三菱UFJ信託銀行はAI導入の「落とし穴」をどうやって乗り越えたのか?

[2019/11/29 10:30]小池 晃臣 ブックマーク ブックマーク

“落とし穴”にどう対応するか

岡田氏は、これらの経験を踏まえ、AI導入のポイントとして「人」「モノ」「金」「データ」の4点を挙げる。

まず「人」に関して、岡田氏はAIに対する期待値をコントロールすることの重要性を説いた。そのための施策として、同行では、全社員がいつでも閲覧できるポータルサイトでAIに関する情報を発信しているという。

また、「モノ」については、全社員がデータ分析できるデータサイエンスプラットフォームを構築(試行中)しており、ここで機械学習自動化プラットフォーム「DataRobot」が活用されている。そして、何かと障壁になりやすい「金」に関しては、本部側で予算を負担する枠組みを新設。PoCについて本部が投資負担する仕組みにしたことでスピード重視な取り組みを実現した。

「これによってAIの案件が何倍にも増えました。予算の枠組みというのは、AI導入を進める上で非常に重要だと実感しています」(岡田氏)

最後の「データ」については、約1年かけて全社の名寄せテーブルを整理したデータベースを構築しているという。

成功の秘訣は「ビジネス価値の追求」と「担当者の強い意志」

“PoC地獄”から抜け出すために今考えていることとして、岡田氏は「ビジネスと技術のコア領域を重ねること」を挙げた。

「そこでは、とことんビジネスを追求する『強い意志』が大切になります。これまで、上から言われて意思のない担当者がノンコアなPoCを企画したことがありましたが、うまくいきませんでした」(岡田氏)

また、AIで事業インパクトを出すために大事な事柄として、岡田氏は「ただの技術適用に終わらせず、業務プロセスを抜本的に見直すこと」を挙げる。実際、三菱UFJ信託銀行ではコールセンターのテレアポ業務にAIを活用したことで、着電率が40%から50%に向上。その結果を全社のテレアポ業務の最適化につなげている。

そして「AIの民主化」を掲げる同社では、社内の誰もが業務で日常的にAIを活用して課題解決を行える状態を目指しており、ユーザー起点で課題解決できるデータプラットフォームとして2019年1月、DataRobotを導入した。

「ただし、銀行のユーザーが最初から使いこなすのは難しいので、最初は代理店(日鉄ソリューションズ)のスタッフ4名による常駐ないし半常駐体制にしてもらっています」(岡田氏)

10月にはDataRobotを活用した以下の4案件をリリースしており、現在7部署で10案件が進行中という。

  1. マーケットのリスク管理
  2. 財務コンサル
  3. リテールマーケティング
  4. 法人マーケティング

いずれも高い効果が表れているが、なかでもマーケットのリスク管理では利用部門がたった2日で使いこなせるようになり、自走運用が完了しているという。

そんな三菱UFJ信託銀行では、2019年4月、AI専門のCoE組織を設置して取り組みを拡大しているところだ。

岡田氏は「CoE組織として大切にしていることは、KPI管理とチームワークと役割分担」だと説明し、「最も大切なのは、ビジネス価値を徹底的に追求することと、担当の強い意志だと言えるでしょう」と強調して壇を後にした。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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