敗退者向けには本社内見学などの特別コンテンツも

一方で特別コンテンツに進んだ選手たちを対象に行われたのは、現役社員のトークショーや半導体製造装置メーカーの仕事見学などといった特別プログラム。社員トークショーでは、年代・仕事内容が異なる3名のディスコ現役エンジニアが登壇し、自らの学生時代やキャリアについて振り返りながら学びにつながるトークを展開。出場者、特に学生選手にとってはより身近な“先輩像”にもなることから、集中して耳を傾ける参加者もいれば、鋭い質問を投げかける選手もいるなど、充実した内容となった。

  • ディスコ社員によるトークセッション

    ディスコ社員によるトークセッションの様子

またディスコの現場見学では、実際の半導体製造装置が稼働する様子や、それを支えるソフトウェアの詳細など、なかなか見られない4コンテンツを公開。特に、直径1mmにも満たないシャープペンシルの芯に格子状のカットを施すデモンストレーションでは、見学した選手たちも驚きの声を上げながら食い入るように熱い視線を向けていた。

  • 装置見学の様子

    装置見学では出場者たちが実際に動く半導体製造装置を食い入るように見つめた

  • シャープペンシル芯への加工実演の様子

    直径わずか1mm以下の物体に正確な加工を施す精密さには驚きの声も上がった

さらにトークセッションや見学を終えると、商品を懸けたクイズ大会、そして選手同士の懇親会も開催。同じ難問に取り組んだライバルたちは、予選の振り返りや反省などさまざまな会話に花を咲かせた。こうしたプログラムが終了すると、選手たちには再び予選を行った大会会場へと戻るよう案内される。向かうのは、未だ囲いの中で隠されていた課題の装置のもと。そう、ついに決勝の装置実装問題が始まるのである。

白熱した決勝ラウンド - “パーフェクト”も目撃

30名の決勝進出者は、計170分間にわたる実機トライアルを終えて集大成となる解答を提出した。全参加選手が見守る中で行われる決勝ラウンドは、会場に設置された装置の実機にそれぞれが完成させたコードが実装され、その動きによって最終順位が決まる。小さなボールのバウンドは、ほんの些細な条件によっても変化しうる。まさに一発勝負の本番だ。

  • 決勝ラウンドの様子

    決勝ラウンドの様子。全参加者が装置を囲み、決勝進出者の挑戦を見守る

決勝ラウンドは、予選のシミュレータ問題で30位だった選手をトップバッターとして、同問題の順位が下の選手から順番に挑戦。つまり終盤には、バーチャル上での装置挙動で上位を獲得した選手たちが続き、最後には予選1位の選手が控える。

決勝では選手それぞれが、会場前方のボタンを押した瞬間にプログラムが実行される。盤上を跳ねたボールが、狙い通りの穴に飛び込むか否か。画面上での努力が現実の動きに姿を変え、その成果が続々と披露されると、観戦する選手たちからは悲喜交々さまざまな歓声が響いた。

決勝序盤で特に大きな歓声を集めたのが、予選を19位で通過した選手の挑戦だった。シミュレータ問題では上位に食い込むことができなかったものの、2度の実機トライアルで得られた情報をフル活用して提出されたプログラムによって動いた装置は、続々と指定した穴までボールを届けていく。最終的に、18球すべてが狙い通りの穴に吸い込まれてパーフェクト達成。複数年にわたってこの大会を取材している筆者も初めて目にした快挙に、会場は参加者・スタッフ含め驚きの声を隠せず、大きな拍手が響いた。

  • パーフェクトが達成された瞬間

    パーフェクトが達成された瞬間、会場は歓声と共に大きな拍手に包まれた

その後も、数mmの差で球が穴のふちにはじかれるシーンや、現実世界ならではのわずかなずれが修正できないままという苦労が伝わる様子など、さまざまな挑戦が続いた。

そしていよいよ大会は終盤、予選を3位で通過した選手の挑戦で、再び会場は盛り上がりを見せる。実は実機トライアルでも1回目から好スコアを残していたこの選手。決勝でも装置は順調に球を届け続けると、なんと2人目のパーフェクトを達成。ボールの落下距離などさまざまな要素から算出されるスコアは惜しくも首位に届かなかったものの、堂々たるパフォーマンスで2位に食い込み、会場を沸かせた。

ついに締めくくりを迎えた大会。予選2位通過の選手による挑戦では、わずかなずれに阻まれてスコアは伸びなかった。そして予選トップ通過選手の挑戦では、惜しくもパーフェクトは逃したものの、観客からも感嘆の声が上がるほどの仕上がりで3位にランクイン。これで全選手のスコアが確定し、賞金を獲得するトップ3が決定された。

ディスコらしい大会を終え「来年こそリベンジ」の声も

決勝ラウンド終了後に行われた表彰式では、シミュレータ問題・装置実装問題のそれぞれで1~3位の成績を残した選手が表彰された。なお装置実装問題については、運営からの発表により3位として2名の選手を表彰。またシミュレータ問題で1位・3位だった両選手は装置実装問題でで表彰台入りとなったものの、2冠を達成する完全優勝とはならず。ボーナスの50万円獲得はお預けとなったが、シミュレータ問題では1位から順に20万円、10万円、5万円が、装置実装問題では1位から順に30万円、20万円、10万円が、ディスコ特製の“ウェハ表彰状”と共に贈られた。

  • 装置実装問題 表彰式の様子

    装置実装問題 表彰式の様子

  • キャプション

    成績優秀者に贈られる“ウェハ表彰状”

決勝ラウンド参加者からは、シミュレータ上では上手くいったパラメータも実機になると通用せず、チューニングが間に合わなかったという悔しい声も聞かれ、惜しくも決勝に進めなかった選手からは、「もし来年以降挑戦できる機会があれば、今度は実際の装置を動かしてみたい」と、リベンジを誓う姿もあった。

ただのプログラミングコンテストではなく、装置メーカーとして実機を動かすためのエンジニアリング力が試される、DECC。過去最大規模となった2026年の大会も、ディスコによる“内製イベント”として満足度の高い形で完結した。同社担当者によれば、今回の題目となった装置の開発に要したコストは、部品代や人件費込みで数千万円規模に上るとのこと。しかしディスコには、こうしたイベントを自分たちの手で作り上げ、そしてブラッシュアップしていく文化が脈々と受け継がれており、大会が終了した今もきっと、次回以降の大会に向けた装置作りが始まっていることだろう。

自ら問題を作り上げ、若者たちに新たな挑戦の機会を与えることで、装置を動かす面白さとの出会いを与え、将来的に業界の成長を支える次世代人材になるという選択肢を創出する。ディスコが提供するプログラミングコンテストでの試行錯誤は、未来の課題をクリアし続けるための布石となっている。