木造3階建て共同住宅(木三共)のメリット・デメリット・基準とは?

マンション・アパート経営

「土地活用の収益を高めるためにアパートは3階建てにしたい。でも3階建てにすると鉄骨造にしなければならず、コストが高くなるのでは・・・」などと悩んでいませんか? 結論から言うと木造でも3階建ての共同住宅(アパート・マンションなどの集合住宅)を建てることができます。それでも木造なので耐震性や耐火性などの面で不安に感じる人もいるかもしれません。

そこで本記事では、木造3階建て共同住宅(木三共)についてのメリット・デメリット・基準について詳しく紹介します。この記事を読めば、木造であっても安心して3階建ての共同住宅が建てられることが分かるでしょう。アパートの利回りや構造・工法で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

木造3階建て共同住宅(木三共)とは

木造3階建ての共同住宅は、「木三共」(もくさんきょう)と略して呼ばれます。

木三共を建設する場合、原則として建築基準法上の耐火建築物とすることが必要です。しかし、防火地域以外の地域であれば、「準耐火建築物(イー1)」として木三共の建設が認められます。この建築基準のことを「木三共」と呼ぶこともあります。

「準耐火建築物(イー1)」の条件

  • 1時間準耐火構造である
  • 避難上有効なバルコニーを設置する
  • 敷地内に通路を設置する
  • 3階の開口部に防火設備を設置する(防火地域・準防火地域の場合)

木三共は、かつては火災時の人命の安全確保と大規模火災の防止のため禁止され、3階建ての共同住宅を建てるには鉄骨造や鉄筋コンクリート造など、木造以外にするしかありませんでした。しかし、1992年に防火地域・準防火地域以外の区域限定で解禁されてから、徐々に規制が緩和されてきています。

防火地域や準耐火建築物(イー1)については、後の「木造3階建て共同住宅(木三共)の基準とは」の章で詳しく説明します。

木造3階建て共同住宅(木三共)の割合は6.2%

最新の住宅・土地統計調査(2018年調べ)によると、3階建ての共同住宅のうち6.2%が木造(上のグラフの緑と黄緑の部分)で建てられています。1番多いのは鉄筋・鉄骨コンクリート造で69.4%、次いで鉄骨造で24.2%です。

総数 木造 非木造
総数 木造(防火木造を除く) 防火木造 総数 鉄筋・鉄骨コンクリート造 鉄骨造 その他
3,561,300戸 220,600戸 33,200戸 187,400戸 3,340,700戸 2,473,200戸 862,800戸 4,800戸
100.0% 6.2% 0.9% 5.3% 93.8% 69.4% 24.2% 0.1%

“出典:e-Stat平成30年住宅・土地統計調査 第8-1表」を加工”

木造3階建て共同住宅(木三共)のメリット

土地の活用方法として木三共の建築を選ぶ前に、どのようなメリット・デメリットがあるかを理解しておきましょう。まずはメリットを5つ紹介します。

  • 建設コストが安い
  • 安全性が高い
  • 設計の自由度が高い
  • 節税効果が高い
  • 重厚感がある外観を演出できる

ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

建設コストが安い

3階建ての建物を建てるときによく採用される鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して、木造は最も建築コストを抑えられます。

最新の建築着工統計調査/住宅着工統計(2020年調べ)の結果をもとに、構造別の坪単価を算出してみました。

  木造 鉄骨造 鉄筋コンクリート造
  1戸あたり工事費予定額(万円/戸) 1平米あたり工事費予定(万円/平米) 坪単価(万円/坪) 1戸あたり工事費予定額(万円/戸) 1平米あたり工事費予定(万円/平米) 坪単価(万円/坪) 1戸あたり工事費予定額(万円/戸) 1平米あたり工事費予定(万円/平米) 坪単価(万円/坪)
新築住宅 597 17 55.8 1,188 24 80.5 1,434 26 85.5
(上記のうち貸家) 597 17 56.1 1,168 24 80.2 1,093 25 82.2
プレハブ 924 21 68.0 1,226 25 81.2 1,305 25 83.5
(上記のうち貸家) 931 21 67.7 1,227 25 80.9 1,375 26 85.8
ツーバイフォー 737 18 58.7
(上記のうち貸家) 742 18 58.7

“出典:e-Stat建築着工統計調査/住宅着工統計(令和2年計分) 第34表・第36表・第45表」を加工”

ここから各構造別の坪単価の相場は、次のように判明しました。

  • 木造:56~68万円/坪
  • 鉄骨造:80~81万円/坪
  • 鉄筋コンクリート造:82~86万円/坪

この坪単価には階数が考慮されていないので、3階建ての場合は若干高くなるとみられます。

木造は軽く安定供給ができるので割安

木造の建築コストが鉄骨造・鉄筋コンクリート造と比べて割安な理由は、建築資材を安価に安定して供給できるためです。

また、敷地の地盤が悪い場合、鉄筋造・鉄筋コンクリート造は建物の重量が重いため、地盤改良や基礎工事が必要になり費用がかさみますが、木造の建物は軽いため地盤改良や基礎工事が不要であったり、仮に必要な場合でも比較的安価ですみます。

安全性が高い

木三共を建てる際には構造計算が義務化されています。3階建て以上の建物は、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造にかかわらず、構造計算をしなければなりません。構造計算とは、建物そのものの重み、地震、風、雪、津波などのさまざまな力に対して、建物がどこまで耐えられるのかを数値化・計算したものです。

構造計算をして基準をクリアしていれば、地震や風などに強い建物であるといえるため、入居者に安全性をアピールできます。

設計の自由度が高い

木造は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較して設計の自由度が高いため、土地の形状や広さにあわせて柔軟に設計できます。鉄骨造・鉄筋コンクリート造では建築が難しい変形地や狭小地でも、木造なら建築可能です。

さらに3階建てにしてある程度の数の部屋を造れば、収益を高めることもできます。次の表のような用途地域で建ぺい率が60%以上または80%以上あれば木三共が建てられるので、土地利用の効率も良いといえます。

用途地域 建ぺい率
  • 住居地域
  • 中高層住居専用地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
60%以上
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
80%以上

“参考:アパート建都「建蔽率」基本は60%」”

用途地域については次の記事で詳しく解説しています。

用途地域ごとの制限を一覧で紹介!理想の土地を見つけて家を建てる!
住みやすく健全な街づくりを行うためには、指定された用途地域通りに土地を利用をしなければけません。そのためにも用途地域の中身や用途地域ごとの制限を把握することが大切です。今回は用途地域の内容や種類、それぞれの種類ごとの特徴を一覧で紹介します。

節税効果が高い

木造は、鉄骨造・鉄筋コンクリート造と比較して節税効果が高い点もメリットのひとつです。それは木造の法定耐用年数は22年と、次の表のように他の構造と比べると短いためです。

住宅用建物の法定耐用年数

構造 法定耐用年数
木造・合成樹脂造 22年
木骨モルタル造 20年
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 47年
れんが造・石造・ブロック造 38年
金属造(鉄骨造) 4mmを超えるもの 34年
金属造(鉄骨造) 3mmを超え、4mm以下のもの 27年
金属造(鉄骨造) 3mm以下のもの 19年

“出典:国税庁主な減価償却資産の耐用年数表」を加工”

法定耐用年数が短いと、毎年経費として計上できる減価償却費の金額が多くなり、その分所得税の課税対象額が少なくなるため、節税効果を高められます。

重厚感がある外観を演出できる

木三共は耐火性を向上させるために、外壁を厚みのあるものします。それによって火災に強くなるのはもちろんですが、建物全体が大きくなり、重厚感のある外観を演出できます。重厚な建物のほうが入居者に人気があるため、アパート経営にも有利に働くでしょう。

木造3階建て共同住宅(木三共)のデメリット

続いてデメリットについても見ていきましょう。

  • 木造2階建てよりも建築コストが高い
  • 木造2階建てよりも工期が長くなる
  • 構造計算に時間がかかる
  • 部屋数が少ないこともある
  • 対応できる設計者や施工会社が限られる

上記の5つがデメリットとしてあげられます。これらは鉄骨造・鉄筋コンクリート造と木三共を比較してのデメリットという面と、木造2階建てと木造3階建てを比較してのデメリットという面もあります。詳しく紹介していきます。

木造2階建てよりも建築コストが高い

木造2階建てよりも木造3階建てのほうが建築コストがかかります。

その理由は、2階建てにさらに1階を上乗せすると、その分床面積が増え、材料費や工賃がかかることがあげられます。さらに建物を支えるために柱などの主要構造部を太くしたり、構造計算や耐火基準をクリアするための費用が加算されます。

木造2階建てよりも工期が長い

工期も、木造2階建てよりも木造3階建てのほうが長くなります。

2階建てが標準的な建物で3ヶ月程度かかるのに対して、3階建ては4か月程度かかります。これは上記と同じく階数が1階分増えることで工程などが増え、さらに次で紹介する構造計算や構造計算適合性判定に時間を要するためです。

着工までの準備期間や工期が長くなるため、入居者を迎えて家賃収入が得られるまでの時間も長くなるので、あらかじめ留意しておきましょう。

構造計算に時間がかかる

3階建てにすると構造計算をしなければならず、その分時間がかかります。

どの建物も都道府県または市町村に置かれている建築主事や指定確認検査機関による建築確認が必要ですが、それに加えて3階建て以上の建物の場合は、構造計算そのものと、構造計算適合性判定に時間がかかります

構造計算適合性判定とは、構造計算が建築基準法に適合しているかどうかを都道府県知事または指定構造計算適合性判定機関が審査することです。これをパスしないと着工できません。

構造計算適合性判定についてより詳しく知りたい方は、一般財団法人日本建築センターの「構造計算適合性判定とは」で解説されているのでぜひご覧ください。

部屋数が少なくなる可能性がある

木三共にすると他の構造と比べて部屋数を減らさなければならないことがあります。

これは冒頭で紹介したように、火災から入居者の生命・安全を守るために「建物の周囲に通路を設ける」必要があるためです。敷地からこの通路分の面積を確保しなければならないため、建物に使える面積が減り、その分部屋数が少なくなる可能性があります。

鉄骨造・鉄筋コンクリートにした場合や、2階建てにした場合に何室造れるかを試算してもらい、それぞれの利回りを比較してみましょう。その結果によっては、木三共以外の方法を模索したほうがいいかもしれません。

対応できる設計者や施工会社が限られる

木三共が建てられる施工会社が限られてしまう点もデメリットといえます。

木三共を建てる場合は、構造設計一級建築士という一級建築士として5年以上構造設計の業務に従事した後に、国土交通大臣登録講習機関が行う講習を修了した、特別な資格を持つ建築士が自ら設計をするか、適合性の確認をする必要があります。

さらに木三共の軒数自体、3階建て共同住宅全体の6.2%と少ないため、実績豊富な施工会社はそれほど多いとはいえません

木造3階建て共同住宅(木三共)の基準とは

ここからは冒頭ですこし触れた、防火地域と木三共を建てるための基準について詳しく紹介します。

防火地域以外の地域で木三共を建てる場合は、「準耐火建築物(イー1)」でなければなりません。準耐火建築物(イ-1)とは、建築基準法第2条第9号の3に定められた準耐火建築物のひとつで、次の表のような基準が決められています。

基準 説明 緩和条件
1時間準耐火構造である 主要構造部を火災が起きてから1時間は崩壊しない構造にする
避難上有効なバルコニーを設置する 火災などが起きたときに避難できるバルコニーを設置する 下記の条件を満たす場合は設置不要

  • 各住居から地上に出るまでの通路・階段は直接外気に開放されている
  • 各住居の廊下と階段に面している窓やドアが遮炎となっている防火仕様
敷地内に通路を設置する 建物の周囲と道路との間に、幅3m以上の通路を敷地内に設置 下記の条件を満たす場合は設置不要

  • 避難上有効なバルコニーの設置を設置
  • 住居から地上に出るまでの廊下や階段などの通路が直接外気に開放されている
  • 通路に面している窓やドアに防火設備を設置
  • 上下階の窓やドアとの間に延焼防ぐための庇(ひさし)を設置
3階の開口部に防火設備を設置する(防火地域・準防火地域の場合) 3階部分の開口部に防火設備(防火用シャッターや防火用の網戸など)を設置 下記のいずれかの条件を満たす場合は設置不要

  • 3階住戸に防火設備以外の窓を設ける場合、その窓の周囲90cm未満の部分に、他の窓を設けないこと
  • 3階住戸の「防火設備以外の窓」と「他の窓」との間に、50cm以上突出した庇(ひさし)・袖壁を設けること

このような基準があるのは、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて木造は燃えやすい材料でできており、火事になったときでも燃え広がりにくいよう工夫をする必要があるためです。詳しく見ていきましょう。

防火地域とは

準耐火建築物(イー1)の基準の説明に入る前に、基準の前提になる防火地域などについて説明します。

都市計画法建築基準法では、万一火災が起きてしまった場合でも、被害を最小限にくい止めるために、次のように防火地域などのエリアを決めています。

地域の種類 法的根拠 説明 木三共を建築する場合
防火地域 都市計画法第9条第20項 市街地における火災の危険を防除するため定める地域 耐火建築物にしなければならない
準防火地域 都市計画法第9条第20項 市街地における火災の危険を防除するため定める地域 準耐火建築物(イ-1)にしなければならない
22条区域 建築基準法第22条 防火地域・準防火地域以外で火災被害が拡大しそうな地域 同上
上記以外の地域(未指定区域) 同上

最も規制が厳しい防火地域、その周辺部に準防火地域、さらにその周辺部に22条区域というように、防火地域を取り囲むように指定されることが多いですが、防火地域・準防火地域から離れていても市街地であれば22条区域に指定されることもあります。

木三共は防火地域でも建てられるがコストが割高

法的には防火地域の中でも木三共は建築できますが、おすすめできません

防火地域の中では、準耐火建築物(イ-1)ではなく、それよりも耐火性に優れた耐火建築物にする必要があります。しかし、準耐火建築物(イ-1)でもコストは割高ですが、耐火建築物にした場合はさらに高額な建築費を支払う必要が出てきます。そうなると採算が合わず、アパート経営が失敗に陥るリスクが高まります

さらに、万一大規模火災が起きたとき、たとえ自分のアパートが火元でなくても、被害が及ぶ可能性が高いといえます。自分の資産であるアパートや入居者の人命を守るためにも、防火地域で木三共を建てるのは控えたほうがよいでしょう。

1時間準耐火構造である

それでは本題の準耐火建築物(イー1)の基準について見ていきましょう。

1つ目は、1時間準耐火構造とすることです。主要構造部である壁、柱、床、はり、軒裏の構造を、火災が発生してから1時間は、消火活動を行わなくても建物が崩壊せずに立ち続けられるようにする必要があります。

主要構造物を石膏ボードなどの耐火性に優れた素材で覆ったり(耐火被覆)、コンクリート、レンガ、モルタルなどの不燃材料を使用することによってこの基準をクリアします。

“参考:国土交通省国土交通省告示第195号 令和元年6月21日」”

避難上有効なバルコニーを設置する

2つ目は、火災が起きたときに避難できるバルコニーを設置することです。設置するバルコニーの条件は次の通りです。

  • バルコニーの床が1時間準耐火構造
  • 避難設備(避難ハッチなど)が設けられている
  • 避難設備から地上までの経路の幅員がある一定以上(およそ90cm以上)
  • バルコニーに出るまでの開口部の大きさが一定以上(高さ1.8m以上、幅0.75m以上、開口部の下端から床までの高さは0.15m以下)

避難上有効なバルコニー設置の緩和条件

下記の条件をすべて満たす場合は、バルコニーの設置は不要です。

  • 各住居から地上に出るまでの通路・階段は直接外気に開放されている
  • 各住居の廊下と階段に面している窓やドアが遮炎となっている防火仕様になっている

ただし火災が発生してしまったときは、バルコニーから地上への避難ができなくなります。設計の際には経路や避難や方法について十分に検討しましょう。

敷地内に通路を設置する

3つ目は、建物の周囲と道路との間に、幅3m以上の通路を敷地内に作らなければならないことです。

敷地内通路設置の緩和条件

下記の条件をすべて満たす場合は、通路の設置は不要です。

  • 避難上有効なバルコニーを設置
  • 住居から地上に出るまでの廊下や階段などの通路が直接外気に開放されている
  • 通路に面している窓やドアに防火設備を設置
  • 上下階の窓やドアとの間に延焼を防ぐための庇(ひさし)を設置

3階の開口部に防火設備を設置する

4つ目は、3階部分の開口部(宿泊室・外壁の開口部、宿泊室以外の部分に面する開口部)に防火設備(防火用シャッターや防火用の網戸など)を設置することです。

ただし、この基準は防火地域・準防火地域に木三共を建てる場合に適用されます。

防火設備設置の緩和条件

下記のいずれかの条件を満たす場合は、防火設備の設置は不要です。

  • 3階住戸に防火設備以外の窓を設ける場合、その窓の周囲90cm未満の部分に、他の窓を設けないこと
  • 3階住戸の「防火設備以外の窓」と「他の窓」との間に、50cm以上突出した庇(ひさし)・袖壁を設けること

ただし、上記の条件を満たしていても、延焼ライン(火が燃え移る可能性がある範囲)にある開口部は防火設備が必要です。

まとめ

本記事では、木造3階建て共同住宅(木三共)について、そのメリット・デメリット・基準について紹介してきました。木三共は防火地域では推奨できませんが、それ以外の地域で敷地が狭小地・変形地の場合は、収益を高めるため、木三共の建築も検討することをおすすめします。

木三共を建てる場合は、構造計算が必須となり、入居者に対してもその安全性がアピールできます。その反面、構造計算は相当の時間と費用がかかり、数多くのクリアすべき条件や手続きを踏まなければなりません。本記事で全体像をつかみ、信頼できる設計者・施工会社とともにじっくりと検討をしてみてください。

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