「(つながらないとの)クレームに対して、100%に近いところまで答えられるようにしていきたい」(西山氏)考えだ。

自宅での品質の向上には、ユーザーからの問い合わせに素早く応じる体制を整えているほか、フェムトセルも活用していく

「5年以上かけて、周波数再編と品質向上に心血を注いできた」と西山氏。現在の通信品質に自信を見せるとともに、3Gだけでなく固定回線や無線LANを使うなどのマルチネットワークによって、今後のさらなる品質向上にも意欲を燃やしている。

フェムトセルの実機

(記事提供: AndroWire編集部)